堆砂で機能低下のダム100カ所以上、検査院が指摘
ダム内に土砂が堆積して貯水量が減り、本来の治水機能を発揮できない恐れのあるダムが全国で100カ所以上あることが2014年10月21日、会計検査院の調査で分かった。このところ多発している突発的な局地的豪雨などに対応できないとして、検査院は国土交通相に改善を求めた。
検査院が検査したのは、国交省が管理する29ダムと21道府県が管理する182ダムの合計211ダム。検査における着眼点は、点検や計測の実施状況、堆砂への対応状況、緊急時への備えなどだ。
計画堆砂量の3倍以上に達しているダムも
指摘が最も多かったのは堆砂への対応状況で、主に3つのケースが見られた。
1つ目は、実際の堆砂量が計画堆砂量を上回る状況。計画年数に達していないのに、既に堆砂量が計画堆砂量を上回っている事例が、9府県管理の20ダムに見られた。中には、堆砂量が計画堆砂量の3倍以上に達しているダムも2カ所あった。検査院は、実際に利用できる貯水容量が減少するのに加え、貯水池の上流部に土砂が堆積した場合には、貯水池上流の河川などに影響を及ぼす場合もあると指摘している。
2つ目は、土砂が洪水調節容量内に入り込んでいるケースだ。たとえ堆砂量が計画堆砂量に達していなくても、洪水時に本来、貯留できる水量を貯留できなくなり、ダムの下流の河川に影響を及ぼす恐れがある。

検査院によれば、国交省所管の14ダムと16道県所管の92ダムでこうした状態になっていた。このほか、11道県所管の48ダムはそもそも洪水調節容量内の堆砂量を算出せず、状況を把握していなかった。
3つ目は、現在の堆砂量をダムの貯水量に反映していない例だ。国交省が管理する22ダムと20道府県が管理する130ダムでは、設定貯水量が建設当時のままで、堆砂の測量結果と連動していなかった。検査院はこれらのダムでは貯水位が建設当時よりも速く変化するため、貯水池への水の流入量を正確に測れない可能性があると指摘。放流のタイミングなど、ダムの操作を誤る恐れがあるとしている。
地震計が壊れていても放置

河川法に基づく操作規則に定められた点検や計測の履行については、漏水量の計測や設備の点検などが規則どおりに行われていなかった。
例えば9県が管理する25ダムでは、「計測値に大きな変化がみられない」ことを理由に、一部の項目について3年以上にわたって計測を止めていた。さらに、3県が管理する5ダムでは点検の際、堤体下部に設置された地震計が故障しているのに気づきながら3年以上も放置していた。
このほか、地震計とダム管理者への自動通報装置を接続していないため、地震発生時に速やかに臨時点検ができない状態のダムや、非常用発電設備の燃料が規定を満たす備蓄量に達していないダムも数多く見られた。検査院によると、維持管理に不備のあるダムは、合計201カ所あった。
以上の調査結果を踏まえ、検査院は国交省に対して以下の3つの改善処置と自治体などへの周知徹底を求めた。
(1)維持管理に必要な計測を適切に行い、必要に応じて設備の修繕などを施す。
(2)計画堆砂量を大きく上回るなど、堆砂に関わる問題を抱えている場合は適宜、対策を検討する。また、堆砂量の測定結果は、ダム操作などに関わる情報に反映させる。
(3)地震発生時に速やかに臨時点検が行える体制を整えるとともに、緊急時に所要の連続運転可能時間を確保できるように、非常用発電設備の燃料調達などに万全を期す。
(ライター 奥野慶四郎)
[ケンプラッツ 2014年10月24日掲載]