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小6までに2000冊読破 読書はゲーム時間と同じだけ

アーティスト・岸谷香さん

NIKKEI STYLE

日経DUAL

息子にとってのケータイは、昔の私にとっての「オールナイトニッポン」

突然ですが、うちの息子(中1)が持っているケータイは、本人の希望でガラケーです。が、最近、スマートフォン(スマホ)が欲しくなったみたいで「買って」とよく言われます。でも、「えー、自分がガラケーでいいって言ったんじゃーん」と、知らん顔の私。なので、彼は時々、調べものしたいときに私のスマホを借りにきます。映画の時間とかパパッと調べて、出かけて行く。この子たちの生活にはもうスマホが当たり前のようにあるんだなぁと感じる瞬間。

子育てで気になるのは、ケータイやゲーム機の使い方ですよね。息子は夏休み中、ずーっとケータイをいじってました。夜、「おやすみ」って言った後も、まだやってた…。「もぅ~」と思うけれど、思えば私も、中学生のころは深夜、ラジオで「オールナイトニッポン」をずっと聞いていたわけで。時代が変わって、ラジオがケータイになっただけかもしれないなと。

でも、ラジオは時間が来たら放送終了だけれど、ケータイには終わりがなく、延々とやっていられるという違いがある。親として、どう使わせたらいいのか悩みどころです。

ゲームもしかり。うちの息子には、「ニンテンドーDS」を幼稚園の年長のころから持たせていました。私としては、ゲーム自体は持っていても悪いわけじゃないと思う。今の時代、それが友達とのコミュニケーションツールの一つにもなるわけで、それをきっかけに初めて会った子とも話せたりもしていました。要は使い方。親である私が子どもとゲームのつきあい方をどう管理するか、だなと思うのです。

それで、私は息子と約束しました。

 「DS、好きなだけやってもいいよ。でも、DSやったのと同じ時間だけ、本を読もうね」

ゲームをした時間と同じ時間、本を読んでいた息子

同じ時間だけ本を読みさえすれば、ゲームをいくらでもやってもいいとわかった息子は、案の定、ゲームを延べ12時間とかやっちゃうんです。いくらなんでもやりすぎ、と思うけれど、だまって見ているとゲームをした時間分、ちゃんと本を読んでました。DSを12時間やったら、『走れメロス』とか好きな本を12時間かけて読む、みたいな。

彼は本が好きなので、私との約束は実は「ラッキー!」というくらいのものだったのかもしれません。

彼は幼稚園のときから、「これ読んで」といつも本を持ってきていたし、最初に買ってあげた絵本『もりのへなそうる』(わたなべしげお/福音館書店)も、年少のときに自分から「おかあさん、買ってほしい絵本があるんだ」と、自分で言ってきたものでした。幼稚園で読み聞かせしてもらって気に入ったんでしょうね。それから、中川李枝子さんの本や日本の歴史全集、世界子ども文学まで、とにかく本だけはたくさん買いました。

 中学生になっていきなり「本を読みなさい」と言ったところで、読む習慣がなければきっと読まないし、読めないだろうから、親のコンロトールが効くうちに本に触れさせて、本の楽しさを知ってほしいなとも思っていました。

中学受験で息子のアピールポイントを考えていたとき、ふと、これまでに彼が読んだ本を数えてみたところ、2000冊はゆうに超えていました。大人の私よりずっと読んできたわけです。

「ゲームをやった分だけ本を読む」という約束は、もう今では「そんな約束したっけ」な感じで、DSやらケータイゲームやらよくやっているけれど、息子は今でも本をよく読む。とにかく本好きで、中学に入学するとき、いろんな方からいただくお祝いも「全部図書券にして」と言っていたくらい。

その図書券で江戸川乱歩シリーズをそろえていました。最近は、『進撃の巨人』とか漫画もよく読んでいるけれど、相変わらず、はやみねかおるさんの本が大好きで、しょっちゅう読み返しているみたい。一度私が好きな遠藤周作の『海と毒薬』を薦めてみたら、割と読んでいました。

思春期に入ったら「手」ではなく、「目」をかける

私の小学校時代の恩師の伊藤先生が言っていました。

子どもはね、思春期に入ったら『手』をかけるんじゃなくて、『目』をかけなさい。目をかけていれば、必ず夢中になることを一つ、見つけるから」

彼が夢中になれることの一つは、読書には違いないけれど、「これ!」というものが果たして本なのか、ゲームなのか、それとも別の何かがあるのか……「目」を(光らせながら)かけていきたいと思います。

岸谷 香
ミュージシャン。1967年東京生まれ。83年にオーディションをきっかけにバンドを結成。86年に「プリンセス プリンセス」のボーカルとしてデビュー。シングル「Diamonds」をはじめ、多くのミリオンヒット曲を手がけ、89年には女性バンドとして初の日本武道館公演も行う。96年にバンド解散後、俳優の岸谷五朗氏と結婚。2001年に第1子出産を機にアーティスト名を本名に改名し、育児中心の生活を送る。2012年に東日本大震災復興支援のため、プリンセス プリンセスを再結成。2008年から年1回のペースで続けてきた「準備体操ライブ~さびないようにね!」も2013年にファイナルを迎え、2014年5月21日には新録曲4曲を含むアルバム「The Best and More」を発売。6月14日(土)からは「2014 LIVE TOUR 47th SHOUT!"いくわよー!!"」ツアーを実施。「ハッピーマン」も収録したベストアルバム「The Best and More」、シングル「Romantic Warriors」も聞いてみてね。

(ライター 松田亜子、撮影 白井裕介)

[日経DUAL 2014年11月4日付記事を基に再構成]

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