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レース直前どう過ごす ランナーの疑問に答える

ランニングインストラクター 斉藤太郎

いよいよフルマラソンのレース本番が近づき、高まる期待とともに落ち着かなくなってきたというランナーもいることでしょう。これまで思った通りの練習ができた人もできなかった人も、いまの実力を最大限に発揮するために大切なのは平常心を保つこと。普段通りに過ごすのが何よりですが、不安なく本番を迎えるにはどうすればいいか、今回はそういったランナーの疑問にお答えします。

【レース7日前】

しばらく忙しくて時間が取れず、練習不足です。せめて最後の週末に20キロくらい走っておいた方がいいですか?

フルマラソン3時間45分以内での完走を目指してトレーニングを積んできた人ならいいですが、練習不足の人が1週間前に20キロ走ってしまうとオーバーワークになります。その疲れが抜け切れずに本番レースで戦い抜く体調ではなくなってしまう可能性が高いです。最後に長距離向けのスタミナ補充をしたいのなら、20キロを走るのではなく、90分から120分間のウオーキングをするのがいいと思います。体へのダメージを軽減しつつ、足腰の筋肉の持続性を補うことができるはずです。背筋を伸ばして骨盤は前傾、脚の付け根である骨盤からの脚運びを意識しながら歩きましょう。

スピードに自信がないです。レースペースでどのくらい走っておく必要がありますか?

「レースペース」とは何を指すものでしょうか。自分の実力に見合った走り切れそうなペースなのか、夢や目標として掲げる高い壁のようなタイムから割り出したペースなのか。答えは前者。「今回のレースではこれくらいでいけそうだな」といった感覚で走ってみてください。練習例としては、まず15分くらいのジョギングから始めてストレッチで仕切り直しし、ペース確認ランを5キロ。私がおすすめするのは、想定するペースにややゆとりを持った速さで走り始めること。1キロ5分のペースを想定する人なら、最初の1キロは5分10秒ペース、そして以後1キロごとに少しずつペースを上げていく方法です。「5.10、5.05、5.00、5.00、4.55」といった感じで。例えて言うと衣服を選ぶ際、ゆとりを持ったサイズを着てみて、少しずつ丈を詰めていくようなものです。本番レースでも序盤は抑えたペースで走り、体がほぐれてくる15キロあたりから少しずつスピードを上げていくのが理想的です。

疲れがたまっています。どうすればいいですか?

風邪気味などで体調不良の場合は、十分な睡眠をとって静養・回復に専念すべきです。そうではなくて疲労がたまっているときには、じっとしているよりも極力体を動かすことで疲労を拭い、レースに向けた体力補充に努めたいものです。何もしないで休むだけでは、疲労が抜けたとしても体力が落ちてしまいます。こんなときには軽い運動で体内の循環を促して調子を上げましょう。例えば、1時間程度のウオーキングとストレッチの組み合わせ、または、5分間ウオーキングと5~10分ゆっくりジョギングを3~4セット繰り返す。筋肉を伸縮させ、適度に汗を流すことで体の内側から代謝を促し、疲労を抜いていきます。スローペースで体を動かすうちに、なんだか心地よくなってきたなと感じられればしめたものです。入浴やシャワーの後にゆっくりストレッチをするのもいいでしょう。

【レース前日】

レース前日は走った方がいいですか?

平常心を保ってレース本番に臨むことが快走につながる(ちばアクアラインマラソン2014)

毎日のようにトレーニングするのではなく週2、3回程度である人が、レース前日に走るか走らないかで結果が大きく変わることはないと思います。ただ、何もしないのではなく、筋肉を伸縮させ適度に汗を流しておいた方が翌日のスタートを良い状態で迎えられるでしょう。ジョギングはしなくても、30分程度の散歩とストレッチくらいはしておきたいものです。特に遠方でのレースの場合には移動による筋肉疲労が伴うので、体をほぐすことを心掛けてください。少し走っておこうという人は、1キロまたは2キロをレース想定で走ってペースを確認するのがいいでしょう。10~20分ゆっくりジョギングで筋肉をほぐし、ストレッチをしてから走ります。このほか短い距離を全速力の80%くらいで走る「流し」を100メートル×3~5本取り組むという方法もあります。

「刺激走1キロ」という練習法、フルマラソンに有効ですか?

レースペースよりも速いペース(10~20秒速いくらい)で1キロを走る練習です。心拍数が上がって血流が激しくなり、呼吸が上がって肺が開いた感じになります。この練習法は上級者を除き、フルマラソン対策にはおすすめできません。スタートから速いペースで走る駅伝、5キロや10キロか、せいぜいハーフマラソンまでのレース向けのもの。速いペースで走り出して急に心拍数が上がっても体がびっくりすることなく、リラックスしてレース展開に対応できるために備えるのが目的です。フルマラソンではむしろ、序盤はオーバーペースにならないように自制するのがカギとなります。この練習をすると体が軽くなった感じになり、走り出したら速いペースを抑えにくくなってしまって逆効果といえます。

炭水化物、どのくらい食べておくべきですか?

