退職後の健康保険、どうすればおトク?
退職したら健康保険はどうなるの?
働いているときは、健康保険について「特に、気に留めていなかった」という方が多いのではないでしょうか? それもそのはず、入社したら会社が「健康保険被保険者証」(保険証)を用意してくれ、病気になったときは病院の窓口に保険証を出して受診する、くらいだったかもしれませんね。

しかし、会社を辞めると、自分で手続きをしない限り無保険状態になってしまいます。つまり、病院に行っても保険証がないので、100%自費で医療費を支払わねばならないのです。これでは、困ってしまいます。
そうした事態に陥らないためにも、退職後にどのような選択肢があるのか、考えてみましょう。
会社を退職後、すぐに再就職先の健康保険に加入しない限り、次の3つからいずれか一つの選択肢を選ぶことになります。
(2)お住まいの市区町村の国民健康保険に加入する
(3)家族の扶養となり、家族が加入する健康保険の被扶養者になる
ただし、任意継続と被扶養者になるには、それぞれ一定の要件を充たす必要があります。
任意継続をするなら、退職後早急に手続きを
任意継続被保険者になるには、退職前に継続して健康保険の被保険者期間が2カ月以上あることが条件となります。しかも、退職日翌日から20日以内にご自身で手続きをする必要があります。詳しい手続きはお住まいの協会けんぽ支部(健康保険組合加入者の場合は各健康保険組合)で相談してください。
健康保険料は、在籍時は会社が半額を負担してくれていましたが、退職すると会社が負担していた分と合わせて全額自己負担となるため、必然的に保険料は上がってしまいます。
しかし、必ずしも今までの保険料の2倍になる、というわけではありません。退職時の「標準報酬月額」と、加入していた健康保険の「標準報酬月額の平均額」(協会けんぽの場合は28万円)を比較して、いずれか低い方の額で計算した保険料を負担することになります。
任意継続被保険者として加入できる期間は2年間。原則として、保険料は2年間同じ額となります。
被扶養者として認められると
一方、家族に生計を維持されて60歳未満で扶養される場合、将来に向かっての年収が130万円未満であることが大前提です。さらに同居の場合、被保険者の年収の半分未満であることが必要で、別居の場合は被保険者からの仕送り額より少ないことが要件となります。
たとえば、8月に会社を退職し、その年の1月から8月までの収入が150万円あったとします。退職後は無職となった場合、税法上では103万円を超えていますので被扶養者にはなれませんが、健康保険では退職後に無職であれば将来に向かって収入がありませんので、被扶養者になることができます。
ただし、退職後に無収入でも失業給付(正式名称は「基本手当」)を日額3611円超もらっている間は、被扶養者として認められません。
扶養する被保険者が健康保険組合に加入している場合は、組合ごとの規約がありますので、事前に確認されておくとよいでしょう。
被扶養者として認められると、新たな健康保険料の負担はありません。
国民健康保険の負担は?
市区町村の国民健康保険に加入する場合、原則として退職日翌日から14日以内に、退職日の確認できる離職票や健康保険の資格喪失証明書等を窓口に提出し確認を受け、手続きを行います。
国民健康保険料は、前年の収入等をもとに、市区町村ごとに異なる基準で計算をされます。したがって、前年度フルに働いて一定の収入があると、それなりに保険料もかかってくる場合があります。
国民保険と任意継続の保険料、どちらが安くなるかは、その人の状況によって変わってきますが、お住まいの市区町村の健康保険窓口に問い合わせると、本人確認ができれば具体的な保険料額を教えてもらうことができます。そこで保険料の比較をして、どちらに加入するか検討するのも、賢いやり方といえるでしょう。
もうひとつ。解雇や退職勧奨、雇い止めなど、会社都合で退職する場合には、国民健康保険料の軽減措置が受けられる場合があります。この場合、前年の給与所得を100分の30とみなして算定されるため、こうした制度をうまく活用して少しでも負担を減らす方法も検討してみましょう。
こちらもご自身で申請する必要がありますので、お住まいの市区町村の国民健康保険窓口にお問い合わせください。
なお、年金については、会社で加入していた厚生年金(第2号被保険者)から、原則として国民年金(第1号被保険者)に切り替える必要があります。国民年金保険料を支払うのが難しい場合には、保険料免除や納付猶予などの制度もありますので、放置しないようにしましょう。
また、厚生年金や共済組合に加入している配偶者に扶養される20歳以上60歳未満の方を「第3号被保険者」といいますが、第3号被保険者に該当する場合は、配偶者の会社で手続きを行ってもらう必要があります。
お料理もひと手間をかけることで美味しさがアップするように、こうした手続きもひと手間をかけて調べてみることで、ハッピーをもたらしてくれるかもしれませんよ。

社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所等に勤務。平成17年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、【働く女性のためのグレース・プロジェクト】でサロンを主宰。著書に「知らないともらえないお金の話」(実業之日本社)をはじめ、新聞・雑誌、ラジオ等多方面で活躍。
[nikkei WOMAN Online 2014年7月29日付記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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