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ポストゲームショー(田口壮) Wシリーズ、選手だけではない「場慣れ」の差

最終戦までもつれ込んだ大リーグのワールドシリーズは、すっかりこの舞台の常連となったサンフランシスコ・ジャイアンツが29年ぶりの出場となったカンザスシティー・ロイヤルズを振り切って幕を閉じました。NHKの解説で、外野スタンドなどいろいろな場所からリポートして気がついたのは、選手ばかりでなく、ファンにも場慣れの差があるということでした。

応援の仕方、ファンも忘れた?

米中西部にあるカンザスシティーと、西海岸の港湾都市サンフランシスコ。ワールドシリーズを迎えるにあたり、どちらの街が熱いかというと、やはり1985年以来の晴れの舞台となるカンザスシティーでしょう。

いたるところにある街の噴水までチームカラーの青に染められ、ロイヤルズのファンがどれだけこのときを待ちかねていたかがわかります。

低迷していた間、日本ゆかりの人たちもここのユニホームを着ました。監督を務めたトレイ・ヒルマンさん(元日本ハム監督)、元ロッテの薮田安彦投手、マック鈴木投手。野茂英雄投手も現役の最後、わずかの間ですが、ここに所属していました。しかし、チームが浮上することはありませんでした。

85年前後のロイヤルズはメジャーを代表する強豪でした。それだけに、誰もがもどかしく思っていたはずです。そんなチームを変えたのが、青木宣親選手たちだったということですね。

しかし、30年近くも勝っていなかったとなると、変な言い方になりますが、ファンも応援の仕方を忘れてしまっているようです。

ロイヤルズの本拠地、カウフマン・スタジアムからワールドシリーズは始まりましたが、どこかスタンドの雰囲気がちぐはぐというか、ばらばらなのです。

さあ勝負どころがきた、ここはパワー全開で応援しなくちゃ、というポイントが試合のなかに何度かあるものですが、そういう局面にさしかかってもスタンドが一体となってこない感じなのです。

これはひとえに、場慣れの問題ではないでしょうか。ファンの方は負けるのには慣れっこですが、強いロイヤルズを応援するのには慣れていないのです。若いファンは強かった時代をそもそも知りませんし、昔からのファンは記憶が薄れている、という感じなのです。

これがサンフランシスコのAT&Tパークとなると、全く違ってきます。

ジャイアンツ時代、応援で後押し

試合の山場にさしかかると、内外野のスタンドをオレンジ色に染めたジャイアンツファンが一体となって、盛り上げます。

選手の集中力も自然に高まるというものです。名将ブルース・ボウチー監督のもと、2010年、12年とワールドチャンピオンになり、「ジャイアンツ時代」を築いているのにはスタンドの後押しも大いに貢献したことでしょう。

チームがどんどん強くなることによって、ファンも勝利の味を知り、野球の勝負どころを覚えていくという好循環です。

運営も見事です。私は球場のある海沿いのホテルに泊まり、朝、球場までの4キロほどを30分くらいかけてジョギングしていたのですが、球場に向かうときにはなかったワールドシリーズの旗が、球場からとって返してきたときにはもう沿道にパタパタと翻っているではありませんか。選手やファンの写真をプリントした旗です。あっという間の早業でした。

カンザスシティーからサンフランシスコに入った日は空港も街も、ワールドシリーズがあるとは思えない静けさでした。それが直前になってパーッとお祭りムードになったのです。

この舞台転換の鮮やかさ。何とも洗練されているではありませんか。毎年恒例の行事であるかのように迎え入れ、スムーズに盛り上げていくわけです。

甲子園の常連校が応援まで洗練されているのと同じことかもしれません。

NHKの中継で、AT&Tパークのなかをぐるりと回ってみました。ブルペンが間近に見えたり、試合を見ながら、振り向けばボールが湾に飛び込む球場名物の「スプラッシュ(水しぶき)・ヒット」がみられたりするポイントがあって、飽きません。

もう一つ気づいたのは内野守備の変形シフトの見え方でした。メジャーでは極端なシフトが目立ち、極端に右に寄ったり、左に寄ったりということがあります。当然広く空いた空間が生じて、そこに転がされたらどうなるのだろうと思うのですが、外野スタンドからみると、それほど大きな穴になっているようにはみえないのです。これは意外でした。

スタンドのなかに身をおいた私はすっかり球場の雰囲気に浸り、ファンの一人になっていました。ファウルボールや選手が投げ入れるボールを捕りたいなとか、パンダの着ぐるみを着てみたいな、とか。

ところ変わればお客さんの色も変化

ジャイアンツの中軸で、第4戦で決勝打を放った人気者のパブロ・サンドバル選手は丸っこい体形で「パンダ」のニックネームをもらっています。

そんな様子をみて、私までなんだか浮き浮きしてきました。「ホームの強み」というのはこれなのだ、と思いました。

野球は内外野、どんな角度からみても面白いんだなとか、同じ野球といってもところ変わればお客さんの色もずいぶん変わるんだな、とか……。いろいろ発見の多いワールドシリーズでした。

(野球評論家)

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