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大学受験生の間で大流行 国産教育アプリ誕生秘話

国内普及率が5割に達したスマートフォン(スマホ)。そこで動くアプリ(応用ソフト)も成熟の時を迎えている。アップルがこのほど優れたアプリを表彰する「Best of 2014」を発表したが、その顔ぶれは多彩。2008年に「iPhone 3G」が発売されて6年がたち、スマホが消費者の生活に深く根ざしたことの証明といえるのが教育関連のアプリの充実だ。24本のうち5本が勉強などに役立つもので、同時に発表したタブレット(多機能携帯端末)向けの表彰でも教育関連アプリが4本ランクインしている。開発者はどんな心意気で教育アプリの開発に臨んでいるのか。国産で「ベスト」の称号を得たスタディプラス(東京・渋谷)を訪ねた。

勉強の過程を「見える化」、学びを変える

東大を目指す長谷川よし乃さんはスタディプラスが開発したアプリ「Studyplus」が受験勉強に欠かせないという

「受験生の自分を律してくれる欠かせない存在。多くの友達も使っていて、お互いに刺激しあえるのもうれしい」。スタディプラスが開発したアプリ「Studyplus」を評価するのは、都内の女子高出身で現在浪人中の長谷川よし乃さん(19歳)。東大を目指す彼女は、朝2時に起きて約100冊の参考書を相手にひたすら受験勉強に打ち込む毎日を送るが、片時も手放せない「相棒」がStudyplusだという。

アプリの特徴は、日々の勉強の過程を記録し続けるとグラフで可視化できる点にある。利用者は自分が持っている受験参考書を登録し、いつ何分勉強したかをその都度入力していく。操作性はストップウオッチに近く、勉強開始時と終了時にボタンを押すだけ。モードを変えると「日」「週」「月」で積み上げグラフで勉強の記録を振り返られる点に工夫がある。外部サイトと連携して日本で出版されている大半の受験参考書の情報を取得できるので、初期設定も手間がかからない。

使い方は簡単。現在使っている参考書をまず登録
勉強が終わるたびに、どの本をいつ何時間取り組んだかを記録。すると積み上げグラフで勉強の経過が可視化される

スタディプラスの広瀬高志社長は開発の原点を次のように明かす。「教育のあり方を抜本的に変えたかった。テクノロジーの力を借りれば、これまでの受動的な『教わる』から自主的に『学ぶ』ことが主役になる学習スタイルが生徒・学生に根付くはずだと考えた」。

スマホブームで教材をデジタル化する動きはあったが、それだけでは単に紙の受験参考書の形が変わっただけ。生徒・学生の学習スタイルや効率性はさして変わらないと常々感じていたという。「抜本的に変えるには、学習管理の自主性を生徒や学生の手元に取り戻すアイデアしかない」。現状、学習管理は学校や塾の先生がアナログで行っており、生徒・学生も頼り切っていることが多い。そこで誰も手を付けていない「デジタル」と「学習管理」の掛け算を試みた結果生まれたのがStudyplusというわけだ。

スタディプラスの広瀬高志社長は、生徒や学生の学習スタイルを「教わる」から「学ぶ」に変革させたくてこのアプリを作った

スマホを肌身離さず持ち歩くデジタルネーティブ世代の行動様式をよく研究し、使い勝手にはとことんこだわり2012年にリリース。狙いは大当たりだった。1年で会員数が10万人を突破。その後も加速度的に増え続け、12月現在で85万人に達した。現在大学志願者数は60万人台後半とされており、いかに多くの受験生に支持されているかがうかがえる。リクルートマーケティングパートナーズが実施した調査でも、高校生がよく使う勉強関連のアプリランキングで1位になった。

アプリで勉強した結果も記録

前出の長谷川さんの場合、現役受験生時代の昨年夏に使い始めた。「実はSNS(交流サイト)機能も魅力。よく知っている親友だけでなく、会ったことがない同じ志望校を目指す仲間とも出会うこともできた」という。Studyplusには、「フェイスブック」やミニブログツイッター」に近いタイムライン表示機能が用意されている。友達関係になると、相手の学習の過程を自分のタイムラインに流すことができるのだ。

「一つの教科についつい夢中になって取り組んでしまいがちなので、友達がバランスよく勉強しているのを知ると、改善するよいきっかけになる。お互いに日々切磋琢磨(せっさたくま)できる」と長谷川さん。知らない参考書との出会いも演出してくれる点や、勉強の仕方をお互いに教えあったりするのも魅力的だと語る。

アップルが表彰した「Best of 2014」では教育関連のアプリが多く占めた
iPhone向け
Duolingo(Duolingo)
すらすら!かずあそび(NCSOFT)
ラーニングドラゴン 英単語3300(スタディプラス)
OKpanda毎日英語(OKpanda)
POLYGLOTS(ポリグロッツ)
iPad向け
楽しい物理百科: 磁石と電気(NCSOFT)
Slice Fractions(Ululab)
Duolingo(Duolingo)
タッチノーテーション(河合楽器製作所)

実は今回Best of 2014に選ばれたのはStudyplusではなく、5月にリリースした英単語学習アプリ「ラーニングドラゴン英単語3300」だ。ロールプレイングゲーム(RPG)感覚で難関大学の入試に必要な3300の英単語を楽しみながら覚えられる点に特徴がある。選出理由についてアップルは「キャラクター育成の要素を加え、ユーザーに学習を継続させるモチベーションを与えている」と説明する。

本アプリの本懐はStudyplusと連携して動く点にある。画面右上にある「連携」と書かれたアイコンを押すと、単語を覚えた経過を自動的にStudyplusに記録できるのだ。アプリやネットサービスと通信しあうAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)と呼ぶ技術仕様をスタディプラスは公開しており、他社が活用できるようにしている。ほかの教育関連のアプリで勉強した過程も取り込むための工夫だ。

ラーニングドラゴン英単語3300を開発したのは、API活用のモデルケースをいち早く他社に示したかった狙いもあった。Studyplusと連携できれば、80万人の会員ネットワークを通じて口コミで広がるかもしれない。そこに目をつけたアプリ開発会社が徐々に現れ、連携アプリは現在20種類になった。例えば長らくアップルの有料アプリランキングでトップ10入りし続けている「本気で英会話!ペラペラ英語」もその一つだ。

「昨年は苦戦した問題が、効率的に勉強するようなったおかげもあり、解けるようになった」と長谷川さん。東大受験に向けて自信を深めつつあるという

Studyplusの利用者は平均で1日8.3回立ち上げるという。受験生に限れば、無料対話アプリのLINEに匹敵するかそれ以上に影響力を持つ存在になりつつあるのは間違いない。東大を目指す長谷川さんは「アプリを使ったからといってもちろん勉強の中身まで変わらない。ただサボってもガンバッてもありのままの自分がそのまま浮き彫りになる」感覚がたまらなくて使い続けるとする。昨年は解けなかった問題が今年は解けるなどダイレクトな手応えも感じているようだ。

スマホ革命によって、教育コンテンツの流通についても国境の概念が薄れ、海外の優れたアプリやネットサービスに気軽に触れ合えるようになった。裏を返せば、日本の教育コンテンツが海外に進出する扉も開かれたともいえる。

今回のBest of 2014ではスタディプラス以外にも、英語ニュースを読みながら「英語脳」を鍛えるアプリを開発したポリグロッツ(東京・渋谷)など、国産の優れた教育アプリも選出された。一過性のブームではない新しい日本型の教育スタイルをしっかりと根付かせれば、第2の「公文式」がデジタル発で生まれる可能性もある。

(電子報道部 高田学也)

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