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東京にバス新時代 「鉄道空白地帯」臨海部の新たな足

ケンプラッツ

2014年10月末に「事業協力者」が決まった、東京都心部と臨海副都心を結ぶ東京都のBRT(バス高速輸送システム)計画。2019年度内の運行開始を目指し、2014年度内にルートなどの基本計画が策定される予定だ。

一方、都心部では虎ノ門の日比谷線新駅や東京駅周辺などの開発事業で、新たにバスターミナルを整備する計画も進む。東京都心部のバスをめぐる動きが活発化してきた。

「鉄道空白地帯」を埋めるBRT

晴海に建設される予定の選手村をはじめ、2020年の東京五輪に向けて変貌する東京の臨海部。近年、高層マンションなどの建設が進んでいることから人口は増え続けているが、現状では都心部へのアクセスは決して便利とはいえない。

勝鬨(かちどき)橋を渡る都営バス。勝どき、晴海地区は鉄道網からやや外れており、都心部へはバスが重要な交通手段だ(写真:小佐野カゲトシ)

地下鉄などの鉄道網からやや外れた地域のためバスに依存する部分が多いほか、数少ない鉄道駅には利用が集中している。都営地下鉄大江戸線の勝どき駅は開業以来利用者が増え続け、2013年度の1日平均乗降人員は9万601人。大江戸線38駅中で新宿、大門、六本木に次いで多く、他線との連絡がない駅としては都営地下鉄で最多だ。

勝どき駅では、ラッシュ時はホームや通路が激しく混雑することから、現在は島式1面のホームをもう1面増設し、コンコースを拡張する工事が行われている。都は当初、2015年度の使用開始を予定していたが、工事の進捗や今後の工程を精査した結果、2018年度に延期することを2014年11月12日に発表した。

[左]ホーム増設などの工事が行われている勝どき駅。周囲には高層マンションなどが建ち並ぶ [右]勝どき駅はホーム増設のほか、現在はつながっていないコンコースの一体化も行われる(写真:いずれも小佐野カゲトシ)

環状2号線が五輪の主要ルートに

一方、道路については2016年の完成を目標に「環状2号線」の工事が進む。環状2号線は有明(江東区)と神田佐久間町(千代田区)を結ぶ都市計画道路で、終戦直後の1946年に都市計画が決定。2014年3月末、約60年の歳月を経て虎ノ門─新橋間の約1.4kmが開通した。

残る新橋─豊洲間についても、隅田川にかかる「築地大橋」の桁の架設工事が5月に完了するなど工事が進んでおり、都心と臨海部を直結する五輪開催時の主要な輸送インフラとして期待を集めている。

[左]隅田川にかかる環状2号線の「築地大橋」。五輪開催時の主要道路として期待されている [右]2014年3月末に開通した環状2号線の虎ノ門─新橋間。「虎ノ門ヒルズ」の下を通って新橋方面へと向かう(写真:いずれも小佐野カゲトシ)

こうした交通環境を踏まえ、東京都は2014年8月末、都心と臨海部を結ぶ「中規模な交通機関」を整備する計画を発表。整備に向けた都の考え方を示した「都心と臨海副都心とを結ぶ公共交通に関する基本指針」に基づき、環状2号線を中心としたBRTなどを念頭に、導入する交通システムやルートなどを検討する「事業協力者」を募集した。応募は7件で、提案内容はいずれもBRTだった。

それぞれの提案内容は非公表だが、実現可能性などを審査した結果、京成バスと東京都交通局の2者が事業協力者に選ばれた。今後は、2015年3月末を目標に運行ルート案や施設、料金などの基本的な事項を定める「基本計画」を策定し、2016年度には実際に運行する事業者を公募する予定だ。

中央区と連携、複数ルートも?

