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ジバニャン?知らないではダメ「妖怪ウォッチ」講座

日経BPヒット総研 品田英雄

 エンタテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を切るコラム「ヒットのひみつ」。今を象徴するキーワードから、話題の理由、面白いワケなど、「ひみつ」を明らかにします。今回のヒットワードは「妖怪ウォッチ」。2014年に大ヒットした同作、今だ見たことがないという人に向けて基本のキを紹介しましょう。
中央の少年がケータ。周囲を囲むのが妖怪たち

2014年のヒット商品が発表される季節になり『妖怪ウォッチ』の注目度が上がっている。日経トレンディの2014年ヒット商品ランキングでは、史上3位の興行収入を上げた映画『アナと雪の女王』に次ぐ第2位となり、今後発表されるヒット商品番付や流行語大賞でも上位に入ってくることが予想される。

ニュースも目白押し。『妖怪ウォッチ』の玩具を手掛けるバンダイナムコは中間期の決算発表で、年内に1枚90~100円の妖怪メダルを1億5000万枚、1個3200円の妖怪ウォッチを250万個と、それぞれ販売予想を大幅に上方修正した。妖怪ウォッチ関連の商品だけで400億円の売り上げを見込むことになる。年末に映画を公開する東宝では、前売券の売り上げがすでに77万枚を突破し同社の記録を塗り変えた(11月13日現在)。

子どもの間の流行と思われていた『妖怪ウォッチ』だが、ここまで市場規模が大きくなり、関連企業の株価が上昇するなど波及効果が大きいとなると、大人も知らないでは済まされなくなってきた。

まずどんな話なのか。

もともと、『妖怪ウォッチ』は2013年7月にレベルファイブというゲーム会社から発売されたニンテンドー3DS用のゲームソフト。それが2014年に入ってテレビアニメ化されると一気にブレークした。

主人公は普通の小学生のケータ。彼はある日、妖怪執事と出会い、妖怪が見える腕時計「妖怪ウォッチ」を手に入れる。私たちの周りには無数の妖怪が存在し、彼らが事件や事故から、失敗や面倒くさいことまで、ありとあらゆることを引き起こしているようなのだ。ケータは時計を着けることでそうした妖怪が見えるようになる。

それが、妖怪たちと戦って勝利すると、妖怪は友達になりメダルを渡してくれる。そして、メダルを腕時計に入れるといつでも妖怪を呼び出せ仲間として戦ってくれるのだ。こうして身の回りに起こる様々な問題を、妖怪たちと協力しながら解決していく物語だ。

ここまでブームとなった理由を考えると、次のように整理できる。

キーワード1「共感」:レベルファイブの綿密なマーケティング

レベルファイブは福岡市に本社を置くゲームソフト会社。これまでにも「レイトン教授」シリーズや「イナズマイレブン」シリーズなどのヒット作を生み出してきた。今回は"子どもたちの共感"を最重要項目に設定し、アンケートや聞き取りをして現代の子どもが抱える悩みや特有のあるあるネタを取り込んでいくことにした。

左から、ジバニャン、妖怪執事のウィスパー、ケータ。『妖怪ウォッチ』はテレビ東京系にて、毎週金曜日18時半から放送中

その結果、主人公はドラえもんののび太くんのように何をやってもダメな子ではなく、極めて平均的な子にしている。話題は学校でトイレの大に入れない、忘れ物をお母さんが学校まで届けるのは恥ずかしい、など子どもたちのあるある話を取り上げている。

同時に、親が見ても懐かしく思う70~80年代の話題がパロディーとして取り上げられている。例えば「太陽にほえろ!」から「太陽にほえるズラ」、「人面魚」ならぬ「人面犬」。巨人の星やキャンディーズ、ピンク・レディー、北斗の拳などを元ネタにすることもある。

こうした調査に基づいたこだわりと遊び心が共感できるストーリーを生んだ。

キーワード2「収集」:無数のキャラクターとメダル
「DX妖怪ウォッチタイプ零式」とメダル

これまで妖怪というとおどろおどろしい容姿をしているのが普通だった。だが、妖怪ウォッチに出てくる妖怪たちはどれも可愛らしく親しみやすい。また、ネーミングもおもしろい。

一番人気は「ジバニャン」でクルマにハネられ死んでしまったネコが地縛霊になってしまったものだ。妖怪ぬりかべをパロディーにしたのが「妖怪ムリカベ」。取りつかれるとなんでも「ムーリー!」と拒否する(これを子どもたちは親や先生に連発している)。ほととぎすならぬ「とほほぎす」は、取りつかれると「とほほ」と言いたくなるような失敗を連発し、「ひも爺(じい)」は人のお腹をすかせる力を持っている。

ユニークで可愛らしい妖怪が次々と登場し、その数は数百にのぼり、さらに増えている。それがすべてメダルとなっているのだから集めたくもなる。中にはめったに手に入らない「レアメダル」もあって、収集欲をさらに刺激する仕組みだ。

キーワード3「参加」:バーチャルの物語をリアルな展開に

アニメやゲームは本来、テレビやゲーム機の中の触れることができない楽しみだ。それが、自分の体を思いっきり使って楽しめるようにいろいろと工夫されている。

まず、ケータと同じように腕時計を着けることができる。同じように腕時計で妖怪を呼び出せる(気分になれる)。また、キャラクターのメダルを集めることは、メンコや切手集めと同様に昔から存在するアナログの楽しみ方だ。

「ゲラゲラポー」で始まる「ゲラゲラポーのうた」はテレビアニメ『妖怪ウォッチ』のオープニング曲。CDには「ようかい体操第一」を収録する
エプソン品川アクアスタジアムの「ゲラゲラポーな水族館」

一方、テレビのエンディングでは「ようかい体操」(現在は「ダン・ダン・ドゥビ・ズバー!」)が流れ、子どもたちに一緒に踊ろうと誘っている。実際、子どもたちには大人気で、体操を覚え踊る子どもたちが続出した。この秋の小学校の運動会でも数多く演じられたし、体操の様子をビデオに収め動画投稿サイトにアップする人たちも山のように登場している。バーチャルな世界を飛び出して、リアルな世界と融合したのだ。

マクドナルドは妖怪ウォッチカレンダーを発売、東京・品川のエプソン品川アクアスタジアムでは「ゲラゲラポーな水族館」を展開中。11月28日からは池袋のナンジャタウンに妖怪ウォッチを題材にした新アトラクションが登場するなど、企業の利用も増えている。2015年に向けて、妖怪ウォッチの盛り上がりはまだまだ続きそうだ。

品田英雄(しなだ・ひでお)
日経BPヒット総合研究所 上席研究員。日経エンタテインメント!編集委員。学習院大学卒業後、ラジオ関東(現ラジオ日本)入社、音楽番組を担当する。87年日経BP社に入社。記者としてエンタテインメント産業を担当する。97年に「日経エンタテインメント!」を創刊、編集長に就任する。発行人を経て編集委員。著書に「ヒットを読む」(日経文庫)がある。
[参考] 日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

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