2018年11月14日(水)

「ノーベル賞はいらない」 ドイツ、産業革命4.0の砦

(1/3ページ)
2015/1/6付
保存
共有
印刷
その他

 今、日本の政財界がひそかに注目する研究所がドイツにある。フラウンホーファー研究所。ドイツが国を挙げて進める「インダストリー4.0」を支える応用研究機関だ。「ノーベル賞はいらない」。彼らが目指すのは研究をいかに早く商品やサービスに変えるか。製造業復活を目指す日本にとって多くのヒントが隠されている。

■カーボンナノチューブ使ったテニスラケット開発

世界ランク5位の偉業を果たした錦織圭選手をはじめ、多くのテニスプレーヤーの技を支えているのが炭素繊維を使ったラケット。カーボンナノチューブ技術を利用した新型が誕生したのは2002年のことだ。

フラウンホーファー研究所で素材分野を担当しているイヴィツァ・コラリッチ氏(45)はある技術見本市で声をかけられた。「炭素繊維を使って、今までにない軽くて丈夫なラケットを作りたい」。男性はドイツのラケットメーカー、フォルクルの幹部。申し訳なさそうに付け加えた。「ただ、あまりお金がない」

カーボンナノチューブは当時から注目されていたが、まだ航空宇宙産業などが導入を始めたばかり。開発資金は約6万ユーロ(約864万円)。だがコラリッチ氏は「これだ」と思ったという。

資金不足を補うために他企業などとチームを作り開発を進めた。カーボンナノチューブを使った新素材のテニスラケットは世界で40万本売れる大ヒットになった。

コラリッチ氏は今年、フラウンホーファーの2万3000人の技術者の中から「起業家精神をもつお手本研究者」に指名された。研究室にとどまることはない。各地の展示会や共同研究の工場などを渡り歩き、1年の3分の2は空席にしている。「ノーベル賞はいらない。やりがいは研究結果が直接中小企業の競争力になることだ」

甘利明経済財政・再生相は昨年7月、フラウンホーファー研究所を視察した。帰国後すぐ、スタッフを2~3週間泊まり込みで派遣するように、と関係省庁に指示を出した。同研究所が内外から注目を浴びるのは、「基礎研究から世の中を変革するような新製品やサービスの種を見いだし、企業の実用化につないでいる」(甘利氏)から。

▼フラウンホーファー研究所 ドイツの官民出資の応用研究機関。67カ所に拠点を持ち、2万3000人の従業員を抱える。2013年の予算は20億ユーロを超えた。これは日本最大の応用研究機関である産業技術総合研究所の予算の約4倍だ。18世紀から19世紀に活躍したヨーゼフ・フォン・フラウンホーファー氏が名称の由来。太陽光スペクトルの基礎研究のほかレンズ加工など発明家、起業家としても活躍した。

  • 1
  • 2
  • 3
  • 次へ

今なら有料会員限定記事もすべて無料で読み放題

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報