スマホ、ユニクロ流で安く フリービットの挑戦
「私、『格安スマホ』という言葉が大嫌いなんです」――。格安スマホ事業者として紹介されることが多いフリービットの石田宏樹社長は、きっぱりとした口調で語り出した。同社のスマホは月額1000円(端末代と税は別)から利用できる。格安には間違いないが、「提供しているサービスは(NTTドコモなど)携帯電話会社に引けを取らない」と言い切る。
法人向けインターネット接続サービスのフリービットが、仮想移動体通信事業者(MVNO)として、スマートフォン事業に参入したのは2013年11月。同事業を支える自社特許は24を数え、参入準備には約10年を費やしたという。自社開発した端末「PandA(パンダ)」は自社店舗やテレビ通販で販売している。アパレルのSPA(製造小売り)として成長を続けるファーストリテイリングになぞらえ、石田社長は「フリービットはモバイル界のユニクロだ」と力を込める。
独自技術を持つSPAだからできるサービスは少なくない。たとえばコールセンター。オペレーターは顧客の端末を許可を取って遠隔操作し、壁紙設定などを手助けする。スマホ初心者の高齢者でも安心して同社のサービスを利用できるようにすることで、顧客層を広げている。
石田社長の人となりを語るうえで有名なエピソードがある。高校時代、ソニー創業者の盛田昭夫氏に手紙を書いた。購入したソニー製品に対する抗議である。同時に将来はソニーに入って活躍したいという夢もつづった。盛田氏は石田少年にメッセージを寄せた。「自分で組織を作って、通信をやりなさい」と――。
国内のスマホ市場は飽和感が強まっている。ドコモやソフトバンク、KDDI(au)という電話会社同士が激しく火花を散らすなか、楽天やイオンといった流通のビッグネームが格安スマホ事業に続々と参入。そんななか、フリービットは3年間で120万台の販売を目指す。「まずはシェア1%。そして、インターネット屋がスマホを変える」。盛田氏に導かれて起業した石田社長の挑戦は新たなステージに入った。
(映像報道部 斎藤一美)