都心と臨海部を結ぶ公共交通の計画は今回が初めてではない。2012年度に中央区が銀座と晴海地区を結ぶ「基幹的交通システム」構想を打ち出している。導入する交通システムは、将来的なLRT(次世代路面電車)への移行にも言及しつつ、整備に時間がかかることからBRTを想定しており、区ではルートの検討などを進めていた。

[左]中央区の「基幹的交通システム導入の基本的考え方」に掲載された、BRT導入ルートの比較検討案。3案のうち2つは環状2号線、1つは晴海通りを通っている(資料:中央区) [右]都の「都心と臨海副都心とを結ぶ公共交通」の対象エリア。東京駅付近から臨海副都心まで含まれる(資料:東京都)

都は中央区と連携して計画を進めるとしており、中央区側も「これまでも都の協力はあったが、より実現に近づいた」(同区環境政策課)と期待する。

ルートについては、基本方針にもあるように環状2号線を中心に検討されるとみられるが、これから都と中央区、事業協力者などが協議して策定するため、発着点を含めてまだ決まっていない。ただ、中央区の構想が基本的に同区内を結ぶルートだったのに対し、都の計画では都心部は東京駅から新橋・虎ノ門地区まで、臨海部は豊洲や臨海副都心地区までのより広い範囲を対象としている。

都側は「(柔軟な運行ができる)バスなので、ルートは一つだけに限定することもないだろう。中央区のニーズにも対応できるルートが出てくると思っている」(都市整備局交通企画課)と、複数のルートが検討される可能性を示唆する。

完全な専用道は「現実的に難しい」

BRTが高速・定時輸送を行うためには、専用レーンや専用走行路といった設備が重要となる。

海外の都市部で見られるBRTは、道路上に他の一般車とは仕切られた走行路を設ける例が多いが、都は「他の道路と区画された完全な専用道は、現実的には難しいだろう」(都市整備局交通企画課)との見方を示す。現在一般的に見られるバスレーンのように、時間帯別の専用レーンや優先レーンを走らせる方式で検討が進みそうだ。

[左]韓国・ソウル市のバスシステム。道路の中央に上下線のバス専用レーンがあり、他の一般車は入れない [右]ノンステップバスでも路上との段差や隙間は避けられないが、新技術の活用で改善することも考えられる(写真:いずれも小佐野カゲトシ)

新技術の導入も注目されるポイントだ。都は事業協力者を募集する際に「新技術を積極的に導入する意思のある者」を応募資格の1つとした。都が進める水素エネルギーの活用に向けた燃料電池バスの導入などが考えられるほか、「例えば自動運転技術を活用して、バスをバス停にぴったり停めるといった技術も検討される可能性がある」という。

現状では、バスは乗り降りの際に歩道との段差や隙間がどうしてもできてしまう。停留所に停まる際にバスを自動制御し、正確に乗り場に合わせて停めることで、バリアフリー化や乗降時間の短縮を図るというアイディアだ。

都心部に生まれるバスターミナル

BRTが2019年度の運行開始を目指すなか、都心部では新たなバスターミナルを整備する動きも見られる。2014年3月末に環状2号線が新橋まで開通し、6月には高さ247mの超高層ビル「虎ノ門ヒルズ」がオープンした虎ノ門地区もその一つだ。

[左]高さ247mの超高層ビル「虎ノ門ヒルズ」がそびえる虎ノ門地区。都は同地区の交通結節機能強化を掲げている [右]銀座線虎ノ門駅。現時点で「虎ノ門ヒルズ」の最寄り駅だが、やや離れている(写真:いずれも小佐野カゲトシ)

都は2014年9月に発表した「東京都長期ビジョン(仮称)」の中間報告で、虎ノ門地区の交通結節機能の強化を掲げており、10月には「環状第二号線新橋・虎ノ門周辺地区整備計画」が決定。東京地下鉄(東京メトロ)と都市再生機構(UR)が「虎ノ門ヒルズ」付近に東京メトロ日比谷線の新駅を設置すると発表した。

日比谷線は「虎ノ門ヒルズ」の西側を通る桜田通りの地下を通っており、新駅は霞が関─神谷町駅間に設置する。整備事業は実施主体がUR、東京メトロは設計・工事を受託し、2020年の東京五輪までに供用開始を目指す。

