/

分配金より再投資 海外REIT投信で賢く殖やす

 米国など海外の数多くの不動産投資信託(REIT)に分散投資する「海外REIT投信」が急拡大している。分配金利回りの高さを売り物に銀行や証券会社が販売に積極的で、個人投資家の間で人気が広がっている。賢い選び方や注意点を探った。

REITはオフィスビルや住宅などに投資し、賃料を原資に配当を出す投資商品。その中から運用会社が銘柄を選び、複数組み入れているのがREIT投信だ(図A)。

中でも人気が高いのが、米国など海外市場で運用する「海外REIT投信」。純資産残高は約7兆3000億円(グラフB)と、リーマン・ショック直後の9倍に拡大。長年、日本の投信市場の主役だった先進国債券型に肩を並べつつある。

世界全体のREIT市場の規模は、先進国債券の20分の1程度。そこにREIT投信を通じて日本の個人マネーが大量に流入。「相場を不安定にしかねない」と米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルが昨年指摘したほどだ。

アクティブ型、市場平均下回る

海外REIT投信の中で圧倒的に「売れ筋」なのは、プロが銘柄を選別して平均的な成績を上回ることを目指すアクティブ(積極運用)型だ。しかし専門家の間では、運用実態について課題を指摘する声も上がる。

プロが銘柄を選んでいる割に運用成績が振るわないからだ。アクティブ型の多くが、市場の平均値を表すREIT指数を「かなり下回っている」(投信アナリストの吉井崇裕氏)。表Cに主な海外REIT投信の基準価格の騰落率などを示した。

世界各国に投資するタイプで見ると、アクティブ型の基準価格はここ3年間で8割前後上昇している。値上がりはしたものの、同じ期間に代表的な指数が100.9%上昇したのに比べれば、大きく見劣りする。

理由は運用コストの高さなどだ。投資家が負担する信託報酬はアクティブ型で約1.6%。毎日資産から差し引かれ、基準価格を押し下げる要因になる。その分を運用の腕で挽回できればいいがなかなか難しい。

これは他の投信にも共通するが、特にREITは「銘柄数が株式に比べて少なく、選別による効果を上げにくい」(投信評価会社モーニングスターの吉田誠・調査分析部長)。米国では、指数に連動するよう機械的に銘柄を組み込むインデックス型へ資金が急速にシフトしている。相対的に運用成績がいいからだ。

日本でアクティブ型が人気なのは毎月分配金を多く払っていることが大きい。分配金を基準価格で割った率に相当する分配金利回りで見て20%を超える商品もある。これは組み入れた銘柄から安定的に得られる配当金(利回りは4~5%前後)を大きく上回る。

その差は、値上がりした銘柄を売却するなどして捻出してきた。ここ数年はREIT相場が大幅に上昇するなど運用環境が良かった。元本を取り崩して分配金に回した時期もある。分配金を多く払っているからといって、プロの運用力が優れているとは限らないことを覚えておきたい。

そして注意したいのは、分配金を払えば払うほど、運用効率にはマイナスに働くということだ。分配金を払わず、代わりに内部にため込んで運用し続けた場合、相場の上昇局面で資産は雪だるま式に増える。いわゆる「複利効果」だ。

それを表すのがグラフDだ。代表的な商品を例に、09年3月末時点の基準価格を100として、その後の伸びを指数化した。実際に払った分配金を基準価格に足し合わせると今年8月末で237。一方、「分配金をまったく払わなかったと仮定した場合、基準価格は323に拡大していた計算」(QUICK・QBRの高瀬浩主席研究員)

両者の差が複利効果に相当する。海外REIT投信は分配金が多額になる分、複利効果が失われる度合いが大きくなりやすい。「長期的に資産を増やすことを重視するなら、分配金を払わないか、再投資できる商品を選ぶことが大事」と吉井氏は助言する。

日本でも最近、インデックス型の品ぞろえが増えてきた(表C)。信託報酬は1%未満と安く、分配金は払わないか、払ってもごく低めという商品が多い。過去3年間の基準価格の上昇率は94%前後。低コストなどの効果で、アクティブ型商品に比べると資産の増え方が大きい。吉井氏は「海外REITはインデックス型を基本に考えるのがおすすめ」という。

株式と同程度のリスク

もうひとつREITで知っておきたいのは価格変動リスクだ。安定した賃料収入を源泉とするためREITは株式に比べて相場が振れにくいと説明されがちだが、「歴史的に見てリスクは株式とほぼ同じ水準」(アーク東短オルタナティブの鈴木英典取締役)だ。

REITは借入金が多い分、金利が上昇する局面では利払い負担増への懸念から相場は下がりやすい。吉田氏は「海外REIT投信の運用比率が高くなりすぎていないか、見直すことも必要」と指摘している。(編集委員 田村正之)

[日本経済新聞朝刊2014年10月1日付]

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン