/

低成長が日米株の守護神、意外なバブルは訪れるか

編集委員 田村正之

市場を驚かせた日銀の追加緩和。ただ「驚き」の一巡後も中期的に株高が続くかはまだ見えづらい。一方の不安材料は米連邦準備理事会(FRB)による金融緩和終了と今後の利上げ予測。米金融政策が株式市場に与える影響を長期データで考えた。

「海外ヘッジファンドが日本株を大きく売り切った後での日銀追加緩和。彼らが青ざめてあわてて買い戻しに入っただけでなく、いったんアベノミクスに失望した年金など海外の長期投資家の目も覚まさせた」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長)

ただし藤戸氏もこの緩和が中期的に日本株を押し上げ続けるかは「インフレ率など実体経済にどれほど寄与するかにより、まだ見えづらい」と話す。

一方で米国ではFRBが金融緩和の終了を発表したばかり。「出口」に絡む混乱は今度も再び起きるのか。

現在、ニューヨークで投資家を訪問しているマネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストは「米国の投資家は明るい」と話す。「緩和終了に関する株価の調整は10月に終え、もう過去の話とみている。本格的な株価の下落がもしあるなら、利上げが始まってから数年後の話だろう」

グラフAは米国の長短金利とダウ工業株30種平均の動向。1970年以降、ダウが2割以上下げた5回の局面には共通点がある。政策金利の引き上げが続いて長期金利に匹敵する水準まで達した後に起きていることだ。

例えば2000年のITバブル崩壊時は、94年初めまで3%程度に抑えられていた政策金利が6%台にまで引き上げられた後に起き、07年の金融危機に端を発する暴落も、04年まで1%だった政策金利が5%台に引き上げられていた。87年のブラックマンデーもFRBの金融引き締め政策への転換が影響した。

 政策金利の引き上げが続いて長期金利に匹敵水準になる時期は通常、景気拡大の終盤。長期金利は横ばいか下落に転じ始めている。そこでさらに引き締めが続くと、やがて景気と株価は失速するという構図だ。

アーク東短オルタナティブの鈴木英典取締役は「それだけ米国の金融政策は影響が大きいということ。ただし過去の株価の大幅調整局面を平均すると、利上げ開始後で約3年。現在は利上げはまだ始まっていない時期であり、株価の大幅調整を心配するのは早い」とみる。

しかも米国でも労働力人口減少による潜在成長率の低下が取り沙汰されている。「潜在成長率低下の中では、利上げがあるとしても、前回のように政策金利が5~6%にまで上がるとは思えないし、利上げピッチも遅いのではないか」(日本総合研究所の井上肇研究員)

BNPパリバ証券の丸山俊日本株チーフストラテジストは「そもそも米国で政策金利をあげられるかどうかすら疑わしいし、経済動向次第で再び量的緩和の第4弾があってもおかしくない」とみる。

潜在成長率の低下がいわば「守護神」となって引き締めを遅らせ、株高の持続につながりそうな皮肉な構図だ。米国株は10月半ばの調整で、下値のメドとみられる200日移動平均をいったん下回った後、急速に値を戻した(グラフB)。

一方追加緩和で市場を驚かせた日本。丸山氏は「政治主導で起きた80年代後半のバブルに状況が似てきた」と話す。政府は円高不況後の景気対策のため積極的な財政出動をするとともに、89年まで低金利政策が続いた。

「80年代後半に政府が公的年金や郵貯資金による運用見直しを実施したのと、今年、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が日本株の運用比率上げをするのも似ている」(丸山氏)

 日経平均株価は86年に前年比4割あげた後、87年は小幅な伸びにとどまったが、88、89年には再び大きく上げた。丸山氏は「今年は87年あたりに似ているのではないか。この後に再び最後の株高局面、いわばバブルが来るかもしれない」と話す。

シティグループ証券の藤田勉副会長も「バブルの3条件は低金利、低インフレ、好景気の3つだが、前の2つはすでに起きている。この数年のうちに景気が上向けば、資産バブルとなる可能性がある」と指摘する。

52週移動平均の上下2割の範囲で動くことが多かった日本株も、まだ中期的な上値余地が残る(グラフC)。

もちろん今後の株価に警戒的なスタンスの市場関係者も多い。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸氏は「日銀の追加緩和で目先、日経平均で1万7000~8000円もあり得る」としながらも、米国株や日本株が中期で上昇を続けるかどうかには疑問を示す。

「何よりリーマン・ショックの前と後では世界がまるきり変わっている」。例えば金融政策は金利からマネーの量にシフトし、膨張するマネーが株高を支えた。米国では緩和終了ですでに膨張が止まったことになり、マネー膨張による株価上昇は薄まってくる。

「中国の成長鈍化やロシアやブラジルの景気後退に加え、欧州のデフレ懸念なども深刻化。世界経済は脆弱化している」(藤戸氏)

つまり米国の緩和終了後も利上げピッチが遅いとみられる要因には構造的な成長力鈍化があるし、日本の追加緩和も再び忍び寄るデフレを予防するためのもの。

低金利や量的緩和による株高要因の裏側には国内外の経済が十分強くないというネガティブ要因があり、どちらを大きく見るかで株高の持続力の見方も正反対になる。それは株価の乱高下する局面が増えることでもある。

「70年代以降に起きた2~3割超の大幅調整は、仮に起きるにしてもまだ数年後」と見るマネックスの広木氏や東短の鈴木氏も、10月に起きたような日米株の1割前後の乱高下は「今後も普通にありそう」とみている。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン