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ユーザーの「今」を狙え 広告戦略の精度向上

(徳力基彦)

日本の広告・マーケティング業界で最大級のイベント「アドテック東京2014」が9月中旬に開かれた。筆者自身もスピーカーの1人として参加したので、今年の印象を振り返りたい。最も注目されたキーワードを挙げるなら、やはり「モーメント」になるだろう。

キーノート(基調講演)スピーカーとして来日した米ツイッターのグローバルブランド責任者、メリッサ・バーンズ氏をはじめ複数の講演者がこのキーワードに言及したこともあり、その後に展開されたセッションでもたびたび使われた。

モーメントを直訳すると「瞬間」という意味となる。ユーザーの重要な瞬間(モーメント)に企業がいかに関わっていくべきかが現在のマーケティングでは問われているテーマだ。

従来のマス・マーケティングでは、企業は事前に計画されたマーケティング計画や広告プランに基づき、テレビCMや新聞広告などで一方通行の広告メッセージを消費者に伝えるというスタイルが中心だった。この場合、ユーザーがその広告を見る際にどういう状態にあるか、どういうモーメントにあるか、ということはほとんど議論にならなかった。当然、消費者はテレビを見ているか、新聞を見ているか、というモーメントにあるのが大前提であり、それ以外の細かい情報を知ることは難しかったからだ。

しかし、この前提が、スマートフォン(スマホ)やソーシャルメディアの普及とビッグデータ活用の進化により、根底から変わろうとしている。

 例えば、今なら交流サイト(SNS)の発言を解析し、「暇だ」と発言している人にタイミングよく映画やゲームの情報を紹介することが可能だ。スマホの位置情報を活用することで、駅の周辺でランチの場所を探している人に向けて自分の店のクーポンを送ることもできる。多くの人が毎日何十回と取り出して眺めるスマホの画面上に、モーメントを意識した内容を表示できれば、従来のマス広告とは比べものにならない精度でユーザーへ情報を提供できる可能性が見えてきた。

こうしたユーザーのモーメントに応じて、迅速に柔軟なマーケティングをするアプローチは「リアルタイム・マーケティング」と呼ばれることも多い。従来のマス・マーケティングなら、数カ月単位や年単位でマーケティングを計画することが普通だった。リアルタイムマーケティングでは、その瞬間に最適なマーケティングを迅速に判断していく必要がある。

例えば日本コカ・コーラ。サッカーのワールドカップ(W杯)の試合中にコカ・コーラのネームボトルを使って日本代表の選手のゴールシーンを再現した動画を投稿するなど、リアルタイム・マーケティングに取り組んで話題を集めていた。また、花王は梅雨入りする時期に合わせて都道府県別の広告動画を作成、実際の梅雨入りのタイミングで地域別にオンライン動画広告を展開することで高い成果を出すことに成功したという。

もちろん、こうした取り組みは従来のテレビCMなどの広告を大量投下するマス・マーケティングに比べて全く異なる手間がかかるし、まだまだ実験的な取り組みが中心的である点には注意が必要だ。

ただ、モーメントに適切に関われるなら従来のマス・マーケティングとは全く異なった企業とユーザーの関係性をつくり上げ、効率の高いマーケティングができる可能性も高まる。皆さんの顧客にとって大事な「モーメント」は何か、一度考えてみていただきたい。

(アジャイルメディア・ネットワーク取締役)

〔日経MJ2014年10月3日付〕

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