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「円安のマツダ」返上へ 海外生産比を5割に

 マツダがメキシコ工場で小型車「マツダ2(日本名デミオ)」の生産を開始し、2車種目の量産に踏み切った。同社主導で海外工場を立ち上げるのは実に27年ぶり。輸出比率が8割弱と高く、為替変動に業績を左右された"負の歴史"を断ち切る戦略拠点だ。「円安のマツダ」返上へ。2016年度にはメキシコ工場を活用し海外生産比率を2割台から5割に高める。

「ヒロシマに負けるな」――。10月23日にマツダ2の生産を始めたメキシコ中央部にあるマツダの新鋭工場は活気に満ちていた。今年1月に操業したばかりだが、一気に生産を拡大する。

日本で180人が研修

マツダのメキシコ工場でマツダ2(日本名デミオ)の生産が始まった

真新しい大型プレス機がリズムよく自動車のボディー部品を成形していく。メキシコ工場には本社工場(広島県府中町)に比べて加圧能力の高いプレス機を導入。車体の軽量化のために使用が増えている高張力鋼板(ハイテン)などの加工もしやすくなり、1度のプレスで加工できる部品点数はマツダ2の場合、3.8部品と防府工場(山口県防府市)の約2.7倍の生産効率を誇る。

組み立て工程では1台1台がパレットに乗り、作業者、組み付ける部品と一緒に動く。作業者もパレットに乗る方式では自ら歩く必要がなく、組み付け作業に集中できる。メキシコ工場の運営会社マツダデメヒコビークルオペレーション(MMVO)が目指す品質基準は「広島の本社工場と同等以上」。MMVOの江川恵司社長は特に「以上」の部分に力を込める。

米州では久々の自社主導の工場のため、現地人の養成にも必死で取り組んだ。操業の2年も前から約180人のメキシコ人を広島に送り込み、4~5カ月かけて研修を積んだ。9月末で5千人にまで膨らんだ工場の従業員を指揮する。「現地人のリーダーが自らやり方を見せて、スペイン語で教える方が伝わりやすい」(富永修MMVO副社長)。

マツダのメキシコ工場ではエンジンの機械加工も始まり、一貫生産が可能に

マツダはここ数年「モノ造り革新」と呼ぶ生産改革を進めてきた。12年2月に発売した多目的スポーツ車(SUV)「CX-5」以降、エンジンやデザインを一新した商品群の開発と表裏一体で、商品力の向上と生産コストの削減を同時に実現し、業績回復に大きく寄与した。

ただ国内は本社工場の生産開始が1966年、防府工場が82年と稼働から長い年月が経過している。生産設備の更新は続けるが、大幅なレイアウト変更は難しい。富永副社長は「一から立ち上げたメキシコは広島や防府でやりたかったことができた。日本と『同等』は控えめな目標」という。

マツダはメキシコをグローバル生産の中枢拠点に育てる。メキシコは世界40カ国以上と自由貿易協定を締結、関税上の優遇措置がある。しかも人件費は日本の5分の1程度だ。米国や中南米、欧州にも輸出する。

 21日にはエンジンの機械加工工場も稼働した。これまでエンジンの主要部品は機械加工までしたものを日本から輸入していたが、加工前のアルミニウムの鋳造品もメキシコでの現地調達に切り替えた。「エンジンから一貫生産する工場に進化した」(富永副社長)

「近くトヨタマンがメキシコにやってくる」――。来年夏にはトヨタ自動車向けの生産も始まる。生産するのはマツダ2をベースにした小型車で、全くの新車種を造るわけではないが、トヨタの品質基準は厳しい。まさにMMVOの真価が問われる。

年産25万台へ

年産能力は現在の14万台から、16年3月期中に25万台と1.8倍に膨らむ。現在は昼夜2交代の18時間稼働だが、3交代24時間稼働とフル生産体制に移行する。

「マツダの泣きどころは為替。とにかく円高に弱い」(アナリスト)――。同社は中国やタイには生産拠点はあるが、欧米市場は輸出が主体。輸出比率は国内メーカーのトップ水準だ。リーマン・ショック以降の超円高で12年3月期まで4期連続の最終赤字に陥った。メキシコ工場は為替変動に強い経営体質に生まれ変わる要だ。

メキシコには日産自動車やホンダも立地するが、マツダにとってその意味合いははるかに大きい。くしくも円安局面のなか、15年3月期は2期連続の営業最高益を見込む。だが、いつ円高の波が襲ってくるかもしれない。メキシコ工場の競争力強化が「今、一番の課題だ」(小飼雅道マツダ社長)。

(広島支局 篤田聡志)

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