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コスト6割減 損保ジャパン日本興亜の電子化作戦

9月1日に発足した損害保険ジャパン日本興亜が、携帯端末を使った業務マニュアルの電子化を進めている。狙いはマニュアル作成コストの低減と職場内訓練(OJT)の効率化を両立させることだ。スマートフォン(スマホ)でマニュアルを簡単に閲覧したり作成したりできるシステムを導入し、社員の自習や内容の理解を促す。合併に伴う業務の混乱を防ぐだけでなく、IT活用で年間のマニュアル作成費用を6割減らせるとみている。

新しいマニュアルはスマホで作る

「初心者も自習しやすく、教える側も準備時間を減らせる。社員の実務教育の質向上に有用だ」――。同社の藤野修事務企画部長は導入を進めている電子マニュアルシステムをこう評価する。

同社が進めているのは、保険契約の社内事務研修に使うマニュアルの電子化だ。紙で作ったり配布したりしていた既存のマニュアルを電子データに変換。新たなマニュアルは原則としてパソコンやスマートフォン(スマホ)で作る。閲覧にもパソコンやスマホを使うため、時間や場所を気にする必要がなくなる。

電子化に取り組む狙いは、マニュアルの作成や運用を効率化することだ。同社は合併に伴い、保険契約の事務手続きを旧・損保ジャパンのものに一本化した。旧・日本興亜損保の社員は、「新たな事務手続きを短時間で習得しなければならない」(事務企画部業務推進グループの横山和美主任)という。

そこで問題になるのが、紙のマニュアルの存在だった。研修用に作成するマニュアルは年間1000ページ。これを677ある全国の支店や営業店に配布する必要がある。しかも、1年に100回と頻繁に改訂が行われる。その結果、紙のマニュアルの作成や運用に関するコスト試算は年間700万円に上る。

しかも既存の研修用マニュアルは文字が主体で、受講者が内容を理解するのに何度も読み返したり、OJT担当者がつきっきりで教えたりしなければならないといった問題もあった。

こうした問題の解決策として選んだのがマニュアルの電子化だった。同社が電子マニュアル作りに使っているのはベンチャー企業のスタディスト(東京・千代田、鈴木悟史社長)が開発した「ティーチミー・ビズ」と呼ぶシステム。スマホで写真撮影と文字入力の手順を繰り返し、手軽に業務マニュアルが作成できる。

電子化を機に、作り手によってばらばらだったマニュアルの形式や作成手順を統一。マニュアルに掲載する画像は、保険事務システムの画面写真に加え、スマホで撮った写真も簡単に追加できるようになった。

例えば、従来は書類を格納したファイルキャビネットの絵柄を掲載するために、プレゼンテーションソフトのパワーポイントを使ってわざわざ絵を描いていた。新システムなら、「スマホでキャビネットの写真を撮って取り込めばすむ」(横山主任)簡単さだ。

マニュアル作成と配布の効率化で、同社は約700万円の年間コストを6割減の250万円にできるとみている。1本当たり14日間かかっていたマニュアル作成に要する期間も5日間に短縮できた。まず9月から、自賠責保険など30本のマニュアルを社内で公開した。

大量の写真は現場にも利点あり

電子マニュアルは、現場のOJT担当者や受講者にも利点が大きいとみる。スマホで撮った写真をふんだんに使うため、「契約者に書類を郵送する」という説明のくだりに送り状や封筒の写真を添えたり、「右下の受付欄に印鑑を押す」という説明に押印した部分の拡大写真を付けるといったことが簡単にできる。

横山主任は「受講者は現物を見ながら学習することで、実務をイメージしやすくなる」と話す。OJT担当者の負荷も減らせる見込みだという。スマホでいつでもマニュアルを見られるため、受講者に自習を促せるからだ。

同社は作成対象のマニュアルを、社内研修用から日々の保険実務用やシステム操作用などへと拡大する考えだ。マニュアルを作成する権限も現在は業務改革推進を担う10人ほどに限定しているが、一般の社員へと徐々に広げる方針だ。各社員が気づいた事務作業の注意点や改善点を、社員自身が電子マニュアルにできるようにする。「現場の創意工夫や改善の知恵を容易に共有できる体制を築く」(藤野部長)計画だ。

(玉置亮太)

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