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最多勝、新人王…かつて輝いた男たちのトライアウト

編集委員 鉄村和之

輝きをもう一度――。プロ野球で戦力外通告を受けた選手が再起をかける「12球団合同トライアウト」が9日、静岡・草薙球場で行われ、投手34人と野手25人の計59人が参加した。20代前半の若手選手の中に混じって、かつての最多勝や新人王、巨人の開幕投手を務めた選手の姿も。実績のある彼らがプライドをかなぐり捨てて挑んだ"敗者復活戦"の様子を追った。

トライアウトの前にリラックスした表情で話す藤井

セ・リーグ、01年最多勝の藤井

生き残りへ、懸命のアピールをしようとする選手たちの気持ちが天に通じたのだろうか。朝からの雨で、一時は室内練習場で行うことが発表されたが、次第に天候が回復。当初予定より30分遅れで、本球場でトライアウトは実施された。

「これがプロとして最後になるかもしれないのに、室内だとちょっと寂しかったが、外でやれることになってよかった」

本番前のウオーミングアップで、リラックスした表情で語ったのが藤井秀悟だった。ヤクルト時代の2001年に14勝8敗をマークしてセ・リーグの最多勝に輝いた左腕。08年に日本ハムに移籍した後、巨人、DeNAと渡り歩き通算83勝(81敗)を挙げている。昨年はDeNAで11年ぶりの完投勝利を挙げるなど6勝5敗の成績を残したが、37歳となった今季は1軍登板ゼロ。10月3日に球団から戦力外通告を受けた。

「今シーズンは悔しい思いでいっぱいだった。まだまだやれる、勝負できると思っている。トライアウトというチャンスがあるなら受けようと思った」

自宅近くで壁当てをすることも

1回目のトライアウトはいまひとつの内容だった藤井

横須賀市にあるDeNAのグラウンドで仲間を見つけてトレーニングに励んだほか、誰も練習パートナーが見つからないときは、まるで小学生のように自宅近くで1人で壁当てをすることもあったという。「投手なので肩さえ動かしておけばいいから。1日、1日を無駄にしないように」

満を持して臨んだトライアウトだったが、結果は四球、二ゴロ、四球、二ゴロといまひとつ(カウント1-1からのスタートという特別ルールで実施)。「こういう場だし、打者も打ちたかっただろうが、四球という結果は申し訳ない。満足はしていないが、(準備はしてきたので)やりきったかな。(昨夏に左肘を痛め)藤井はもう投げられないんじゃないかとも見られていたが、ちゃんと投げられるということは見せられたと思う」と淡々と振り返った。

「1回目にすべてをかけてきたから、2回目は受けるつもりはなかった」というが、このほど自身のブログで「決めた。2回目のトライアウトを受ける」と宣言。その中で「がむしゃらに、しがみついて頑張りたい。次がラストチャンスだ。このままじゃ終われない」などとつづり、20日に川崎市のジャイアンツ球場で行われる2回目のトライアウトで、崖っぷちに追い込まれたベテランの最後の意地をみせるつもりだ。

東野が投げた直球の最速は145キロをマークした

11年の巨人開幕投手・東野

11年に巨人の開幕投手を務めた東野峻もトライアウトを受けた1人。13年にオリックスに期待されて移籍したものの1勝3敗と結果を残せず、今季は1軍にまったく呼ばれずに2軍でも3勝4敗、防御率8.20と打ち込まれた。

10月28日にオリックスから戦力外通告を受けた後、トライアウトを受けるかどうかはかなり悩んだという。「まだまだやれるという気持ちはあったが、自分のわがままで家族を路頭に迷わすわけにはいかない」

そんな苦悩する東野の背中を押して、トライアウトを受ける決断をさせたのが公私ともに兄のように慕う巨人の内海哲也だった。戦力外通告を受けて電話を入れると、「絶対にやめるな。まだまだやれる。まだ若い」と28歳にしてユニホームを脱ぐことを強く止められた。

妻も「あなたの好きなようにすればいい」と理解を示し、4歳の長男は「パパの野球が見たい」と自宅のある神戸から静岡までトライアウトの応援に駆けつけた。

直球の最速、145キロを記録

そうした中での投球は三振、三振、死球、四球。「最初はよかったが最後がもったいなかった。死球は内角を攻めにいってのことで仕方のない面もあるが、最後の四球は非常によろしくないな、と反省している」と悔しそうな表情を浮かべた。

それでも直球の最速は145キロをマーク。「自分は球種が少ないから、まっすぐが行っていないと、どの球団の編成の人も『きついな』と感じると思うので、きょうはまっすぐに一番こだわりを持って投げた。投げっぷりについては、自分でもよくできたかなと思う」と振り返った。

06年のパ・リーグ新人王・八木

創価大から希望枠で日本ハムに入団し、06年に12勝8敗でパ・リーグの新人王に輝いた八木智哉もトライアウトに挑んだ。結果は三振、投ゴロ、遊ゴロ、遊飛と打者4人を完璧に抑えた。

八木は「やりきったという思いはある」と振り返った

「よかったと思う。(マウンドで)変に緊張してしまうかもと思ったが、よい緊張感を保って、今までの試合と同じような感覚で投げられた。点数はつけられないが、やるべきことはやった」と満足そうに振り返った。

強気の投球で鳴らした左腕も、13年にオリックスに移籍してから2年間で勝ち星なし。31歳となった今年はわずか3試合の登板で、0勝0敗、防御率7.36と振るわなかった。

しっかり気持ち込め投げられた

悔しさをぶつけるようにして投げたトライアウトでは「スライダーと直球がよかった。左打者にも、右打者にもいい高さに投げられた。しっかり気持ちを込めて投げられたし、やりきったという思いはある」。

あとは「オファーを待つだけ」と話していた左腕は、落合博満ゼネラルマネジャー(GM)が視察した中日が獲得の方向だ。東野もDeNAが興味を示しているといわれる。

まだ不完全燃焼、プロの世界でやり残したことがある――。あきらめらきれない選手たちが、それぞれの思いを込めて臨んだトライアウト。崖っぷちからはい上がり、もう一花咲かせられるだろうか。

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