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列車運行しながらトンネル解体 東西線で世界初の工事

東西線を大改良(下)

ケンプラッツ
その名の通り、東京を東西に貫き、23区東部や千葉県北西部から東京都心への大動脈となっている東京地下鉄(東京メトロ)東西線。大手町など都心部に短時間で直結する利便性の高さから、葛西や浦安など地上区間の各駅を中心に宅地開発が急速に進み、鉄道の混雑率ワーストクラスの常連となっている。この東西線で、混雑緩和と遅延防止に向けた大改良工事が進められている。前回の南砂町駅の工事に続けて、今回は木場駅の工事を取り上げる。

全国ワーストクラスの混雑緩和とラッシュ時の遅延解消に向けて、大改良工事が進む東西線。木場駅では、列車を運行しながら既存のシールドトンネルを解体し、上部に新たな空間を生み出してコンコースを新設する「世界初の工事」(東京メトロ)が行われる。

木場駅は1967年の大手町─東陽町間延伸に合わせて開業した、旧・営団地下鉄で初のシールド工法によって造られた駅だ。永代通りの真下に位置し、深さは約22.4mと、東西線の中で最も深い。

同駅は単線の円形シールドトンネル2本の中にそれぞれホームがあり、両端に地上とを結ぶ階段・エスカレーターやコンコースを設けた構造となっている。このため、両端の階段付近でしか両方面のホーム間の行き来ができないのがネックだ。

[左]木場駅は2本のシールドトンネルを並べた形で、中野方面と西船橋方面のホームは両端の階段部分でしかつながっていない(写真:小佐野カゲトシ、以下同じ) [右]木場駅の西口(舟木橋方面)改札に通じる4b出口。2カ所ある改札のうち、特に西側の利用者が増えている

近年、乗降客数が増加しており、特に西口(舟木橋方面改札)は商業施設のオープンなどで利用者が増えている。しかし、出入口がホーム両端にしかなくホームの幅も片側3mと狭いことから、ラッシュ時の混雑緩和が課題となっていた。

[左]木場駅の舟木橋方面改札。昼間でも人が通らない瞬間はあまりない [右]舟木橋方面改札からエスカレーターを降りると、中野方面行き電車の先頭付近に出る。ホームの構造上、どうしても両端に乗客が集中しやすい

そこで、西口側の約70mで既存のシールドトンネルを解体し、両ホーム間を隔てている部分を撤去してホームを拡幅。トンネル上に新たなコンコースを設けてエスカレーターとエレベーターを増やし、利用者の流れを分散させて混雑緩和を図ることになった。列車を運行しながら既設のシールドトンネルを解体し、地上から掘削して新たな空間を生み出す工事は世界初の事例だ。

中野寄りの約70mでシールドトンネルを解体し、ホーム幅を広げるとともに新たなコンコースをトンネル上に設ける(資料:東京メトロ)

中からは見えないトンネル解体

工事は南砂町駅と同様、まず既存のトンネルの外側に地下連続壁を構築。既存のトンネルの下も含め、地盤の改良を行った上で周囲の掘削を進めていく。地下連続壁は永代通りのほぼ両側に設ける形となるが、道路交通への影響を防ぐため、片側ずつ施工する計画だという。

既存のトンネルの両側に地下連続壁ができ、掘削が始まると、いよいよシールドトンネルの解体に向けた準備が始まる。シールドトンネルはセグメントと呼ばれる部品を組み立てて壁面を造っているため、セグメントを撤去する前に防護のための仮の壁を内側に設置。トンネルの周囲を掘削したのち、防護壁の外側にあるセグメントを取り外していく。

このため、セグメントを取り外す過程を利用者が見ることはできないが、防護壁が造られる段階で工事の進み具合をうかがい知ることはできる。

既存のシールドトンネルの外側に地下連続壁を設けて掘削を進め、シールドトンネルを解体する(東京メトロの資料を基に小佐野カゲトシが作成)

セグメントの撤去が終わり、防護の壁が取り外されると、いよいよ広くなった地下空間が利用者の目に触れることになる。シールドトンネルが解体されると、現在は中野方面と西船橋方面に分かれているホームがつながり、幅は3mから12mに拡大。既存の西口側エスカレーターはホームから改札階まで上る際に1回乗り換える必要があるが、新たに改札階まで直通のエスカレーターもホーム中央寄りに2カ所設けられる。

[左]約70mにわたってシールドトンネルを解体するホームの中野寄り。トンネル壁面に見えるセグメントを撤去する際には、内側に防護壁が造られる [右]現在は改札とホームを行き来するためにエスカレーターを乗り継ぐ必要があるが、新たに設けられるエスカレーターは改札階とホームを直結する
木場駅の上を通る永代通り。2014年10月末時点では、写真左側周辺で工事に向けた準備を行っている

木場駅の工事は、施工者は鹿島・鉄建・銭高組JV(共同企業体)に決まっているが、まだ駅本体の工事には着手していない。2014年10月末時点では、工事の際に支障となる水道管や下水道などのライフライン移設を行っている段階という。同駅は2019年度の供用開始を予定しており、工事の総額は約200億円となっている。

2020年代には混雑緩和なるか

改良工事は他の3駅でも進んでいる。茅場町駅は日比谷線との乗り換えがスムーズになるよう、ホームを西船橋寄りに約40m延伸し、日比谷線の中目黒方面ホームへ通じる階段・エスカレーターを新設。中野方面行きの電車は停車位置をずらし、ホーム上の混雑緩和を図る。完成は2018年度の予定だ。

このほか、門前仲町駅のホーム拡幅は2013年に完成し、東陽町駅の改良も2015年度の完成に向けて工事が進んでいる。

茅場町駅ホームの西船橋寄りにある、日比谷線中目黒方面ホームへ通じる階段。この奥にホームを約40m延伸する

南砂町駅の改良工事が完成する2020年度を目標に進む、東西線の大改良計画。東京五輪開催決定よりも以前から決まっていたプロジェクトだけに「五輪とは特に関係ない」(東京メトロの担当者)という。しかし、工事が予定通りに進めば、ちょうど五輪開催の年度に東西線は新たな時代を迎えることになる。

東西線の混雑緩和には、東京都江東区が整備計画を推進している地下鉄新線(東京8号線延伸)もかかわってくる。新線は東京メトロ有楽町線豊洲駅と半蔵門線の住吉駅を結び、整備効果の一つに東西線の混雑緩和を挙げている。

試算によると、東西線木場─門前仲町間の混雑率は2025年の予測値で200%だが、新路線が開業すれば180%にまで下がるという。同区は2015年の整備着手を目指して国や都と調整を進めているという。

今後も、当面は混雑率ワーストクラスをキープしつづけそうな東西線。改良工事などの対策が成果を挙げ、少しでもラッシュ時の混雑や遅れが緩和されることが沿線利用者の願いだろう。

(RailPlanet 小佐野カゲトシ)

[ケンプラッツ2014年10月31日付記事を基に再構成]

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