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富士重の新アイサイトが最高評価 自動ブレーキ実車試験

日経Automotive_Technology
日経BP社が発行する自動車技術専門誌「日経Automotive Technology」は2014年10月、自動車メーカー3社が販売する自動ブレーキ搭載車について、低中速における車両と歩行者の認識・衝突回避機能をテストした。これは同誌が2014年3月、業界初の試みとして評価・公開した同様の実験の第2弾である。今回のテストでは、前回トップの富士重工業「EyeSight(アイサイト)」の最新版が、前回に続いて最高評価の「AAA(トリプルエー)」を獲得。マツダとドイツBMWのシステムは「A」評価だった(詳細は2015年1月号に掲載)。

2014年10月に新たに評価した3種類の自動ブレーキ機能は、富士重工業の新型ワゴン「レヴォーグ」に搭載する「EyeSight(ver.3)」、マツダのセダン「アテンザ」に搭載する「スマート・ブレーキ・サポート(SBS)&スマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)」、BMWのセダン「5シリーズ」に搭載する「ドライビング・アシスト・プラス(DAP)」である()。

結果は、EyeSight(ver.3)が従来のver.2と同じ7点を獲得し、最高評価のAAA(トリプルエー)だった。車両を模擬したターゲットに約60km/hで向かってもぶつかることなく、衝突を回避した。さらに、歩行者を模擬したターゲットに約30km/hで向かってもぶつからなかった(図1)。

SBS&SCBSとDAPはともに2点で、Aを獲得した。点数の内訳は両者で異なる。SBS&SCBSは対車両と対歩行者の試験で約20km/h、DAPは対車両の試験で約30km/hのときに衝突を回避した。

試験条件は前回と基本的に同じである(記事末尾に試験条件の詳細を記載)。直線の舗装路上に車両と歩行者を模擬したターゲットを置き、各社の自動ブレーキ機能の搭載車をターゲットに向けて一定速で走らせることで試験した。

車速は原則として20km/h、30km/h、40km//h、50km/h、60km/hの5段階。前回は50km/hまでだったが、今回はEyeSight(ver.3)で60km/hを試した。衝突を回避できたときの最大車速(約20km/h以下、約30km/h、約40km/h、約50km/h、約60km/h以上)に応じて点数を与え、車両と歩行者の試験のそれぞれの点数の合計値を基に「A」「AA(ダブルエー)」「AAA」の3段階に分けて評価した(図2)。

EyeSight(ver.3)が対車両の試験で衝突を回避した約60km/hという車速は、これまで日経Automotive Technology誌が評価した12種類の自動ブレーキの中で最も高い(図3)。ver.2では約50km/hだったので、10km/hも高い。

これほど高い車速で衝突を回避できたのは、ステレオカメラの性能を大幅に高め、物体を検知できる範囲をver.2に比べて、前方と左右方向でともに4割以上広げたためだと考えられる。カメラの画素数を約30万画素から100万画素以上に増やしたことに加えて、レンズを改良して実現した。検知距離が長いと、制動距離が延びる比較的高い車速域で衝突を回避しやすくなる。

車速が約60km/hの場合、EyeSightの警報は衝突の約3秒前に鳴っており、約60m先にある物体が車両かどうかを正しく認識する能力があると言える。

"歩行者らしくないもの"を見つける

一方、対歩行者の試験は、ver.2に比べて衝突を回避した車速が下がった。ver.2は約40km/hで回避できたが、ver.3は約30km/hにとどまった。試験で使った歩行者を模擬したターゲットはver.2の試験と同じもののため、対歩行者の衝突回避性能が下がったように見える。

だが実際は、ver.2に比べて歩行者か否かを厳密に判定する認識アルゴリズムを変えたことが原因のようだ。ver.2で歩行者と認識したターゲットを、ver.3では歩行者と認識しにくくなった。

自動ブレーキは一般に、「車両や歩行者が本物かどうか疑わしい場合は、なるべくブレーキをかけない」(国内自動車メーカーの技術者)と考えて設計する。車両や歩行者と異なるものに反応して自動ブレーキが作動すると不具合とみなされ、場合によってはリコールにつながる。誤認識の確率をゼロにすることは極めて難しいが、多くのメーカーが少しでもゼロに近づけるよう開発工数の大半を割いている。

富士重工業もver.3の開発に当たって、ステレオカメラの認識能力が高まったことを利用し、ver.2に比べて"歩行者らしくないもの"を識別する能力を高めることに力を注いだようだ。仮に"本物の歩行者"であれば、ver.2と同等以上の衝突回避速度に達した可能性がある。

EyeSightは走行中、前方の物体が歩行者かどうかの"確度"を常に計算している。確度がしきい値を超えると警報を鳴らし、その後、衝突の約1.2秒前から減速度が2~4m/s2(sの2乗)(0.2~0.4G)に達する弱い1次ブレーキ、約0.6秒前から8m/s2(0.8G)程度になる強い2次ブレーキをかける。しきい値は、警報から1次、2次に移るにつれて高くなる。例えば1次のしきい値を超えたものの、2次のしきい値を超えない場合、1次ブレーキまでしか作動しない。

加えて、車速が高まるにつれて、しきい値を上げる傾向もあるようだ。対歩行者の試験で約30km/hのときは2次ブレーキが作動して衝突を回避した一方、約40km/hの試験では1次ブレーキまでにとどまったからだ。車速が高いほど、誤って自動ブレーキをかけたときの運転者へのダメージが大きくなることに配慮したのだろう。

試験概要と評価の基準
【実施月】2014年10月
【天候】晴れか曇り
【試験内容】原則として約20km/h、約30km/h、約40km/h、約50km/h、約60km/hの5段階の車速において、ターゲットに向けて試験車両を走らせた。試験は100mの直線で実施した。各車速で原則として3回試験した。そのうち、最も性能が良かったとみられる結果で評価した。運転は、元大手自動車メーカーの実験部ドライバーが担当した
【ターゲット】車両を想定したターゲットは、車両の後ろ姿を印刷した布に、赤外線レーザーの反射板と、ミリ波レーダーの電波を反射する三角錐上のリフレクターを取り付けたもの(下の図A)。リフレクターは3個使った。一方、歩行者を想定したターゲットには青色の服にスポンジを詰めた人形を使った(図B)。車両のターゲットよりも小さな三角錐上のリフレクターを3 個取り付けた。リフレクターはキーコム製で、同社製のイメージングレーダーで反射強度が車両や歩行者と同じ程度であることを確かめている(図C)。このほか、今回の評価には反映していないが、ダイナテック提供の子供を模した背の低い人形も使っている
【位置・車速・加速度計】Oxford TechnicalSolutions社製「RT3000シリーズ」(ダイナテック提供)を利用(図D)
【試験車】「アテンザ」(マツダ)、「レヴォーグ」(富士重工業)、「5シリーズ」(BMW)
【配点】対車両、対歩行者の試験で衝突を回避した車速の最大値に応じて点数を与える。約60km/h=5点、約50km/h=4 点、約40km/h=3 点、約30km/h=2点、約20km/h以下=1点
【評価】対車両と対歩行者の点数の合計値で評価した。AAA=5点以上、AA=3点以上、A=1点以上。
【協力】キーコム、埼玉自動車大学校、東京工業大学准教授の実吉敬二氏、ダイナテック

(詳細記事を日経Automotive Technology 2015年1月号に掲載)

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