マラソンを走る主なエネルギー源となるグリコーゲンを体内に蓄えるために、コメやパン、麺類など炭水化物を多めに摂取するカーボローディング。白米だと普段の1.2倍、多くても1.5倍くらいの量が目安でしょう。いつもと違う食生活をしたせいで、おなかがもたれて失敗してしまったという話もよく聞きます。無理に押し込むようなことは避けてください。度を超したことをして体に負担となっては元も子もありません。

レース前夜、なかなか寝付けません。どうすればいいですか?

一大イベントを控えて緊張感を覚えたり、翌朝早く会場に向けて出発しなければならなかったりで、通常より睡眠時間がとれないというランナーも多いようです。でも、眠れなかったことを精神的に引きずってしまわないこと。眠りに落ちる時間が短くても、横になっていれば体は休まります。必要なのはパソコンの電源を一度落として再起動、そうしてスイッチを入れ直すような眠り。トータルの時間ではありません。焦らずリラックスを心掛けましょう。

【レース当日】

朝食はスタート何時間前に食べておくべきですか?

晴れ舞台のレースでは伸び伸びと走ろう(ちばアクアラインマラソン2014)

個人差はありますが、スタートの3時間前に食べ終わるのが基本です。スタート前に食べる量とタイミングを考える際は、スタートからゴールまでの時間帯と普段の生活時間とを照らし合わせることで、どうすればいいかが見えてきます。朝スタートしてお昼前後にゴールできるレースであれば、朝食は軽めでも割と持つことが多いです。朝5時スタートのホノルル・マラソンではおにぎり1個だけでも大丈夫だったとの声も聞きます。まだ胃が目覚めていない状態なのに無理やり押し込むようなことをしては、消化不良になってしまいかねないので気を付けてください。昼の11時や12時ごろスタートの場合は、朝食を食べたきりで走ると途中で空腹となり血糖値も下がってきます。スタート前にゼリー飲料やバナナなど胃を通過するスピードの速いものを食べておくようにしましょう。

レース途中でトイレに行かずに済む、いい方法はないですか?

なかなか決め手となる対策はないものですが、私の場合は前日から水分を摂取するのを控えめにするようにしています。やや乾いた状態で走り出して、レース中に早めの給水で補っていくという考え方です。このほかスタート会場までの移動や会場に着いてからも極力歩くようにしています。運動することによって排尿が促されるので、スタート前のトイレで体内の水分をしっかり出しておきます。

ウオーミングアップはしっかりやるべきですか?

しっかり走る必要はないですが、関節をほぐすための体操・ストレッチ、筋肉を温めるためのジョギング・ウオーキング、筋肉を目覚めさせるためのエクササイズは一通り済ませておきたいものです。こうしてスタート前に一度上昇させた体温はそのまま維持するようにしてください。せっかく温めたのに体温が低下してしまうと、集中力が落ちて高いパフォーマンスを発揮できません。スタート整列時に100円ショップなどで売っている雨がっぱを羽織って、走り出して十分温まったらエイドのゴミ箱に捨てるなどの方法がいいでしょう。このほか冷え防止には、ローションやワセリンを露出した腕や脚、おなかなどに塗ってコーティングするといった対策も有効だと思います。

レース直前期のアドバイスとしては、連載の「レース目前、マラソンで勝負強い人の5つの傾向」(2013/11/14公開)、「本番前2週間、フルマラソンで力を出し切る調整法」(2013/10/24)も参考にしてください。

<クールダウン>「10月10日」のレガシー
 私が指導を担当しているクラブが、このほど文部科学省から「生涯スポーツ優良団体」の表彰を授かりました。クラブ設立以来13年、地域でのスポーツ振興活動が評価されたものです。
 その表彰式があったのが10月10日。晴れの特異日であることから1964年の東京五輪の開会式が行われた日で、その後は「体育の日」として、2000年に現在の10月第2月曜日に変わるまで長く引き継がれてきました。
 「6年後、2020年の東京五輪に向けて、人・物・文化、どんなレガシーを残せるか、皆さんで力を合わせていきましょう」。表彰式での下村博文大臣の言葉を聞きつつ、50年の節目である日に、日にちに込められた意味を改めてかみしめ、スポーツ活動に携わる者の一人として気持ちを新たにしました。

さいとう・たろう 1974年生まれ。国学院久我山高―早大。リクルートRCコーチ時代にシドニー五輪代表選手を指導。2002年からNPO法人ニッポンランナーズ(千葉県佐倉市)ヘッドコーチ。走り方、歩き方、ストレッチ法など体の動きのツボを押さえたうえでの指導に定評がある。300人を超える会員を指導するかたわら、国際サッカー連盟(FIFA)ランニングインストラクターとして、各国のレフェリーにも走り方を講習している。「骨盤、肩甲骨、姿勢」の3要素を重視しており、その頭の文字をとった「こけし走り」を提唱。著書に「こけし走り」(池田書店)、「42.195キロ トレーニング編」(フリースペース)など。

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