意外に知らない「遮熱」と「断熱」の違い
冬に備える家づくり(2)

──断熱のほかに遮熱という言葉をよく聞きます。断熱と遮熱とはどう違うのですか。
断熱は連載1回目で説明したように、壁の内部を伝わっていく熱の量を小さくすることです。それに対して遮熱は、日射を吸収しないように反射することや、日射を吸収した結果、温度の高くなった面から出る長波長放射(人が熱を感じる放射のこと、前回参照)が室内に入らないようにすることを意味します(図1)。

垂直の不透明の壁であれば、断熱性は遮熱性を兼ねます。なぜなら、光を透過しない材料では、光は必ず熱になって伝わるので、断熱性があれば伝わってこないのです(図2)。

つまり、床・壁・天井では、冬に熱を逃がさないための断熱が、夏には熱を入れないための遮熱に効果を発揮します。
──では、屋根などに断熱材の代わりに遮熱塗料を塗るのは…。
塗料の効果はあくまでも「従」です。何かの事情で断熱材をあまり厚くできない場合に断熱材と遮熱塗料を組み合わせれば、それなりの効果はあるでしょう。注意してほしいのは、遮熱塗料には冬のための断熱性はないことです。
──ガラス窓の場合はどうですか。
光を通す開口部(前ページ図2右)は、床・壁・天井とは対策が全く異なります。
日射のない夜間については一般の壁と同様に考えて、ガラスを複層にするなどの方法を用いますが、夏の昼間の日射のことを考えると、庇(ひさし)や窓の外側での日除けを用いた「遮熱」がとても重要になります。
このとき、日除けを「窓の外」に設けないと、十分な遮熱効果を発揮しません。
よしずとカーテンの違い
──そういえば、夏に窓の外によしずをかけたりすることが効果的だとよく聞きます。窓の内側にブラインドやカーテンをつけるのとではどう違うのですか。
ガラスは長波長放射を通しません。したがって、ガラスよりも室内側にある物体に日射が吸収され温められた結果、放出される長波長放射は、ほとんどすべて室内にとどまります。
冬であれば、ガラスの内側にカーテンを引いても、日差しで温められたカーテンから室内に放射が出て、暖かく過ごせますよね。けれども、同じように夏にカーテンを引いていたらどうなるでしょうか。
──想像するだけで汗が出てきそうです。
例えば、夏に室内側にかけたブラインドは、表面温度が低くても35℃ぐらい、高い場合には38℃ぐらいまで上がります。床暖房のちょうどよい表面温度がせいぜい26~28℃ですから、それより10℃近くも高い。その放射が室内に放出されたらたまりません。
これに対して、室外側に日除けをつければ、ガラスは長波長放射を透過させませんから、室内が暑くなりにくくなるのです(図3)。これが「遮熱」ということです。

庇で熱取得率はぐんと下がる
──開口部に日射熱取得率という指標がありますが、これはどういうものですか。
日射熱取得率(または日射侵入率、η: イータ値)とは、ガラスに当たった日射を1としたとき、室内にどのぐらい侵入するかを示す数値です。数値が小さいほど日射に起因する熱取得が小さくなり、夏季の冷房負荷は小さくなります。
日射熱取得は3つの要素から成ります。ひとつは光、すなわち「透過日射」。残る2つは熱で、ガラスや壁・床面、天井が日射を吸収した結果放出される「長波長放射」と、これらの面に触れている空気に伝わってくる熱「対流」です。日射熱取得率にはこの3つの成分が考慮されています。
──日除けを内側につけるのと外側につけるのとでは、日射熱取得率はどのくらい違うのでしょうか。
日除けのない普通の単板ガラスで0.85ぐらい、複層ガラスだと0.75ぐらいで、日射熱取得に関しては単板でも複層でもさほど大きな差はありません。
ブラインドを室内側に付けた場合、羽根板の色にもよりますが、せいぜい0.6というところです。それが、窓の外に日除けを付けると0.1~0.3と、ぐんと小さくすることができます(図4)。

(書籍『建てる前に読む 家づくりの基礎知識』の記事を基に再構成)