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金星探査機「あかつき」 太陽風の謎を一部解明

日経テクノロジーオンライン
記者会見に出席したJAXA宇宙科学研究所准教授の今村剛氏(左)と東京大学大学院博士課程2年の宮本麻由氏(右)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所は、金星探査機「あかつき」や太陽観測衛星「ひので」などを用いて、太陽風の加速のメカニズムを一部明らかにしたと発表した。太陽風とは、太陽から吹き出すプラズマ(電気を帯びた希薄なガス)の流れのこと。惑星空間に400~800km/秒(時速150万~300万km)という高速で吹き出している。これまで、どのように加速されここまでの速度に達するのか不明だった。

今回明らかになったのは、「太陽半径の数倍以上離れたところで太陽風が急激に加速されている」「その加速はコロナ(皆既日食のときに見えるようになる太陽に近いところのガス)の中で発生した音波がガスを加熱することで起こる」という事実だ。

太陽を挟んであかつきと地球が一直線に並ぶタイミングを利用して、そのための観測を実施した。実施時期は、2011年6月6日~同年7月8日で、断続的に16回の観測を行った。その結果と、ひのでなどによる同時期の太陽の観測結果を突き合わせることで、先の2つの事実が明らかになったという。

あかつきを利用して実施した観測は、探査機から電波を地球に送り、途中にある天体の情報を得るという電波掩蔽(えんぺい)と呼ばれるものだ。あかつきに搭載した発信器から地上の臼田宇宙空間観測所に向けて電波(平面波)を飛ばし、同観測所で受けた電波の強度のゆらぎ(回折パターンの変化)から太陽風の速度を、同電波の周波数の変化から太陽風中の音波の振幅を導くという観測方法だ。

太陽風はプラズマのガスの流れだが、そのプラズマの濃さは部分によって異なっており濃淡を持つ。しかも、その濃淡のパターンは、太陽風の流れとともに移動していく。このため、電波が太陽の横を通過するときに受ける影響は、この濃淡のパターンの移動によって変化する。それが、地上の観測局では、回折パターンの変化や周波数の変化として検出されるというわけだ。

太陽風の電波掩蔽観測を実施した際の金星探査機「あかつき」、太陽、地球の位置関係(画像:JAXA)
太陽風の電波掩蔽観測のイメージ。あかつきから発信した電波の強度や周波数は太陽風を通過すると変化する。この変化を解析することで、太陽風の速度を測ったり、太陽風内の密度変動(音波)をとらえる(画像:JAXA)

そして、得られた観測結果と、同時期のひのでなどによる太陽の観測結果から、これまで推定されていた理論的な数値モデルを裏付ける、もっともらしいデータが得られたという。

それらを整理すると、太陽風は次のようなステップを経て加速されているとみられる。(1)太陽表面の対流によってアルベーン波(磁力線の振動として伝わる波)が作られ外側に伝わる、(2)アルベーン波が不安定になって音波を発生する、(3)音波が壊れて熱を生み出す、(4)その熱によって太陽風が加熱されて加速される。

あかつきは、そもそもは金星の周回軌道に投入されているはずだった。が、2010年12月の軌道投入に失敗した。今回の観測が可能になったのは、ある意味、怪我の功名だ。同軌道投入への失敗直後に、あかつきと太陽、地球が一直線に並ぶことが判明し、半年ほどかけてこの観測を準備してきたという。そのあかつきも、実は、金星の周回軌道への再投入が計画されている。2015年度中に実施する見込みという。

(日経テクノロジーオンライン 富岡恒憲)

[日経テクノロジーオンライン 2014年12月18日掲載]

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