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物価連動債、インフレに強いが… 個人で買う注意点

 10年物価連動国債の個人保有が来年1月に解禁になる。物価の上昇率に応じて元金が増える国債で、インフレに強い金融商品だ。ただ、物価の動き次第では投資額が回収できないこともある。仕組みと活用法を紹介しよう。

物価連動国債は、世の中でインフレ予想が広がると注目を集める債券だ。日本ではリーマン危機の起きた2008年以後、新規発行が止まっていたが、デフレ脱却を目指すアベノミクスや日銀の異次元緩和などを背景に、財務省は昨年10月に発行を再開した。

仕組みはやや複雑だが、元金額が物価(生鮮品を除く全国消費者物価指数=コアCPI)の動きに連動して増減するのが最大の特徴だ(図A)。

例えば、額面100万円の同国債を発行価格100万円で購入したとする。コアCPIが1年後に2%上昇したら、元金額も100万円から102万円へと同じ率だけ増える。物価上昇率に応じて変動した元金額を「想定元金額」と呼ぶ。表面利率(年利子率)は償還まで10年間同じだが、想定元金額が増えるため受け取る利子も多くなる。

10年後にCPIが発行時に比べ20%上昇していたら、想定元金額は120万円となり、それが償還金額として返ってくる。

逆に物価が下落した場合には想定元金額は減少し、手にする利子も減る。ただし、昨年発行分からは物価がどれだけ下がっても、償還金額は額面金額(Aの例では100万円)を下回らないという仕組み(フロア)が取り入れられた。

保証は額面金額

要は、インフレになれば償還金額と利子が増え、デフレになっても額面は保証されるという国債だ。一見するとインフレ抵抗力のある魅力的な金融商品に映るが、注意すべき点も多い。

まず個人が知っておきたいのは額面価格と発行価格の違い。金融機関の入札で決まる発行価格は市場のインフレ予想を反映し、物価上昇を予想する人が多いほど値段が高くなる。8日に入札された第19回物価連動国債の発行価格は108円05銭(額面100円)で、10年間で平均1.2%程度の物価上昇率を織り込んだ水準だった。

このとき、投資家は額面価格より高い値段で同国債を購入するので、償還まで10年保有した場合、物価上昇率によっては投資額を回収できないこともある。

例えば、第19回債を発行時に額面100万円分購入したときの投資額は108万500円になるが、今後、物価が全く上がらなければ10年間に受け取る利子と償還金額の合計は101万円となり、収支は約7万円の損失となる(表B)。「フロア」が保証するのは額面額で、投資額(元本)が必ず返ってくるのではない点に注意したい。

一方、政府や日銀が言うように今後、物価が安定的に2%上昇すれば、約15万円の利益になる。大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストの試算によると、第19回債の場合、10年保有で収支トントンになる今後10年の物価上昇率は、年平均0.7%という。

変動金利型も考慮

三菱UFJ信託銀行の西川圭助インデックス戦略運用部チーフファンドマネージャーは「物価連動国債はインフレ時には有利だが、長期金利の上昇には効果がない」と指摘する。

多くの人はインフレといえば景気回復に伴い物価と金利が同時に上がる状態を想像するだろう。しかし実際には、「インフレなき金利上昇」もあり得る。景気の足取りが鈍いまま、国の財政不安などを背景に国債価格が下落(長期金利が上昇)する場合などだ。物価連動国債は想定元金額が増えず、長期金利の上昇で債券価格が下がるという二重のダメージを受ける。

金利上昇に備えたいなら、同じ国債でも利率が長期金利に連動する個人向け国債(10年変動金利型)が有効だ。どの商品が有利かは時々の環境で変わるので(表C)、インフレ対策として「両方持つという方法もある」(新美隆宏・ニッセイ基礎研究所主任研究員)。

財務省は、「個人にも物価連動国債を持ってほしいが、金融機関が個人に販売するかは各社の経営判断」(国債企画課)という。商品説明の難しさなどから、積極的に個人に販売する金融機関が現れるかは不透明だ。

買いやすさや情報量などを考えると、信託報酬などはかかっても同国債で運用する投資信託を選ぶ手もある。物価連動国債の発行残高は現在、約5兆円と国債全体の1%に満たない。

政府・日銀が目標とする2%の物価上昇は、「債券市場では実現に懐疑的な見方が大半」(大和の小野木氏)。個人がインフレ対策を急ぐ必要はないかもしれないが、先のことは誰もわからない。みずほ投信投資顧問で物価連動国債ファンドを運用する西岡大貴シニアファンドマネジャーは「資産の一部をインフレへの保険に充てるのが望ましい」と話していた。(編集委員 北沢千秋)

[日本経済新聞朝刊2014年10月15日付]

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