おしゃれな「吹き抜け空間」は省エネの敵
冬に備える家づくり(5)

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2014/11/20 7:00
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日経アーキテクチュア
 デザイン重視の"エコハウスもどき"にありがちなのが、大きな吹き抜け空間だ。実は吹き抜けがあっても、そこにイメージどおりに風の流れを作るのは簡単ではない。「何よりも、冬の暖房が難しい」と、東京大学准教授の前真之氏は指摘する。前氏が上梓した書籍「エコハウスのウソ」(2012年6月発行)の記事を基に、吹き抜けの暖房が難しい理由について解説する。

(イラスト:ナカニシミエ)

(イラスト:ナカニシミエ)

階をまたがって空間をつなぐ吹き抜けは、まさに建築の「自由」「開放」を体現する。従来は玄関室のように滞在時間の短い空間に限られていたが、現在ではリビングやダイニングなどの主居室まで広く用いられている必須アイテムだ。

しかしながら、吹き抜け空間というのは温熱環境的には非常にやっかいな代物。ここでは、空気の流れをコンピューター上で再現する数値流体計算(CFD)を用いて、吹き抜け空間を検証してみよう。

■エアコンもファンヒーターもジレンマに直面

吹き抜け空間は視覚的には大変気持ちの良いものだが、いざ暖房しようとすると非常に悩ましい。最近のエコハウスでは、エアコンを主暖房としていることが少なくない。ガスや石油のように室内空気を汚染することがなく、ヒートポンプで高効率な暖房が可能になることが期待されているからだ。

ただし、エアコンには"怠け者"の空気で暖房しなければならないという限界がある。最近のエコハウスでは、吹き抜け空間に1台だけエアコンを付けていることも多い。これは、空間全体をまとめて処理することで低負荷運転を避け、効率の向上を期待しているためだが、空間の温度ムラは大きくなりがちになる。

吹き抜け空間と1階空間(通常空間)について、エアコンで暖房した場合の温度分布を比較した(図1)。なお、吹き抜けは空間が広い分だけ熱負荷が大きいので、温風の温度をより高く設定している。

図1 吹き抜けでは温度ムラが大きくなる。1階空間は3.6×3.6×高さ2.4m 、吹き抜け空間は3.6×3.6×高さ4.8m。各部屋の断熱性は等級4レベル。暖房機器の吹き出し風量は一定で実験

図1 吹き抜けでは温度ムラが大きくなる。1階空間は3.6×3.6×高さ2.4m 、吹き抜け空間は3.6×3.6×高さ4.8m。各部屋の断熱性は等級4レベル。暖房機器の吹き出し風量は一定で実験

通常の1層空間では、エアコンでも問題なく暖房ができている。これが吹き抜け空間になると、床面に暖気が届かず温度ムラが大きくなってしまうことが分かる。吹き出した空気は高温で軽いので、上方に広い空間が開けていると舞い上がってしまうのだ。

エアコンの温風を床まで届かせるためには、温風の温度を控えめにして量で稼ぐ方が有利である。しかしながら過剰な風量は不快になるため、熱負荷を処理するためには温度を上げざるを得ない。ところが、温度を上げると空気がさらに軽くなって床に届かない…。ここにジレンマがある。

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