不払い残業代、会社に請求する前にやるべきこと

2014/10/15付
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Aさんは1年ほど勤めた会社を退職した。採用時に示されていた労働条件とは違って残業や休日出勤が多く、健康を損ないかねないと思ったからだ。過去半年分の残業代、それに退職金も受け取っていない。会社に支払いを請求するつもりで準備している。知っておくべきことは何だろうか。

会社は従業員を1週40時間・1日8時間を超えて働かせることはできない、というのが労働基準法(労基法)の原則です。法定労働時間を超えて働かせた場合、割増賃金を支払う義務があります。深夜(午後10時~翌日午前5時)や、最低週1日は必要と定められている休日に働かせたときもやはり割り増しする義務があります。

法律は賃金の割増率についても原則を定めています()。法定労働時間を超えた分は25%(1カ月60時間を超える場合は50%)以上、法定休日については35%以上です。休日で、なおかつ深夜であれば割増率は60%以上とさらに高くなります。Aさんのように、不払いの残業代を会社に請求する場合、こうした知識が武器になります。

請求する前には「労働基準監督署に相談するのが有効」と社会保険労務士の井上大輔さんは言います。労働問題に詳しい弁護士の外井浩志さんは「給与明細やタイムカードなど実際の労働時間を示す証拠があれば監督署は会社に指導しやすい」と話します。

弁護士を代理人として会社に交渉してもらうやり方も一般的です。この場合は一定の着手金や成功報酬が必要なので弁護士に必ず確認してください。

補足すると、労基法では会社が残業代を払う義務がないポストがあります。監督・管理の立場にある者や機密の事務を取り扱う者(管理監督者)です。労務管理の指揮監督権限が実際に与えられているかどうか、管理職にふさわしい給与を受けているかどうかで判断されます。

店長や支店長といった肩書があっても、権限や処遇がなければ、「労基法上の管理監督者とは言えず、残業代不払いは許されない」と弁護士で日本労働弁護団幹事長の高木太郎さんは指摘します。

Aさんのように退職金も支払われなかった場合はどうでしょう。退職金の支払いについては、会社と労働組合との間で交わされた「労働協約」や、会社が定めた「就業規則」などで規定されているのが一般的です。退職金について規定がない場合は支払わなくても直ちに会社側の違法とはなりません。

ただし、過去の裁判では、規定はなくても、退職金支払いが労使慣行になっているとして支払いを命じた例があります。退職金を受け取っていない場合は労働基準監督署に勤務先の違反を申告し、会社に対して退職金を支払うよう求めましょう。また弁護士に相談するのも有効です。

[日本経済新聞朝刊2014年10月15日付]

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