/

強敵出現? 卓球ロボット、お手並み拝見

 ロボットが人と卓球ラリーをしたり、統率がとれたダンスを披露したりする――。オムロンや村田製作所がユニークなロボットを開発している。それを可能にしたのは、センサーによる計測技術とそれを使ってロボットを制御する技術だ。ロボットが我々の生活に溶け込む近未来の実現に向け、エレクトロニクス業界が一役買いそうだ。

「こんにちは。ラリーを始めましょう」――。卓球台に近づくと、反対側で台をまたぐようにそびえる高さ2.7メートルのロボットが話しかけてきた。7日開幕する家電・IT(情報技術)の国際見本市「CEATEC(シーテック)ジャパン」でオムロンが一般公開する「ラリー継続卓球ロボット」を会場で体験取材した。

打ちやすいところに返球

ラケットを構えてサーブを打ち込むと、3本のアームで操られたラケットが素早く動き、ボールを捉える。こちらが速い球を返すとさすがにボールを追い切れないこともあるが、ラケットに当たればだいたいコート内に返ってくる。しかも、こちらが打ちやすいようなコースに返してくる。こちらも自然とラリーを続けようという意識になり、相手が機械であることを一瞬忘れる。

動作部には食品などを拾い上げる「パラレルリンクロボット」と呼ばれる一般的な産業ロボットを使っている。

卓球ロボットの使命は「人とラリーを続けること」。相手の打ちやすい軌道を瞬時に判断し、返球する。「これからは人と機械が協調する技術が主流になる」と技術・知財本部技術開発センタの川上真司氏は話す。

モニターの下に仕込まれたセンサーが相手の動きを捉える。卓球台のどこにいて、ラケットをどう構えているか。さらに、モニターの左右にある別のセンサーが球の軌道を毎秒約80コマの頻度で3次元で捉える。

軌道を「思考」

ロボットのアームや、先端にあるラケットの向きや角度を制御する計5つのモーターは、「プログラマブルロジックコントローラ(PLC)」と呼ぶ産業用の制御機器で動かす。計測、制御はオムロンの得意技だが、人とのラリーは簡単ではなかった。川上氏は「『思考』という考えを新たに取り入れた」と明かす。

球がロボットに接近してからアームを動かしていたのでは追いつかない。そこで画像センサーから球の位置情報を受け取りながら球の軌道を予測。先回りしてラケットを構え、すばやく打ち返す。軌道予測は球の新たな位置情報が来るたびに更新し、ラケットの位置を修正する。その思考を担うのが「知識情報処理」と呼ぶアルゴリズムだ。

相手が右利きならば右側に、左利きならば左側にと、打ち返しやすい球を返す。相手が子どもで山なりのゆっくりした球を打ってくれば、同じように山なりで返す。こうした返球のための軌道も瞬時に計算する。

村田製作所が発表したロボット「チアリーディング部」(25日午前、東京都渋谷区)

それぞれは最先端技術ではないが、「組み合わせて新たな価値を生み出した」(川上氏)という。機械が単純に人の働きを代替したり、人が機械に合わせたりするのではなく、人と機械が協調するためにはどうすればいいか。計測、制御という既存技術に、思考という概念を組み合わせることで、その解が生まれる将来像を描いている。

ロボットがチアリーダー

高さ36センチの愛嬌(あいきょう)あふれるロボットが玉乗りで絶妙なバランスを保つ。村田製作所の「チアリーディング部」だ。これまで、転倒せずに自転車をこぐ「ムラタセイサク君」や一輪車でバランスをとる「ムラタセイコちゃん」で、自社のジャイロセンサー技術などをわかりやすくアピールしてきた。シーテック会場ではおなじみのこのロボットが今年、ある進化を遂げた。

10体がボーリングのピンのように整列した基本配列から、斜めに整列、S字走行、円形やハート形への整列など協調した動作で次々と動きを変える。自動車にも搭載される超音波と赤外線を使った技術でステージ上の位置をリアルタイムで計測。無線通信で制御システムと交信し、フォーメーションを変える。

この動きを可能にしたのが、京都大学と共同研究した「群制御」と呼ぶ技術だ。美しいフォーメーションを描くのに適切な位置取りや動きを算出し、互いにすれ違う際にもぶつかることなく動くことができる。この技術を使えば、将来は被災地で複数のロボットが協力してがれき撤去などの任務にあたるのも夢ではない。技術・事業開発本部の小島祐一副本部長は「自動車や医療機器などへの幅広い技術応用を探る」と話す。

スマホ世代と家族だんらん

センサー技術を駆使し、家族のコミュニケーションを楽しくするロボットもシーテックで初お披露目になる。

ユカイ工学のコミュニケーションロボット「BOCCO(ボッコ)」(東京都新宿区)

「ガチャッ」。子供がドアを開けて帰宅すると、居間のロボットが反応し、家族にメール送信して子供の帰宅を伝える。「ママ、ただいまー」。ロボットに話しかけると、数分後にロボットの目がピカピカと点滅。「おかえり。おやつは棚の上にあるよ」というママのメッセージが流れだす。

ロボット開発などを手がけるベンチャー企業のユカイ工学(東京・新宿)は、家庭向けのコミュニケーションロボット「BOCCO(ボッコ)」を開発し、2015年春から発売する。ドアの開閉センサーや人感センサーなどの信号を近距離無線で受信し、「Wi-Fi(ワイファイ)」のアクセスポイント経由で、家族のスマートフォン(スマホ)にメールを送信する。センサーとロボット本体のセットで、2万円程度の予定だ。

キッチンに置いておけば、誰かが料理しているのを人感センサーで把握し、家族のスマホに伝える。「昨日は魚だから、今日は肉がいいな」。家族の何気ないやりとりが、ボッコのメールを起点に始まる。電話だと急に受けられないこともあるが、音声メッセージ付きのメールなら、手が空いたときに確認し、返答メッセージも吹き込める。

「何気ない会話のやりとりを助けてくれる『一緒に暮らせるロボット』を作りたかった」と、青木俊介代表は語る。

インテリアデザインの経験のあるデザイナーが設計を担当。子供が親しみやすく、家庭で違和感が無いフォルムを目指した。赤い鼻を回すとスピーカーの音量調整ができ、センサーの信号を受ける際に首をかしげるなど遊び心もちりばめた。

「センサーの価格低下が、こうした製品企画を可能にした」と青木代表は話す。試作には3D(3次元)プリンターも駆使した。ものづくりベンチャーらしいロボットの提案だ。今後、センサーの種類を増やして、用途も広げていく考えだ。

システム開発のレイトロン(大阪市)は高齢者向けの会話ロボット「チャピット」を展示する。服薬の時間になると「お薬の時間だよ」などと話す機能を持つほか、利用者が「テレビをつけて」と話しかければリモコンの代わりとしても使える。同社は2015年に実用化し、介護施設などの顧客を開拓する。

レイトロンはシャープのお掃除ロボットにシステムを納入するなど、音声認識の技術を得意とする。チャピットはマイクから離れた場所の声でも判別できる。

センサーや制御技術を駆使し、ロボットと人が共存する世界が実現しそうだ。

(京都支社 太田順尚、蓬田宏樹、大西綾)

[日経産業新聞10月7日付記事を転載]

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン