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アルゴリズムが変える社会生活 透明性の確保課題

藤村厚夫・スマートニュース執行役員

私たちが繰り返している社会生活に今、「アルゴリズム」の影響が高まっている。アルゴリズムを簡単に説明すれば、ある種の解答を得るための手段、論法を定めたものをいう。様々な条件やデータを与えるとアルゴリズムが答えを抽出する。

アルゴリズムがネット上の情報を選別するフィルターバルブ問題が話題になり始めた(グーグルの画像検索画面)

例えば、ある銘柄の株式の値動きや周辺の諸事情をデータとして活用して、株は買いか売りか、あるいは保持かなどを自動的に判断する仕組み。これなどもアルゴリズムの設計に基づく。

株取引にとどまらず、人間が逐一判断して高度な意思決定をしなければならなかった領域にアルゴリズムが浸透しはじめたことで、専門の人間の処理が不要になり、自動的で高速な処理が広範囲で実現した。

現代は大小様々なコンピューターが普及して、大量のデータが消費者の生活にとって身近なものになった。データを高速に処理する必要性も高まっており、それゆえ多種多様なアルゴリズムが消費者の身近に存在するようになった。食材の情報を測定しては自動的に加熱時間を決定する電子レンジにも、ある種のアルゴリズムが働いている。

コンピューターとアルゴリズムの存在意義は高まる一方だが、問題も指摘されている。最近では米連邦取引委員会(FTC)が、住宅ローンやクレジットカードの与信判断にアルゴリズムが関与し、それが個人を不当に差別する結果を引き起こしているのでは、と危惧を表明した。大量にデータをさばく必要から生じた与信業務へのアルゴリズムの適用だが、その中に個人の属性を判断する材料が含まれているのではないかとの懸念だ。それが差別を助長する可能性があるというのだ。

 日常的に接する情報にもアルゴリズムが関与しそれが情報の偏りを生んでいるとの批判もある。数年前に米国のジャーナリストが掲げた「フィルターバブル」問題だ。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年から現職。東京都出身、60歳。

例えば、グーグルのような検索エンジンや、フェイスブックのような交流サイト(SNS)はユーザーの過去の行動や個々人の属性情報などを判断し、あらかじめ情報を取捨選択(フィルタリング)して提供している。

これは便利な一方で、リスクもはらむ。ユーザーはフィルターの存在を意識せず情報に接しているが、情報操作されている面もあるわけだ。このフィルターこそがアルゴリズムそのものだ。

こうしたフィルターバブル問題にかかわる生々しい事件が生じた。8月に米ミズーリ州ファーガソンで起きた黒人少年射殺事件をめぐる報道だ。ある社会学者が、この事件についての情報量がフェイスブックとツイッターでは極端に異なっていたと指摘。アルゴリズムが人々に与える問題を浮き彫りにしたのだ。

広く知られてしかるべきニュースの取捨選択にアルゴリズムが関与すれば、ユーザーの世界観に影響を及ぼすことは間違いない。音楽ストリーミングサービスなどでユーザーの好みを検知して楽曲を自動的に選別する仕組みが普及すれば、アーティストらの将来を左右しかねない。FTCがアルゴリズムに透明性を求める理由がここにある。

高度な利便性を設計できる技術者が求められると同時に、透明性や公共性への問題意識の高いアルゴリズム設計者が求められている。新聞社の編成に政治的意図が隠されていないかが問われるのと同様、古くて新しい課題として浮上している。

〔日経MJ2014年10月27日付〕

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