2019年1月22日(火)

電極チップで視力回復へ 「人工網膜」開発最前線

(1/2ページ)
2014/11/4付
保存
共有
印刷
その他

 パソコンやスマートフォン(スマホ)の加速度的な普及で、日々激しいストレスにさらされる眼。眼に関連する病気は増え、深刻度も増す。一方で眼を守る技術も進歩、先端技術を使いこれまで不可能だった再生や治療も可能になりつつある。眼を治し、守る最前線の取り組みをリポートする。

■目の中に電極チップ

「庭の白い花が見えるようになった」「夫の姿がぼんやり見える」――。大阪府内の60代の女性は今年1月、大阪大学付属病院である手術を受けた。目の中に電極チップを埋め込み、視力を取り戻す「人工網膜」と呼ばれる最先端の臨床研究だ。

8年前に網膜色素変性という難病で視力をほとんど失ったこの女性は、医療技術の進歩によって完全ではないが光を取り戻した。

阪大はこの難病に挑む。最大のポイントはCCD(電荷結合素子)で撮影した映像データを人の脳に変換して送り込むこと。眼鏡のレンズ部分に仕込んだ小型CCDで撮影した画像データを首からぶら下げた画像処理装置に送って変換。さらにその信号を網膜の外側にある強膜部分に埋め込んだ6ミリメートル角の電極チップを通して生き残った細胞に届ける。

健常者なら水晶体が写し取った映像データを神経が網膜まで運び、これを脳に届ける。しかし、網膜の細胞が少なくなると映像データを読み取れなくなる。

このため、あえて異なる映像データの信号をつくり、残った網膜細胞に配信する。網膜細胞は刺激を受けて活性化、映像データを脳に送信する仕組みだ。

すでに3例目の手術を終え、数年後には医療機器としての承認を取得する計画だ。研究責任者の不二門尚教授は「今はぼんやりと形や動きをとらえる程度。しかし、将来的には日常生活で自立した生活ができる人工網膜技術を確立したい」という。

■精度上げ明瞭に

ただ、もう少しはっきり見えないか――。そんな課題をチップの精度を上げることで解消しようとしているのが、奈良先端科学技術大学院大学の太田淳教授らの研究チームだ。

単純にチップのなかの電極チップの数を増やすだけでは、チップが大型化するだけ。チップをつなぐ配線も増え、埋め込み手術自体も困難となる。

▼網膜色素変性とは 網膜の細胞に異常が発生する難病。国内では緑内障、糖尿病に続く失明原因だ。網膜の細胞が死んでいくために見えにくくなる症状が着実に進む。国内では3万人以上、世界で150万人の患者がいるとされ、正確な診断を受けていない人も含めるとその数はもっと増える。

  • 1
  • 2
  • 次へ

日経電子版が2月末まで無料!いつでもキャンセルOK!
お申し込みは1/31まで

保存
共有
印刷
その他

先端技術で病に挑む

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報