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グーグルの自己革新 検索される前に情報提示

藤村厚夫・スマートニュース執行役員

インターネットを使う者なら誰もが慣れ親しんでいる検索エンジン。日常的に利用していることもあって、変化が生じていても見落としがちだ。だが検索エンジンは今、その役割を静かながら大きく変貌させつつある。

変化をけん引するのはスマートフォン(スマホ)などモバイル機器の普及だ。これまで我々は、何か知らないことや場所があるとパソコンで検索したうえで行動に移していた。レストランの予約は数日前に口コミサイトを調べた後で、各店舗のウェブサイトを見比べ、予約する。場所も事前にパソコン上の地図サービスで確認して訪れる。

モバイル機器の普及はこうした行動を著しく変えた。レストラン検索では、自分がいる場所に近い、今から入れる店を探すようになった。買い物では商品を選びながら店舗内でリアルタイムに関連情報を検索している。

こうなると、検索エンジンに期待される役割は多くの情報を網羅して多様な検索結果を提供することではなくなる。消費者の迅速な意思決定のために、むしろ回答を絞り込む役割が求められる。

もう一つ見逃せない変化がある。そもそも検索は、消費者が行動に移すまでの通過地点であり、決して目的地ではなかったはず。その前提が変わりつつある。

 グーグルが検索結果ページに「ナレッジグラフ」なるものを表示し始めたことをご存じだろうか。たとえば思想家の「吉本隆明」の名前で検索をしてみる。パソコン版では検索結果ページの右半分に、モバイルではページ上部に同氏にまつわる写真、執筆書籍、概要などが示される。ユーザーが求めるのが多彩な情報よりも簡単な概要だけだとすれば、これで十分。「ウィキペディア」を見る必要もなくなった。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年から現職。東京都出身、60歳。

このような動きを筆者は「検索エンジンのメディア化」と定義したい。最終地点への道のりを示すのではなく、最終地点である「コンテンツ」を直接、提示しているからだ。言い換えれば、グーグルはユーザーを単に通過させず、その場にとどまるよう試みている。

このメディア化はグーグルにとって、大きな自己革新であることが分かる。同社の収益の柱は検索連動型の広告だ。それは検索回数が多ければ多いほど収入を増大する。だがメディア化が進めばユーザーは検索の回数を減らす。収益モデルの変更が不可欠になるのだ。

検索エンジンの先を見すえた取り組みがモバイル用アプリ「グーグルナウ」だ。単に音声を活用する検索エンジンではない。アプリを使う端末で常にユーザーの行動を学習し、検索される前に必要になりそうな情報を提示しようとする。

例えば、毎朝の通勤行動を学習し、「急がないといつもの電車に間に合いません」と知らせたりする。検索されなければ情報を伝えようがなかった検索エンジンからの劇的な変化だ。これもまたユーザーが情報収集で単に通過するだけの地位から脱する試みといえる。

スマホよりも小さいウエアラブル端末が普及すれば、ユーザーはますます検索しなくなる。ニーズを見越して情報を自動的に繰り出していく。これが検索エンジンの未来となる。そしてこの変化の影響を大きく受けるのはニュースメディアかもしれない。その兆候は徐々に見え始めている。

〔日経MJ2014年9月29日付〕

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