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こんな走り方はNG ケガを防ぐフォームのツボ

ランニングインストラクター 斉藤太郎

ランニングを始めたのに故障でトレーニングを続けられなくなった、レースを走って脚を痛めてしまい練習再開までブランクが長引くはめになった――。市民ランナーがケガをしてしまう主な原因は、正しくないフォームで走り続けることです。悪いフォームの典型といえる「腰が落ちた状態」と「猫背で骨盤が後傾した状態」について、動画を交えて解説し改善策を伝授します。

着地時のねじれ、膝にストレス

腰が落ちた走り方というと、皆さんはどんなフォームを思い浮かべるでしょうか。腰の位置を常に低くして走るということではありません。ですので、背伸びをするような感覚で腰を高い位置に保って走ろうとするのは間違いです。

走っていて着地する瞬間に地面から受ける衝撃を、骨盤回りのお尻の筋肉が支え切ることができないと、腰が低い位置に沈んでしまいます。このとき骨盤が外側方向に逃げ、膝は内側に落ちて、つま先は外側へ向いてしまうことが多いのです。外―内―外のねじれが一歩一歩で起きることになります。

このねじれによって大腿骨の付け根から膝にかけての脚の外側にストレスが掛かり、故障を引き起こします。膝の外側が痛くなる症状、ランナー膝ともいわれる腸脛靱帯炎(ちょうけいじんたいえん)が代表的なものです。

骨盤回りのお尻の筋肉が着地の瞬間に機能していれば、地面から受ける衝撃をたるむことなく受け止めて、前方への推進力に生かすことができます。空気がつまったボールが弾むようなイメージ。着地のたびに腰が落ちてねじれが起きることはありません。

お尻の筋肉しっかり強化

腰が落ちたフォームになるのを防ぐには、この筋肉を強化することです。効果的なエクササイズの一つが「後ろ足スイング」。壁に両手をついて体を真っすぐに立てた姿勢で、お尻の筋肉を使いながら一方の脚を後方にスイングして戻す動きを繰り返します。膝を曲げないように気を付けてゆっくりとしたテンポで、左右それぞれ10回ずつを目安に試してみてください。このほか連載で紹介した「レッグランジ」(2013/3/14公開)などもいいでしょう。

注意しないといけないのは、筋肉をただ鍛えるだけでなく、実際に走るときの着地の瞬間に機能するようにすること。補強運動で鍛えるときには使えていても、肝心の走るときに使えていないケースが案外多いようです。日常生活で歩くときにも、脚の付け根である骨盤から動かすことを意識して、日ごろからお尻の筋肉が機能するように習慣づけることが大切です。

膝から下のキックに頼る走り

日本人の悪いランニングフォームで特に目立つのが猫背姿勢です。頭や顎が前に出ると骨盤は後ろに傾き、横から見て背骨が前側に「C」の字のように湾曲した姿勢になってしまいます。初めから猫背姿勢で走っている人のほか、走っているうちにだんだん疲れてくると顎が前に出て胸のあたりが縮こまり、猫背になってしまう例もあります。

立っているときも椅子に座っているときも、骨盤は前傾した状態が正しい姿勢なのですが、ランニング時に後傾してしまうと、股関節の動く範囲が狭まって大腿骨を後ろ方向に大きくスイングしづらくなります。

そのために膝から下のキックに頼って走ろうとして、膝や足首の関節に掛かる負担が大きくなって故障につながることになります。さらに腿(もも)裏の付け根、お尻のあたりに力を入れて一生懸命に蹴ろうとして、そこにストレスがたまることで座骨神経痛などを引き起こします。猫背は腰にも大きな負担が掛かるため、その姿勢で走り続けることが腰痛の原因の一つになるといえるでしょう。

骨盤が前傾した正しいフォームでは、大腿骨を後方にしなるように動かすことができます。そのとき腰椎と大腿骨をつなぐ腸腰筋が伸ばされ、その反動で縮むことによって大腿骨が前方向に引き戻されて、理想的な大きな脚運びが可能になるのです。

「走っているときだけ良い姿勢」はない

猫背で骨盤が後傾したフォームにならないためには、ふだん歩いたり立ったりするときも、デスクワークで座っているときなども、日ごろから正しい姿勢を心掛けるのが何より大事。走っているときだけ良い姿勢だなんて都合のいい話はありません。日常生活はランニングに表れるものです。

連載の「猫背直して伸び伸びラン フォーム改善エクササイズ」(2013/9/26)で紹介した「両腕挙上スクワット」や「エア懸垂」も、姿勢を修正するのに効果的です。トレーニング時だけでなく、仕事の合間に体をほぐすのに取り入れてください。

走っているうちに猫背になって上体が硬直してきたなと気付いたときには、肩回りをリセットする動作を入れてみましょう。走りながら肩を上下させ、胸元を柔らかくしてリラックス。それから大きく息を吸って吐くことを繰り返す。深呼吸をすると体のこわばりがほぐれて正しい姿勢に戻ります。

ウオームアップ不足も原因に

寒い冬の時期には、筋肉の温度が上がらないまま体全体が硬直したような状態で走り出すことが多いと思います。そんなときには体の末端を使った走り方になり、腰が落ちたり、猫背で骨盤が後傾したりする悪いフォームになってしまいがちです。

連載の「アフター5ラン じわじわ高める走りで効果アップ」(2014/10/17)でも説明しましたが、ストレッチでほぐしたり、エクササイズで筋肉を目覚めさせて温めたりしてからメーンの練習に入るようにしましょう。十分なウオームアップが良いフォームの走りにつながります。

<クールダウン>薄氷の完走、この悔しさをバネに
 今年も福岡国際マラソンを走りました。結果は2時間47分7秒。2時間40分切りを目指していたものの、昨年より10分遅いタイムに終わりました。体調が整わないまま出場したのが一番の敗因だったと思います。
 順位は570位。完走者は575人だったので私の後ろには5人しかいません。この大会では5キロごとに19分30秒のペースで関門が設けられています。35キロ地点以降はやや緩くなるのですが、序盤中盤に蓄えていた貯金を終盤に取り崩していき、40キロ関門を通過する時、ついに「10秒前」という声を耳にしてゾクッとしました。その後も幾つかチェックポイントがあったらしく、「10秒前」「20秒前」という審判員の声を聞きながら切り抜け、ぎりぎりでどうにかゴールにたどり着きました。
 今回は関門で待ち構える審判員を初めて怖いと思いました。そして、この上なく悔しいと感じたのは、沿道の声援が終盤になるにつれて「頑張れ」から「完走できるよ」に変わっていったことです。この悔しさをバネに、来年の大会は満足のいく結果が出せるようトレーニングに励みたいと思います。

さいとう・たろう 1974年生まれ。国学院久我山高―早大。リクルートRCコーチ時代にシドニー五輪代表選手を指導。2002年からNPO法人ニッポンランナーズ(千葉県佐倉市)ヘッドコーチ。走り方、歩き方、ストレッチ法など体の動きのツボを押さえたうえでの指導に定評がある。300人を超える会員を指導するかたわら、国際サッカー連盟(FIFA)ランニングインストラクターとして、各国のレフェリーにも走り方を講習している。「骨盤、肩甲骨、姿勢」の3要素を重視しており、その頭の文字をとった「こけし走り」を提唱。著書に「こけし走り」(池田書店)、「42.195キロ トレーニング編」(フリースペース)など。

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