2018年11月16日(金)

社会を良くしたい 「世直し」投資、じわり広がる

2014/11/15 7:00
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「社会的インパクト投資」という言葉を知っていますか――。雇用創出や環境保護といった社会的課題の解決につながる事業への投資を指す。欧米を中心に広がり、市場規模は世界で年間4兆円。日本でも社会貢献への関心の高い富裕層や若者が注目し始めた。

「日本は公害などの社会問題を各国に先駆けて解決してきた。日本でインパクト投資の新たな手法が出てくれば、世界に与える影響は小さくない」。慶応義塾大学で9月開かれた「G8インパクト投資タスクフォースシンポジウム」。元東大総長の小宮山宏・三菱総合研究所理事長はこう訴えた。

インパクト投資では、お金の出し手は貧困や教育、福祉といった分野の社会課題解決という「社会的インパクト」に重きを置く。配当金も期待するが最優先ではない。純粋な投資と慈善目的の寄付との間を行く「第三の道」だ。

キャメロン首相がインパクト投資の旗振り役を務める英国。ある自治体が元受刑者の再犯率を減らすプログラムに、インパクト投資の考え方を導入した。再犯防止教育を民間事業者に任せ、事業費は債券発行でまかなう。再犯率の低下で浮いた予算が投資家への配当の原資だ。ただ、目標に達しない場合、配当はなし。「行政は低リスクで実験的なプログラムに取り組める」(インパクト投資に詳しい慶大大学院の伊藤健特任助教)

日本でも「社会的起業家」と呼ばれる層が厚みを増すのにあわせ、インパクト投資を担う投資家もじわりと増えている。草分け的な存在が、ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京、東京・千代田)。「パートナー」と呼ぶ約110人の個人投資家が1人年間10万円を出資。それを元手に社会的意義の大きい事業を手がけるベンチャーやNPO法人など30の会社・団体に資金を投じてきた。パートナーには若手の弁護士や公認会計士が名を連ね、投資先に手弁当で経営ノウハウも伝授する。

営利企業が敬遠した病児保育の収益事業化に成功したNPO法人、フローレンス(東京・千代田)は、SVP東京の初期の投資先だ。「自分たちのお金とスキルを総動員し、社会課題の解決につなげていく手応えが醍醐味」(岡本拓也SVP東京代表理事)。株式会社への投資では配当や株式の売却益にも目配りする。それを再び新たな社会的企業に投資することで、資金の好循環を目指している。

世界では年間4兆円に達するインパクト投資だが、日本では累計でわずか約250億円。上場企業への投資を決める際に環境対策など社会貢献しているかどうかをみる「社会責任投資」にまで視野を広げれば市場規模は世界で約1500兆円に達する。主にベンチャー企業やNPO法人などを対象とするインパクト投資の成長性も大きい。

慶大のシンポジウムには、インパクト投資に商機を見いだす金融機関関係者の姿が目立った。ある自治体は外国の事例を参考に、若者の就労支援事業を投資家から集めた資金で取り組もうとしている。金融各社はこうした取り組みを支える新たな債券型商品の開発を検討しているもようだ。

高齢化や所得格差など社会的な課題が山積するニッポン。財政が逼迫する中、長引く低金利で運用先を探しあぐねる個人金融資産を「世直し」投資に取り込めるか。官民を問わず、関係者の知恵が試される。(映像報道部 杉本晶子)

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