2020年、東京が「木造ビルの森」に 驚愕の新工法 - 日本経済新聞
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2020年、東京が「木造ビルの森」に 驚愕の新工法

日経エコロジー編集部 藤田香

2020年の東京五輪開催時には、日本の都市はコンクリートジャングルから木造ビルが林立する木の街に姿を変えているかもしれない。最近、都市部に木造の商業ビルや店舗、マンションの建設が相次いでおり、五輪が国産材の活用にさらなる追い風を送っているからだ。

首都圏で木造の商業ビルや店舗が相次ぎオープン

昨年横浜市にオープンした商業施設「サウスウッド」は大型商業施設としては初の木造4階建てのビルだ。都内の銀座2丁目には木造5階建ての店舗兼集合住宅が、文京区には木造3階建ての飲食店が出現した。

国は現在28%の木材自給率を20年までに50%に引き上げる目標を掲げており、五輪開催をそのきっかけにしたいと考えている。

安倍晋三首相は国会答弁で、東京オリンピック・パラリンピックの主要施設の整備に木材を利用すれば、国内外の人々に木の良さをアピールする絶好の機会になると熱弁をふるった。農林水産省は、五輪の訪問客を国産材を用いた和の空間で「おもてなし」する方針を打ち出している。

五輪に加え、規制緩和と技術開発も国産材の利用を押し広げている。戦後制定された建築基準法は、耐火面から市街地の大面積や中高層の建物の木造化を規制してきた。実質的に木造は2階建てまでという地域が多い。つまり、都市部の中高層建物に木造は参入できなかったのである。

耐火面での制約、技術開発が解消 4階建て可能に

しかし、木造部材の技術開発がこのハードルを乗り越えるようになった。最も厳しい市街地の防火地域では、「火災時に延焼を抑えて倒壊を防ぐ木」を使い1時間耐火認定を取得すれば、4階建てまでの木造が可能になる。これを満たす部材が現れた。

竹中工務店の「燃エンウッド」がその1つだ。国産カラマツの集成材の周りにモルタルと木の層、その周りにさらに木の層を巡らし、1時間耐火認定を取得した部材だ。横浜市の「サウスウッド」は170本の燃エンウッドを柱と梁(はり)に採用し、ガラス張りの外観から木が見えるデザインにしている。

大阪市の3階建てオフィスビル「大阪木材仲買会館」は燃エンウッドを構造材に使用し、外壁にも木を巡らせて木の美しさを見せている。

鹿島が開発したFRウッドも、国産スギに難燃薬剤を注入して1時間耐火認定を取得した。この部材を使用して、住友林業が東京都文京区の3階建て飲食店を施工した。太い梁と柱を露出させることで、心地よい木の空間を作り出している。

コンクリートや鉄の価格高騰も木材利用後押し

新しい技術も登場した。「直交集成板(CLT)」という技術だ。繊維方向が直交するように積層した集成材で、壁として組み合わせることで高層ビルの建設が可能になる。欧州ではCLTを使った9階建てマンションや大規模商業施設が登場して注目を集めている。

日本政府も大面積で木材を利用できるこのCLTに期待しており、東京五輪を前に普及に道筋を付けたいもようだ。CLTの日本農林規格(JAS)を既に制定し、今後、建築基準法で構造材として用いるための基準作りを進める。

15年度概算要求ではCLTの開発普及に11億円を計上した。

木材需要の拡大を後押しするもう1つの要因は、昨今のコンクリートや鉄の高騰だ。型枠を組み立てる職人の人件費も上昇している。この傾向は五輪まで続くとみる専門家もいる。東京五輪を契機に、国産材の市場が立ち上がり、日本の都市がまさに生まれ変わろうとしている。

[日経産業新聞2014年10月8日付]

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