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本当に怖い「内部結露」 断熱材取り付け誤ると命取り

冬に備える家づくり(3)

日経アーキテクチュア
冬場の快適性を高めるためには、暖房機器に頼る前に、まず断熱性を高めることが重要――。では、とにかく壁に断熱材を厚く詰め込めばいいのかというと、話はそう簡単ではない。断熱材の取り付け方を誤ると、「内部結露」という家の寿命を縮めかねない危険な状況に陥ることがある。今回は、日経アーキテクチュア誌が2014年9月22日に発行した「建てる前に読む 家づくりの基礎知識」から、木造住宅の設計に長く取り組んでいる三澤康彦・三澤文子夫妻(Ms建築設計事務所)による、内部結露に関する講義を掲載する。聞き手は、ライターの萩原詩子氏。
内部結露に注意!(イラスト:宮沢洋、以下同じ)

──連載の1回目と2回目では、宿谷昌則先生に断熱の意味をうかがいました。今回はお二人に、実際に断熱材を施工する際の注意点をお聞きしたいと思います。

三澤文子(以下F) 住宅の壁は構造の一部であると同時に、建物の表皮です。構造耐力に加え、断熱性が問われます。単に構造的に強ければいい、というだけでは済まされないのが難しいところです。

三澤康彦(以下Y) いまだに「住まいは夏を旨とすべし」と、高断熱・高気密に異を唱える人がいますが、今はもう、火鉢の時代じゃありませんからね。昔の家では、冬は火鉢(輻射熱)に当たるだけなので室温が外気とさほど変わらなかった。断熱などしていませんから、結露することがなかったのです。

けれども、現代の住宅で断熱なしで室内を暖房すれば、家中が結露します。もちろんエネルギーも浪費します。

──壁に断熱材を入れればいいんですよね。

F それが、口で言うほど簡単ではないんですよ。断熱材を間違った方法で入れたために壁の中に湿気が入り込むことがあれば、壁の中で結露が発生してしまいます。これを「内部結露」といいます(図1)。

図1 断熱材は内部結露のリスクを生む(写真:Ms建築設計事務所)

湿気は木材の大敵。もしも構造材が腐朽してしまったら建物の命取りになりかねません。

断熱材を入れなければ温熱環境が保てないし、断熱材を入れれば内部結露のリスクが生じる。現代の木造住宅の大きなジレンマです。

──せっかく強くて断熱性の高い壁をつくっても、中の材が腐ってしまっては元も子もない…。

Y 筋交い壁は、壁の中に斜めの材が入るので、断熱材をきちんと入れるのはなかなか難しい。

それに比べると、構造用面材は壁の中に真四角の空洞を確保しやすく、断熱材を入れやすいのです(図2、図3)。

[左]図2 筋交いの壁に断熱材 [右]図3 構造用合板に断熱材

構造用面材は気密性を確保しやすいのも利点です。なかでも一番よく使われる構造用合板は、板材同士を接着剤で貼り付けています。固まった接着剤はほとんどプラスチックのようなもので、湿気を侵入させにくい。この性質を「透湿抵抗が高い」といいます。

石こうボードは湿気を通すので注意

F 今、広く行われているのが、構造用合板を屋外側に張り、断熱材を挟んで室内側に石こうボードを張ってクロスなどで仕上げる方法です(図4)。

図4 石こうボードは透湿抵抗が低い

ところがこの方法だと、構造用合板は透湿抵抗が高いのに、石こうボードは多孔質で透湿抵抗が低い。室内側で生じた湿気は石こうボードを透かして壁の中に入り込んでしまいます。

このとき、気密が重要になります。気密シートなどで湿気が壁の中に入り込まないようにしたうえで、断熱材をきちんと入れる。また、断熱材に隙間(熱橋)があったりすると、内外の温度差によって内部結露が起こりやすくなります。

──湿気を入れない施工が難しいのですね。

Y 断熱施工には専門職もいますが、多くの場合、大工さんが断熱材も施工しています。残念ながら、大工さんは気密・断熱の重要性をきちんと理解している人ばかりではない、ということを知っておいてください。

三澤康彦(みさわ やすひこ)。1953年生まれ。美建建築設計事務所、一色建築設計事務所を経て85年三澤文子とMs建築設計事務所(大阪府吹田市)を共同設立
三澤文子(みさわ ふみこ)。1956年生まれ。現代計画研究所勤務を経て、Ms 建築設計事務所共同設立。京都造形芸術大学通信大学院教授、岐阜県立森林文化アカデミー客員教授

(書籍『建てる前に読む 家づくりの基礎知識』の記事を基に再構成)

[参考]日経BP社は2014年9月22日、書籍「建てる前に読む 家づくりの基礎知識」を発刊した(電子書籍も同時発売)。家づくりで重要な6分野(省エネ、木造、納まり、設備、構造、法規)の第一人者が講師となり、一問一答の"個人授業"の形で、専門用語の意味とその背景を解説した。内容を分かりやすく読み解くイラストをふんだんに挿入。「なんとなく」だった知識が「そうだったのか」に塗り替わる、家づくりの必読書となっている。

建てる前に読む 家づくりの基礎知識

編者:日経アーキテクチュア
出版:日経BP社
価格:1,944円(税込み)

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