2019年4月22日(月)

低い断熱性なぜ放置、世界に遅れる「窓」後進国ニッポン
松尾和也 松尾設計室代表

(3/4ページ)
2014/11/7 7:00
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■アルミの枠は熱が逃げやすい

材料の熱伝導率の比較。アルミは樹脂や木に比べて熱を通しやすく、窓枠に利用するのが不利であることが分かる(資料:ケンプラッツ)

材料の熱伝導率の比較。アルミは樹脂や木に比べて熱を通しやすく、窓枠に利用するのが不利であることが分かる(資料:ケンプラッツ)

窓は枠とガラスで構成されています。このうちガラスの方はそれほど諸外国に比べて劣っているわけではありません。ペアガラス(複層=二重)やLow-Eペアガラス(低放射)といったガラスは、かなり一般化してきました。

問題は枠にあります。断熱性能が低い窓枠は、あたかも隙間風が吹き込むかのようです。日本のサッシの大半は、枠がアルミでできています。理由はアルミが加工しやすい、工場のラインがアルミ向けであるといったことにあります。しかし物理的に考えれば、枠にアルミを使うことはあり得ません。断熱性能の目安となる熱伝導率で各材料を比較してみれば明らかです。

熱伝導率は、アルミかそうでないかで約1000倍も異なるのです。だから世界的にはサッシの樹脂化や木質化は当たり前になってきています。

世界の樹脂サッシの普及状況。日本はまだ普及が進んでいない(資料:樹脂サッシ普及促進委員会)

世界の樹脂サッシの普及状況。日本はまだ普及が進んでいない(資料:樹脂サッシ普及促進委員会)

米国では全50州のうち24州でアルミサッシが禁止されています。日本で売られている4.65W/m2・Kレベルのサッシは大半がアルミでできていて、アングルと呼ばれる室内側の部位だけが樹脂でできている「樹脂アングルサッシ」と呼ばれるものです。これが売れ筋の7割を占めます。

大手住宅メーカーの大半が採用しているのはU値2.9W/m2・K(Low-Eペアガラス利用時)もしくは3.5W/m2・K(普通ペアガラス利用時)で内枠が樹脂、外枠がアルミでできた樹脂アルミサッシというものです。なかには、これを「樹脂サッシ」と呼ぶ人も存在します。

■ペアガラスでも結露の恐れ

サッシに比べるとガラスはマシと言いましたが、2点ほど指摘しておきます。

まずは複層ガラスを構成する部材「スペーサー」についてです。ガラスを2枚重ねる場合、間に空気層を設けます。空気はガラスよりも熱を伝えにくく、空気があることで窓全体の断熱性能が向上します。その空気層を設けるため、ガラスの周囲に挟み込む部材がスペーサーです。

日本製の複層ガラスのスペーサーは、ほぼ100%がアルミでできています。これも物理的に考えるとあり得ない話です。そもそも断熱性能を上げるためにスペーサーを使っているはずなのに、その部材が熱を通しやすい材料で作ってあるわけです。いま欧米では、樹脂とステンレスを複合して作っている樹脂スペーサー(ウォームエッジともいう)と呼ばれる部材が徐々に拡大しています。

スペーサーの断熱性能を上げることは窓全体の性能向上につながりますが、それ以上に結露を防ぐという面で大きな意味を持ちます。

どんな窓でも最も結露する可能性が高いのは、下枠とガラスが接する近辺です。人間の健康に理想的な冬の室内環境は、室温が20℃で相対湿度が50%程度とされており、この状況では外気温が低いと、すべての樹脂アルミサッシで結露が発生します。

結露が発生するか否かは、まず枠が樹脂か木なのか、それ以外なのかでほぼ決まります。枠とガラスの断熱性能を比較した場合、一般的には枠の方が低いので、結露が生じるかどうかは枠の性能に引っ張られます。上記の室内環境で外気温が0℃であれば、結露が始まる温度(露点)は9.3℃です。アルミの枠では多くのケースで結露してしまいます。

■樹脂スペーサーで表面温度2℃上がる

では、樹脂の枠でありさえすれば絶対に結露しないのかといえば、そんなことはありません。普及レベルで最高性能の樹脂枠、16mm(アルゴンガス注入)の空気層を持つLow-Eペアガラスというサッシについて、実際にほかの条件を変えて比較してみました。

アルゴンガスの有無と樹脂スペーサーの有無の計4パターンで下枠の温度を比較したグラフを示します。アルゴンガスは窒素と酸素で構成する空気に比べて熱伝導率が低いため、断熱性能を高めた複層ガラスの空気層に使われることがあります。

外気温が0℃、室内が気温20℃、相対湿度50%の場合、ペアガラスを使用したサッシの下枠が何度になるかを測定した結果。2枚のガラスの間に挟まれているスペーサーと空気の違いによって、9.0~11.3℃となった。9.3℃以下になると結露するので、樹脂スペーサーは有利(資料:テクノフォルムバウテックジャパン)

外気温が0℃、室内が気温20℃、相対湿度50%の場合、ペアガラスを使用したサッシの下枠が何度になるかを測定した結果。2枚のガラスの間に挟まれているスペーサーと空気の違いによって、9.0~11.3℃となった。9.3℃以下になると結露するので、樹脂スペーサーは有利(資料:テクノフォルムバウテックジャパン)

このグラフを見れば分かると思いますが、アルゴンか否かによる下枠表面温度の差はせいぜい0.2~0.3℃程度しかありません。しかし、スペーサーが樹脂なのかアルミなのかによって、2℃程度も違うのです。しかもこの2℃の間には、結露が発生するかどうかの境目である9.3℃というラインが含まれています。樹脂スペーサーであれば、空気層がアルゴンでなくても結露しないことが分かります。

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