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「ドローンビジネス」離陸 報道、スポーツに鳥の目

米ベンチャークレフ 宮本和明

ITpro
米国の企業は早くから、無人飛行機「ドローン」を活用したビジネスに着目してきた。現在は商用利用に厳しい規制があるが、近い将来のドローン解禁をにらんで、大手企業が動き始めた。日常生活との関わりが深まった「ドローンビジネス」をレポートする。

ニュース報道で、ドローンが撮影した映像を放送するケースが急増している。これは「ドローン・ジャーナリズム」とも呼ばれる。

出典: Wall Street Journal

上の写真は、香港の民主化運動で起きたデモの様子をドローンから撮影したもので、米ウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)が電子版で放送した。市の中心部を空撮することで、デモの規模が一目で分かる。ドローンの威力を端的に示す事例だ。

個人の撮影画像をニュースで紹介

ドローンによるニュース報道は数年前から始まり、米CNNが竜巻の被害状況などを報道した。しかし、米国ではドローンの商用利用は規制されているため、それ以後報道各社はドローン報道を自粛してきた。「近い将来」といわれるドローン解禁を前にして、ウォール・ストリート・ジャーナルなど大手メディアは、再度ドローン報道に意欲を見せている。

テレビニュースでも、ドローンの利用が始まっている。サンフランシスコ地区のテレビ局NBC Bay Areaは、2016年に完成予定の米Apple新本社の建設現場を、ドローンで撮影した映像を使って報道した(下の写真)。新本社は「スペースシップ」とも呼ばれ、宇宙船を思わせる形状をしている。ドローンで撮影したビデオから、この形状が確認できる。

出典: Jason McMinn2

このビデオは、インドアマップ開発企業のLocusLabsの創業者が、無人自動空撮システム「DJI Phantom 2」で撮影したもの。NBCはヘリコプターによる撮影もしているが、視聴者がドローンで撮影したビデオも積極的にニュース番組で報道している。米国では、テレビ局はドローンを使った撮影ができないが、個人だと規制に抵触しない点を利用している。少し苦しい言い訳であるが、テレビ局もドローンに注目している証である。

映画撮影でドローン使用が認可

米国においてドローンを商用で利用するためには、FAA (米連邦航空局) の認可が必要となる。原則は禁止だが、例外措置がある。例えば、英国の石油メジャー企業BPがドローンを使ってオイルパイプラインを検査することを認めている。

2014年9月25日には、映画製作会社に対して、ドローンを使ったビデオ撮影を認めた。

対象となったのは、Astraeus Aerialなど映画撮影会社6社。Astraeus Aerialはドローンを使った撮影技術を開発しており、被写体に10センチまで接近して撮影できるなど、ドローンを高精度で制御・撮影できる点に特徴がある。

出典: Astraeus Aerial

上の写真はドローンを使って撮影したビデオの1シーンで、主人公が岩山に登る様子を上空から追尾しながら撮影している。

米国企業は、ドローンを使った映画撮影を国外で行ってきた。007シリーズ「Skyfall」で、ジェームズ・ボンドがオートバイで追跡するシーンはトルコで撮影された(下の写真)。他に「Star Trek: Into Darkness」、 「The Hunger Games」、「Iron Man 3」などが国外でドローンを使って撮影された。

出典: MGM and Sony Pictures

今後はドローンを使った撮影が米国内でも可能になるため、大幅にコストが改善される。FAAはドローンに関する法令整備と並行して、企業からの申し立てに対して事案ごとに審査する方針を取っている。今後も、特例措置が続くと期待されている。

スポーツの盗撮問題も発生

ドローンでスポーツ報道も大きく変わった。ロシアのソチで行われた2014年の冬季五輪で、スノーボードやスキー・フリースタイルなどの競技が、ドローンで撮影されたことは記憶に新しい。ドローンはコースに沿って飛行し、選手を上空から撮影した。今までにないアングルで迫力のある映像を見ることができた(下の写真)。

出典: Lucas Jackson /Reuters

ソチ五輪で使われたドローンには、高精細(HD)カメラの他に、撮影した映像を送信するトランスミッターも搭載され、視聴者は競技をライブで見ることができた。競技では、固定カメラやワイヤーに吊るした「Spider Camera」などが使われた。もちろん、ヘリコプターからの撮影も行われた。

ドローンを使えば、低コストで安全に競技を撮影できる。今後はゴルフ、フットボール、F1などのモータースポーツに、利用が広がると言われている。

一方で、スポーツ競技をドローンで盗撮する事件が続発している。2014年8月25日~9月8日に開催された全米オープンテニス会場では、ドローンを飛ばしたとして逮捕される事件が発生した。

女子シングルス準々決勝で、セリーナ・ウィリアムズ選手とフラビア・ペンネッタ選手の試合が、アーサー・アッシュ・スタジアム(下の写真、中央のコート)で行われていた。

出典: UNITED STATES TENNIS ASSOCIATION

ダニエル・フィアリーという男性は、17番コート(右下隅のコート)近辺でドローンを飛行させたとして逮捕された。危険な行為というのが表立った理由だが、試合の盗撮を処罰したものといわれている。他に、ドローンで映画ロケ現場を盗撮する事件なども発生しており、社会問題化している。企業はドローンを使ったビジネスに乗り出しているが、盗撮への対応も必要になっている。

ドローン使った初の舞台芸術

舞台の上で人間と一緒にダンスをするドローンが話題となっている。シルク・ドゥ・ソレイユ(Cirque du Soleil)はカナダのモントリオールに拠点を置く芸術性の高いサーカス団で、ドローンを取り入れたショーを公開した。「Sparked」というショーで、10台のドローンが人間と共演する(下の写真)。

出典: Cirque du Soleil

ドローンはランプの傘に入っていて、音楽に合わせてフライング・ダンスをする。ここではPhantom 2が使われており、音楽に合わせて10台が飛行するようプログラムされている。ショーの主人公が腕を上げればランプが上昇し、腕を下げれば下降する。人間のダンスと同調してストーリーが展開する。

ドローンの動きが神秘的で、独自の雰囲気を醸し出している。舞台芸術でドローンを使った、最初のケースとみられる。

2015年末にも認可の骨子

FAAは、警察や消防のドローン使用については許可をしており、犯罪捜査や消火活動、災害救助などに早くから利用されてきた。下の写真はカリフォルニア州のサンノゼ警察が導入したドローンで、人間が近寄れない危険物処理に活用する。

出典: KGO-TV/DT

FAAはこれまで、ドローンの商用利用に慎重な姿勢を貫いてきた。しかし議会や民間企業からの圧力で、FAAはドローンを航空管制システムに統合すべく、準備を始めている。

FAAは認可のスケジュールを示していないが、早ければ2015年末にも骨子が固まると言われている。それまでは、FAAは個別に対応する姿勢を示している。

宮本 和明(みやもと・かずあき)
米ベンチャークレフ代表 1955年広島県生まれ。1985年、富士通より米国アムダールに赴任。北米でのスーパーコンピューター事業を推進。2003年、シリコンバレーでベンチャークレフを設立。ベンチャー企業を中心とする、ソフトウエア先端技術の研究を行う。20年に及ぶシリコンバレーでのキャリアを背景に、ブログ「Emerging Technology Review」で技術トレンドをレポートしている。

[ITpro 2014年11月12日付の記事を基に再構成]

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