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震度5強の白馬村に全壊多数集落、長野県神城断層地震

日経アーキテクチュア

全壊した家屋の多くが、2階が落下し1階が押しつぶされていた――。2014年11月22日午後10時8分に発生した「長野県神城断層地震」では、長野県白馬村の一部の集落に住宅被害が集中した。

記者は2014年11月24日に現地に入り、被害状況を取材した。震度5強の白馬村で、なぜ被害が集中したのか。現地の状況と専門家の見解を速報する。

長野県の長野市と小谷(おたり)村、小川村で震度6弱、白馬村と信濃町で震度5強の揺れを観測した。気象庁によると、震源の深さは約5km、地震の規模を示すマグニチュードは6.7だった。

長野県によると、11月25日午後5時時点で、県内の負傷者は45人(うち10人が重傷)。住宅被害は、全壊31棟(白馬村27棟、小谷村4棟)、半壊56棟(白馬村17棟、小谷村27棟、長野市12棟)、一部損壊は418棟。非住家の全壊、半壊は74棟(白馬村72棟、長野市2棟)だ。白馬村の建物被害が際立って多い。

白馬村で被害が集中していたのは、白馬村役場から南に5kmほどの白馬村神城の堀之内地区と三日市場地区だ。堀之内地区は、姫川水系の谷地川沿いの小高い場所にある。

緩傾斜の土地に形成された集落で、背後に約100mの高さの山がある。三日市場地区は堀之内地区から約500m南にあり、同様の地形に集落がある。

堀之内地区に入ると、多数の住宅が倒壊している様子が目に飛び込んできた。1階が傾いて転倒している住宅が多い。道路の路面には、数多くのクラックが発生し、突き上げたり、開いたりしていた。被災建築物応急危険度判定の結果、「危険」という判定を示す赤紙が張られた建物が多い。

避難場所の堀之内公民館も被災

堀之内地区の中心部にある堀之内公民館は、今にも倒壊しそうな様子だった。建物のわきに避難場所の看板が掲げられていたが、隣接する建物が倒壊し、屋根が通路をふさいでいた。公民館の前に立っていた墓石はほとんどが転倒していた。転倒方向はまちまちだ。

堀之内地区では、大きな建物はほとんどなく、築年数も古いものが多い。応急危険度判定は、地震発生翌日の11月23日に行われていた。安全であることを示す「調査済」の緑紙の張られた住宅は少ない。

倒壊していない場合でも、応急危険度判定で「要注意」の黄紙が張られている建物が目立った。比較的新しい住宅では、窓ガラスが割れて地面に散乱する被害も見られた。サッシが大きくゆがんだ可能性がある。住民によると、地震発生時に、強い横揺れを感じたという。

堀之内地区では、歩道のマンホールが一部で浮き上がっていた。この日、現地調査をしていた東京電機大学の安田進教授は、「埋め戻し土が液状化したと考えられる。地下水位が浅かったのではないか」と語る。安田教授によると、この地区では所々に洗い場として使っているような貯水枡があり、地下水位が浅い証拠とみている。

擁壁損傷、道路崩落も

堀之内地区ではこのほか、ブロック塀の倒壊や道路のひび割れなどの被害が多数見られた。道路の路肩が崩落した箇所もあった。

三日市場地区でも同様の被害が見られた。地区の北側に全壊した家屋が集中し、路面に多数のひび割れが入っているのを確認できた。

なぜ、堀之内地区周辺の被害が甚大だったのか。安田教授は、地区内での振動の分布に関する余震観測や地盤調査による地層の推定などを行わないと、原因は明らかにできないと断ったうえで、次のような見解を示した。

「墓石がほとんど倒れるほど、振動が強かった。緩やかな傾斜地盤で、地下水位も浅い。これらによって、振動が強くて慣性力で家を壊す力が働き、さらに地盤が広い範囲で少しずつずれて、局所的に水平方向に引っ張りや圧縮ゾーンができた。これが家の基礎を変形させ、多くの家屋が全壊したのではないか」。また、「震源に近かったことに加え、山際の基盤が不整形地盤であるため、振動が強くなった可能性がある」としている

つまり、表層地盤や地形に起因して、局所的に「震度5強」より強い揺れが生じた可能性が高い。

JR大糸線で土砂崩れ

長野県神城断層地震では、土砂崩れなども多発した。例えば、白馬村の北に位置する小谷村では、白馬大池駅付近でJR大糸線沿いの斜面が崩壊した。崩壊箇所から水が噴き出している様子を確認できた。

このほか、JR大糸線は、線路の液状化や電柱の傾斜などが発生した区間もあった。JR大糸線は11月25日の始発から、信濃大町駅~白馬駅の運転を再開した。

谷川沿いの集落が多い小谷村では、集落の近くで土砂崩れが発生した地点もあった。例えば、小谷村中土では、地面に亀裂が入り、谷の両脇の斜面には小規模な土砂崩れの跡があちらこちらに見えた。

流出した樹木が、砂防ダムにせき止められている場所もあった。その下には道を挟んで中谷地区センターがある。近隣の住民によると、地震発生後に一次避難場所となっている同センターに逃げ込んだが、地震発生後1時間ぐらいたってものすごい音がしたため、二次避難場所に場所を移したという。

地盤変状による道路の損傷も多くの箇所で発生している。国道148号や406号では土砂崩れが発生し、一部で通行止めとなった。県道や村道も路面陥没などによって通行止めの箇所が多数出ている。

(日経アーキテクチュア 佐々木大輔)

[ケンプラッツ 2014年11月26日掲載]

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