2019年8月21日(水)

消費者置き去りの「モノのネット」開発競争
フィル・キーズ(米ブルーフィールドストラテジーズ アナリスト)

2014/11/16 7:00
保存
共有
印刷
その他

シリコンバレーでは「モノのインターネット(IoT)」という流行言葉(バズワード)がいまだ隆盛だ。先日、IoTをテーマにしたパネルディスカッションを聴講したところ、パネリストのひとりがこう発言した。「IoTには人間が不足している」。この発言を聞いた私は得心した。

■多くのIoT製品、技術的な側面を強調しすぎ

「ネスト」はAIが利用者の生活パターンを把握して室内の温度を適温に

「ネスト」はAIが利用者の生活パターンを把握して室内の温度を適温に

「IoT」という言葉の定義は曖昧だ。近いのは「汎用コンピューターではない機器をインターネットに接続させる」ということだろう。幅広いIoTには、消費者の身の回りで利用されている機器、例えば米フィットビットの腕時計型端末などから、米グーグル傘下のネスト・ラボが開発したネット接続する家庭用サーモスタットが代表する「スマートホーム」関連の製品まで含まれる。上記の発言をした、米アーガス・インサイツのジョン・フェランド創業者兼最高経営責任者(CEO)が指摘しているのは、この分野についてだ。

フェランド氏はアーガス社を設立する前、いくつかのIT企業での勤務や、スタンフォード大学のデザイン学部教授の経験がある。同氏は現在市場で流通しているIoT関連製品を見ると、多くの製品が対応する無線規格や内蔵センサーの性能など、技術的側面を強調しすぎている、と指摘する。さらにメーカーは自社製品が使われる状況のみに専念しており、複数のメーカーの製品が同時に利用されるであろう消費者が希望する利用環境を無視しているという。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

この状態では、IoT関連機器のメーカーは消費者を満足させられない。米市場調査会社パークス・アソシエイツが発表した「米国のインターネットが利用可能な家庭の62%は、スマートホーム関連の製品についてなにも知らない」との調査結果も、この主張を裏付ける。フェランド氏は言う。「市場はまだ『Rio MP3プレーヤー』のステージだ」。Rio MP3プレーヤーは、ユーザー体験が優れていることから爆発的に普及した、米アップルの携帯音楽プレーヤー「iPod」の登場以前の製品だ。

フェランド氏が設立したアーガス社は、消費者が交流サイト(SNS)などソーシャルメディアに投稿した製品評価などを分析して、製品が市場に受け入れられるかどうかを予測する技術を持っている。

■通信手段を無線LANに頼ると弱みに

消費者向け製品が市場で成功するかどうかを決める要素のひとつは、製品のセットアップが簡単にできるかどうかだ。「セットアップができないという理由で、最も多く店に返却される製品は、無線LANルーターだ」(フェランド氏)。フェランド氏は、アーガス社の技術でAV(音響・映像)機器のセットアップに関わるソーシャルメディアへの投稿を分析して、スマートホーム関連製品に適用してみた。

この分析によると、ネスト・ラボのサーモスタットや煙検知器は、通信手段を無線LANに頼っていることが弱みになるという。「消費者はこうした製品を、必ず住宅内の無線LANに接続可能な場所に置かないので、重要なソフトウエア更新情報が届かない」(フェランド氏)からだ。逆に、ネストが買収した家庭向け無線動画モニターカメラを手がけるドロップカムが、設置と操作が簡単なことを強調していることが、市場での成功につながっているという。結局、使うのは人間なのだ。人間という要素を無視しては、市場での成功はおぼつかない。

[日経産業新聞2014年11月11日付]

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。