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グーグルやアップル 「使命感」が違い生み出す

林 信行(ITジャーナリスト/コンサルタント)

検索サービスから地図の提供、スマートフォン(スマホ)用の基本ソフト(OS)、自動運転車など多種多様な事業を手がける米グーグルだが、この会社をひとつにまとめているのは創業以来のミッションステートメント、つまり同社の「使命」を唱った文章だ。

「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」というのが、それだ。一見バラバラに見える各種事業を進めるか否かも、このミッションステートメントが基準になる。

アップルのCM「Think different.」

はやし・のぶゆき 最新の技術が生活や文化に与える影響を23年にわたり取材。マイクロソフトやグーグルのサイトで連載を執筆したほか、海外メディアに日本の技術文化を紹介している。東京都出身。

米アップルにはこうした宣言文はないが、故スティーブ・ジョブズ氏が同社に戻った後、1997年に作られた「Think different.」というCMの詩は、これにかなり近い。枠にとらわれず情熱を持って挑戦を続けたクレイジーな人々が、世界を変え「人間を前進させた」とうたう同CMだが、実はこれにはテレビで流れたものとは別の長いバージョンがあり、そちらでは「我々はこうした人々のための道具をつくる」とアップルの使命を掲げている。

英国の作家サイモン・シネックは、以前TEDxというイベントで「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」というテーマで講演をした。アップルのような違いを生み出す会社は、どこが他と違うのかを分析したものだ。

多くの企業は次は何をつくるか、どうやってそれまでの製品や競合との違いを打ち出すか、を出発点に考える。違いを生み出す会社はそうではない。会社の核をなす価値、つまり「なぜ、我々の会社はこの世にあるのか?」から考え始めるというのだ。アップルであれば「我々は世界の人々を前進させる」と考え、どうやったらその価値に寄り添いながら良い製品ができるかを考える。

目的、人、プロジェクト、プロセスの順に大事

最近、米国ではこうした考え方が改めて注目を集め、起業家向けの雑誌などでも再び取り上げられている。今、少しずつ生まれ変わろうとしているグーグルで、かなり重要な役割を担うグーグル・クリエーティブ・ラボのエグゼクティブ・クリエイティブディレクターを務めるロバート・ワンは「4つのP」、つまり目的、人、プロジェクト、プロセスが、この順番で大事だと語っている。

使命などの形で、しっかりと目標を提示すれば、そこに共鳴する「人」が自然と集まってきて、その後もうまく続く。同じようなことは、80年代のジョブズ氏も言っている。使命や目的を掲げることは、そうした人々をその場に引き留めさせる上でも重要な要素だ。

アップルやグーグルの周辺には、自分なりの使命を持った人が大勢集まっている。彼らがこうした企業に踏みとどまるのは、これらの企業が個々人の「使命」で動くことの重要さを理解し、容認してくれているからであり、会社の規模の大きさゆえに、その「使命」をより大きな規模で果たせるという計算があるからだ。

実際、グーグルの日本のオフィスでは、今でも大勢の人々が東日本大震災で被災した地域の支援活動に力を注いでいる。いわゆる企業の社会的責任(CSR)の一環としてやるのではなく、社員が自分がやりたいから現地に足しげく通い、解決すべき課題を発見し、場合によってはその解決策を開発したり、事業化したりしている。まさにシネックがいう「なぜ?」からスタートする開発なのだ。

[日経産業新聞2014年11月18日付]

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