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1つの畑で野菜も発電も 「ソーラー兼業農家」に注目

編集委員 竹田忍

 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の見直し議論と相まって太陽光発電への逆風が強まっている。天気次第で出力が大きく変動する太陽光発電が扱いにくい側面を持つのは確かだが、メガソーラーだけではない。出力が10キロワット以上50キロワット未満で低圧扱いの太陽光発電もある。今、注目を集めるのは農地に太陽電池を設置し、農業を続けながらFITで売電する「営農発電」だ。

同じ畑で落花生作りと太陽光発電を両立

太陽光パネルの下で栽培した落花生を収穫(千葉県山武市)

農地は農業以外で収益を得ることが禁じられているが、農林水産省が昨年3月末、再生エネの普及を目指して規制緩和した。植物の光合成は太陽光をすべて使い切っているわけではない。光が十分に強くなると、それ以上いくら光を当てても光合成量が増えなくなる。

この光の量を「光飽和点」と呼ぶ。この光飽和点の分を確保し、余った光を発電に回せば、影ができても作物の収量には影響しない。農業と売電の両立が可能になる。

10月4日、千葉県山武市の農家Iさんの畑で落花生の収穫があった。例年と違うのは1000平方メートルの農地で、出力48キロワットで低圧の太陽光発電設備が稼働していたこと。営農発電は支柱を立てて太陽電池を設置するのが決まり。Iさんの農地では建設現場の足場に使うパイプで支柱や架台を組んでいた。

支柱は土中のコンクリート製基礎で支え、さらに基礎同士を、土中で水平方向に配置したパイプで連結し、強度を持たせた。「風で飛ぶ心配がなく、太陽光パネルを隙間なく取り付けできる」と施工にあたったアルバテック(大阪市)の高木隆会長は話す。

風に対する基礎の抵抗力が小さいと、風圧を逃がすために間隔をあけてパネルを設置する必要が生じる。結果的に架台が大きくなり、土地の使用効率が下がり、コストがかさむという。

売電で年220万円の収入 初期投資8年で回収

Iさんは「この畑から落花生の出荷で得られるのは6万円程度。ハクビシンやタヌキに食べられ収穫が目減りした」と話す。来年はもっと栽培が楽なミョウガへの切り替えも検討している。

売電については「1キロワット時あたり32円で売り、年間220万円の収入が期待できる」と明かす。1680万円の初期投資は約8年で回収できる計算だ。これまで形ばかりの野菜をつくり、あとは雑草を刈るだけだった農地が落花生畑として復活した意義は大きい。

収穫した落花生(千葉県山武市)

発電用に土地を手当てする一般の太陽光発電事業者と違い、農家は手持ちの農地を発電に使うため、電力会社との契約がストップしても損害は軽くて済む。メガソーラーが規制されても、個人所有の農地を使った小規模な営農発電は対象外で、東北電力がこのケースだ。一部には牧草地を使って営農型のメガソーラーをやるというアイデアも浮上していたが、これは難しくなった。

関西電力の八木誠社長は10月29日の記者会見で「まだ、FITによる再生可能エネルギーの受け入れを止める段階ではない」と明言した。関電管内では「規制がかからないうちに営農発電を始めてしまおう、と申請の前倒しを検討する農家も出ている」と、太陽光発電のある業者は明かす。

太陽光発電への風当たりは強いが、ヤンマーは10月から農機販売子会社のヤンマーアグリジャパン(大阪市)を通じて営農発電システムの販売に乗り出した。高い知名度と農家との強固なネットワークで営農発電の展開を急ぐ。

経済産業省は出力変動が小さい風力発電や地熱発電への誘導を目指すが、そう簡単にはいかないだろう。申請から認可まで時間がかかる風力や地熱は売電事業者から敬遠されがちだ。

見落としてならないのは太陽電池が工業生産の規格品であることだ。大規模から小規模まで出力はパネルの枚数だけで調整できる。風力や地熱では、大型と小型で仕様が別で、立地場所に合わせた出力の調整、最適化がやりにくい。

蓄電池を活用して、出力の平準化を

風力発電所に設置された日本ガイシのNAS電池(同社提供)

出力変動を問題視して太陽光発電を排除せずとも、蓄電池の活用で凸凹をならす平準化をやればよい。日本ガイシが手掛ける電力貯蔵用のナトリウム硫黄(NAS)電池活用をとなえるエネルギー戦略研究所(東京・港)の山家公雄所長は「NAS電池を備えた六ケ所村二又風力発電所(青森県六ケ所村)は送電網に出力変動の影響を及ぼしていない」と語る。

NECが今年、中国・万向集団グループ傘下の米A123システムズがもつ大型蓄電池事業を約100億円で買収したのも同様の仕組みを狙っているからだ。

10月7~11日、幕張メッセで開催された「シーテック2014」で、東芝が構えたブースにはリチウムイオン電池の一種である「SCiB」が展示されていた。リチウムイオン電池には発火リスクがあるが、安全性の高いチタン酸リチウムを使うSCiBはクギを刺しても燃えない。正極材にリン酸鉄リチウムを用いるエリーパワー(東京・品川)のリチウムイオン電池はクギ刺しだけでなく、銃で撃っても発火しない。これらの蓄電池を太陽光発電所に併設すれば、出力変動は緩和できる。蓄電池の舞台が広がれば、改良も加速する。

拙速なFIT見直しで太陽光発電の抑制だけを進めれば、太陽電池や蓄電池の技術進歩を妨げ、営農発電という新たな農業支援策の芽も摘む。「角を矯めて牛を殺す」ような政策変更は愚の骨頂である。

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