2019年1月21日(月)

相次ぐスマートメーター設置拒否 米電力会社の憂鬱

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2014/10/28 7:00
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こうした中、州公益事業委員会がスマートメーター導入を承認したメリーランド州は、「スマートメーターを導入しないと特別料金を課す」という方針を打ち出した。2013年6月にスマートメーターの導入を承認したばかりのイリノイ州でも、似たような事態が発生している。

さらにスマートメーターの導入率が高い、カリフォルニア州やネバタ州、オレゴン州でも、市町村レベルで問題化している。

■スマートメーターから発火

なぜ消費者は、スマートメーターの導入を拒むのか。消費者の中には、スマートメーターは電磁波を使って情報を送信するので、電磁波による健康被害の懸念や盗聴の可能性、プライバシーの侵害、データの正確性、さらに火災の可能性などを反対の理由に挙げている。

反対派は、スマートメーター設置は「合法的ではない」と主張する。確かに、スマートメーターの設置を法的に定めている州は存在しない。

ネバダ州では、スマートメーターが発火して火災に発展したという報告が、これまでに9件あった。ネバダ州の電力会社NV Energyは、15分ごとに使用量を計測するスマートメーターを、これまで州内に110万台設置した。州公益事業委員会は、電力会社と地元の消防機関から得た情報を基に、メーターの安全性に関する調査を行っている。

2014年7月末には、オレゴン州の電力会社Portland General Electricが、火災発生の懸念から、7万台のスマートメーターを取り替えることになった。

取り替える対象になったメーターは、米国ノースカロライナ州のSensusが製造した「2S Gen3 RD」というモデルである。このメーターは、主に賃貸住宅向けに2010~2012年に設置された。製品自体にリコールはかかっていないが、電力会社は安全性を重んじて、自主交換に動いた。

ペンシルバニア州の電力会社PECO Energyも、設置したSensusのスマートメーターが過熱・発火して火災が生じたために、全てのスマートメーターを自主的に取り替えた。フロリダ州の電力会社Lakeland Electricも、2014年8月に1万台以上のSenus製スマートメーターを取り替えると発表した。

■使わないと月10米ドル負担増

SDG&EがItronから調達したスマートメーター「OpenWay」(写真:SDG&E)

SDG&EがItronから調達したスマートメーター「OpenWay」(写真:SDG&E)

サンディエゴのSDG&Eは、「スマートメーターが健康を害する電磁波を放出している」と懸念を持つ消費者から、既に導入したメーターの撤去要請を受けている。

SDG&Eは、米Itronからスマートメーター「OpenWay」を調達した。OpenWayが利用する周波数帯は900MHzで、携帯電話より少し高い周波数の電磁波が放出される。

SDG&Eは「連邦通信委員会(U.S. Federal Communications Commission (FCC)) の電磁波による人体影響のガイドラインを遵守し、FCCの基準の周波数リミットに従って運用されている」「スマートメーターの電磁波が健康に与える影響はない」と発表している。

カリフォルニア州のPG&Eの消費者グループの一部は、スマートメーターの撤退をカリフォルニア州公益事業委員会に要求した。公益事業委員会は協議の末、電力会社がスマートメーターを一方的に設置するのではなく、消費者にスマートメーターを使用しない「オプション」を与える規制を2011年に設けた。ただし、スマートメーターを使用しない場合、まず最初に75米ドルをPG&Eに一括で支払い、その後、月額10米ドルを支払わなくてはならない。

消費者グループは「スマートメーターを使わないのに、なぜ特別料金を取るのか」と非難する。使用しない場合に発する料金は、スマートメーターからアナログメーターへの交換コストと、メーター検針の人件費、メインテナンス費をカバーするためである。

メリーランド州の公益事業委員会も、2014年2月に同様の規制を出した。スマートメーターの設置を拒否する顧客は、まず75米ドルを払い、月額11~17米ドル(州内の電力会社のサービス地域に依存する)を払い続けなくてはならない。フロリダ州やイリノイ州でもアナログメーターに替える場合、手数料と使用料金を払わなくてはならない。

■遠隔操作でアナログに切り替え

Sensuのスマートメーター「iConA Generation 4」(写真:Sensu)

Sensuのスマートメーター「iConA Generation 4」(写真:Sensu)

過去4年の討論の末、メーン州の公益事業委員会は2014年9月、家庭に設置されたスマートメーターから発生する電磁波は「健康に害を与えるものではなく安全である」と宣言した。この州でもスマートメーターを設置したくない、またはスマートメーターをアナログのメーターに付け替えたいと要望する電力消費者は、手数料を払わなくてはならない。

ちなみに、製造したスマートメーターが発火事故を起こしたSensuは、2014年夏、次世代のスマートメーターを市場に投入した。「iConA Generation 4」というモデルで、無線通信機能のオン/オフを電力会社が遠隔から制御できる。

これはスマートメーターが持つ無線通信機能による健康被害の懸念や、ネットワークセキュリティーの心配から、スマートメーターの設置撤去を希望する顧客が現れた場合に、メーターを取り換えずにアナログモードにスイッチできる機能である。これにより、電力会社がメーターを取り替える必要がなくなる。

(ジャーナリスト Junko Movellan)

[日経テクノロジーオンライン2014年10月2日付の記事を基に再構成]

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