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ポストゲームショー(田口壮) プロ野球に一時代、強い阪急支えた「おい悪魔」

ソフトバンクと激しい優勝争いをしたオリックスが、中島裕之選手、小谷野栄一選手、ブライアン・バリントン選手ら、手厚い補強を行いました。19年ぶりのリーグ制覇に向けて準備は万端ですが、もう一つ、先日参加したOB会で「これができたら優勝機運が盛りあがるはず」という点があることに気づきました。

会場に着くと既に大先輩たちが…

兵庫県の芦屋で阪急・オリックスのOB会が行われました。会長は通算284勝のサブマリン、山田久志さん、副会長が通算1065盗塁の福本豊さんと、通算2055安打の加藤秀司さんというそうそうたるメンバーです。

ここで優勝モードになるためのある提案が浮かんできたのですが、結論の前に書いておきたいエピソードがあります。たまたま私はOB会の前日、山田さんとゴルフをしました。今年初めてOB会の役員に選ばれ、宴会の監事を仰せつかった私は山田さんに聞きました。

「あした何時ぐらいに会場に入ったらいいでしょうか」

「夕方6時からだから、4時半でええやろ」

その言葉をうのみにした私もうかつでした。午後4時半に会場に着いた私は、目の前の光景に焦りました。大先輩である佐藤義則さん、星野伸之さん、酒井勉さん、柴原実さん、小林晋哉さんが並んで抽選会の景品を袋に詰めているではありませんか。その横では加藤さんが名札と座席表をそろえながら、会費を集めています。

しまった――。聞けば、みなさん午後3時には会場入りして、準備を始めたというのです。申し訳ないと思いましたが、加藤さんは「これは俺がやるからいいんだ」とおっしゃいます。

歴史紡いだプライド、ひしひしと

阪急ブレーブスからオリックス・ブルーウェーブ、さらにバファローズへと変わりましたが歴史は一つです。その伝統球団のOBであることをみなさんが誇りに思っているのです。歴史を紡いできた大先輩たちのプライドがひしひしと感じられ、胸が熱くなりました。

90人くらいの出席者で盛り上がった1次会のあと、同じ場所で2次会をしました。山田さん、福本さん、佐藤さん、それからオリックスの監督を務められた大石大二郎さんら、30人くらいが残りました。

田口よ、おまえたちの世代ももっとしっかりしないといかんぞ、という話になったときです。山田さんと福本さんが同時に言いました。

「『おい悪魔』って知ってるか?」

オイアクマ? はて……。

球団の立役者が残した戒めの言葉

「おい悪魔」とは野球選手として大事な5つの戒めの言葉のことでした。

オ=怒るな

イ=威張るな

ア=焦るな

ク=腐るな

マ=負けるな

野球選手としてはもちろん、人生一般においても大切なことですね。さらに山田さんと福本さんは口をそろえ、この言葉は阪急の大先輩である中田昌宏(よしひろ)さんから教わったのだとおっしゃいました。

甲子園の近くの鳴尾高校で選抜の決勝まで行った中田さんは慶大を経て、阪急に入団し、本塁打王にもなった方です。引退後はコーチや監督代行を務め、フロントでも手腕を発揮し、私やイチロー選手が入団したときは編成部長を務めておられました。強い阪急・オリックスを築いた立役者です。

その中田さんが「おい悪魔」を若い人に教えていたのだというのです。こういう言葉が残っていること自体が阪急、オリックスの伝統の重みであり、強さの源ではありませんか。私は改めてこの球団の歴史の一端を担うことができた幸せを思うと同時に、チームの大事な財産として伝えていかなくてはと心引き締まる思いでした。

歴史を守り、伝えていく形の強化

そして考えたのです。OBに愛され、ファンに愛される本当のチームづくりはこういうところから始まるものなのかもしれないな、と。

今季の好成績を受けて、オリックスは来季、悲願の優勝を果たすべく、着々と補強を進めています。こうした人的手当てが不可欠なのは言うまでもありませんが、もう一つ、長期的視点に立つと、球団の歴史というものを守り、伝えていくという形の強化もあるのではないか、と思ったのです。

今は各球団ともファンサービスを充実させ、昔のユニホームの復刻版で戦うなど、工夫しています。オリックスも何試合かブレーブス時代のユニホームで戦っています。オールドファンを中心に阪急の黄金時代を思い出し、懐かしく思う一方、相手チームにとっては見るだけでも震え上がるユニホームです。

永久欠番の採用、オリックスに提案

もちろん私が歴史を大事にというのはこういう表面上のことだけを言っているのではありません。パ・リーグの不遇の時代にもめげず、プロ野球史にさんぜんと輝く功績を残した先輩たちの魂を引き継いでいくこと。これは10勝投手を補強したとか、そういう目に見える話ではありませんが、間違いなくチームの存立基盤の強化につながります。時代が移り、選手が代わっても堅持されていく永続的な強さにつながっていくのです。ファンとともに、より深い「思い」を共有することも可能になります。

メジャーは本当にOBを大事にします。始球式などの行事に呼びますし、永久欠番という顕彰の仕方もあります。比較的歴史の浅い球団でも、胸を張って球団史をアピールします。

メジャーから帰って、オリックスに復帰したとき私は真っ先に「永久欠番の採用を考えていただけませんか」と球団にお願いしました。山田さんの17番、福本さんの7番などを永久欠番とすることで、球団の歴史が一層重みを増し、現役選手もこの球団の伝統を守っていくんだ、という自覚が強くなるはずです。そういうことを今回のOB会で再認識したわけです。

歴史も生かし骨太なチームづくりを

OB会は現在、阪急・オリックスの在籍者のみで旧近鉄はまた別なのですが、オリックスがその後継球団であることは間違いありません。永久欠番制度を導入するにあたっては、鈴木啓示さんの1番など、旧近鉄の番号も対象としてほしいものです。

歴史を過去の伝説として埋没させるのでなく、これからの選手に知恵や勇気を与えてくれる生きた財産としていくことが、骨太なチームづくりに欠かせないと思うのです。

(野球評論家)

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