[左]日比谷線新駅が設置される「虎ノ門ヒルズ」付近の桜田通り。この地下を日比谷線が走っている(写真:小佐野カゲトシ) [右]日比谷線新駅とバスターミナルが描かれたイメージ図(資料:東京都)

整備計画では虎ノ門一丁目地区にバスターミナルを整備することも掲げられている。「東京都長期ビジョン(仮称)」中間報告によると、供用開始の目標年次は日比谷線新駅と同じ2020年。ターミナルがどのような施設になるかは現時点では未定。「イメージ図はあくまでイメージ」(都市整備局開発企画課)だが、日比谷線新駅や銀座線虎ノ門駅とは「地下歩行者ネットワーク」で結ぶ構想だ。

東京駅もバスの一大拠点に

東京都心・臨海地域(八重洲地区)の整備計画区域図。3つの再開発事業で、それぞれの地下にバスターミナルを整備する計画だ(資料:東京都)

東京駅八重洲口でもバスターミナルの整備が計画されている。都などによる「東京都心・臨海地域(八重洲地区)整備計画」では、東京駅八重洲口で行われる3つの再開発事業で、それぞれの地下部分に計1万9000平方メートルのバスターミナルを整備するとしている。3つのうち「(仮称)八重洲バスターミナル(B)」は事業の実施期間が最も早く、2015年度から五輪開催年度の2020年度までとなっている。

新たに整備されるバスターミナルは「空港直結バスや各地方都市とを結ぶ高速乗合バスの集積」「観光バスの発着場」などとして、「広域交通の結節点としてのターミナル機能を形成」することがうたわれている。東京駅八重洲口にはすでにJRバスの高速バスターミナルがあるが、新たなターミナルの整備で東京駅はバスの一大拠点となりそうだ。

[左]東京駅八重洲口の「グランルーフ」に広がるJR高速バスターミナル [右]東京駅八重洲口周辺には高速バスなどが発着する乗り場がいくつもある(写真:いずれも小佐野カゲトシ)
銀座6丁目10地区再開発事業の工事現場。大規模複合施設が建設される(写真:小佐野カゲトシ)

このほか、銀座では旧松坂屋銀座店跡地を中心とした「銀座6丁目10地区」の再開発事業が進んでいる。

同地区では2016年11月の竣工を目指し、商業施設やオフィスなどで構成される地上13階、地下6階の大規模複合施設の建設が進んでいる。ここには観光バスなどの乗降スペースが設けられる計画となっている。中央区のBRT構想では、この複合施設付近を発着点とする検討案も出ていた。

どうなる、BRTと新ターミナルの連携

都の「都心と臨海副都心とを結ぶ公共交通に関する基本方針」では、こういった大規模開発の一環として計画されているバスターミナルについて、「都心部から各方面へのアクセスを可能にする有用な結節点」と位置づける。勝どき・晴海地区や臨海副都心へのアクセスを考えるうえでは、「環状第2号線で結ばれるこうした都心部の結節点を活用することが重要」と述べている。

実際にこれらのバスターミナルがBRTの発着地や経由地となるかは、現状では未定だ。都市整備局開発企画課の担当者は「(新しく整備されるターミナルは)候補には当然入るだろうが、必ずしもそういった場所に限定されるわけではない。既存のバス停やバスターミナルなども含めて考えていく」と話す。

虎ノ門ヒルズ付近を走る都営バス。新たなバスターミナルの整備で、既存のバス路線網がどう変化するかも注目される(写真:小佐野カゲトシ)

東京都の舛添要一知事は2014年6月の都議会所信表明演説で、東京の鉄道とバスの関係について「これまでは両者を有機的に捉えるという発想がほとんどなかったのではないか」と指摘し、「身近な足であるバスの役割はますます増してくると思う」と述べている。BRTや新たに整備されるバスターミナルが東京の「バス新時代」を切り開くことになるか、今後が注目される。

(RailPlanet 小佐野カゲトシ)

[ケンプラッツ2014年11月28日付の記事を基に再構成]

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