低い断熱性なぜ放置、世界に遅れる「窓」後進国ニッポン
松尾和也 松尾設計室代表

(2/4ページ)
2014/11/7 7:00
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■欧州だけが高基準にあらず

「欧州は省エネや断熱の基準が厳しすぎるから、それと比べるのは酷だ」。こんな意見がよく聞かれますが、それは欧州だけの話ではありません。お隣の韓国と比較してみましょう。

東京や大阪に該当する地域(図のSouth Zone)の戸建て住宅(同Detached house)に対する最低基準は2.7W/m2・K、推奨基準は1.6W/m2・Kです(60m2超)。これが意味するところは、同じくらいの温度域での比較では、今の日本の最高基準(2.33W/m2・K)が韓国の最低基準程度でしかないことを表しています。

日本と韓国(Middle Zone、South Zone、Jeju Island=済州島)の断熱基準を比較。韓国の方がシビアだ(資料:テクノフォルムバウテックジャパンの資料を一部加工)

日本と韓国(Middle Zone、South Zone、Jeju Island=済州島)の断熱基準を比較。韓国の方がシビアだ(資料:テクノフォルムバウテックジャパンの資料を一部加工)

さらに、日本では最近まで、断熱性能に有利な樹脂製の枠と三重(トリプル)のガラスを使った製品は、ほとんど販売されていませんでした。その状況下では、日本の最高レベルのサッシが韓国の推奨基準に達することができなかったのです。

では、中国と比較してみましょう。

日本と中国で求められる断熱性能の比較。東京や大阪と同温度域である緑に着色したエリアは2.5W/m2・Kと、中国の方がシビアだ(資料:テクノフォルムバウテックジャパンの資料を一部加工)

日本と中国で求められる断熱性能の比較。東京や大阪と同温度域である緑に着色したエリアは2.5W/m2・Kと、中国の方がシビアだ(資料:テクノフォルムバウテックジャパンの資料を一部加工)

この資料は2012年に作成されたものですが、既に東京や大阪と同じ温度域においては最低基準が2.5W/m2・Kとされており、韓国と同等の厳しさとなっています。

さらに、2015年をめどにこの基準が2.0W/m2・Kまで厳格化されることが検討されています。

こうしてみると、いかに日本の窓が世界的に遅れているのかが分かります。日本メーカーなのに、中国に向けては日本国内向けよりも性能の高い窓を出荷している会社があるほどです。

■暑さの7割、寒さの6割は窓が原因

なぜ、世界各国がこのように窓の高性能化を厳格に進めているのか。もちろん、理由があります。

日本建材・住宅設備産業協会の調べによれば、住宅で生じる熱の損失を部位ごとに相対化してみると興味深いことが分かります。窓などの開口部を通して、冬に暖房の熱が逃げる割合は58%、夏の冷房中に入ってくる割合は73%にも及びます。暑さの原因の7割、寒さの原因の6割が窓とみなせます。

もちろん、家の断熱性能や形状などによって異なります。国によっても異なります。しかし、どの国でも暖房にかかるエネルギーはかなり大きな比率を占めており、窓はその原因の半分以上を占める部位なのですから、規制を厳しくするのは極めて合理的なわけです。

一般的な住宅で生じる熱の損失を、部位ごとに相対化した値。特に開口部からの熱の出入りが大きいことが分かる。1999年の省エネ基準(次世代省エネ基準)で建てた家がモデル(資料:日本建材・住宅設備産業協会の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)

一般的な住宅で生じる熱の損失を、部位ごとに相対化した値。特に開口部からの熱の出入りが大きいことが分かる。1999年の省エネ基準(次世代省エネ基準)で建てた家がモデル(資料:日本建材・住宅設備産業協会の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)

日本の住宅の冷房エネルギーについては、年間を通せば暖房の10分の1程度しか使われません。しかしながら、最も暑いとされる8月15日の14時頃は、1年で最も電力需要の高い時期でもあります。発電所の設備はこの時期の需要量をベースに計画されているので、暑さの原因の7割を占める窓を高性能化することは、やはり大きな意義があります。

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