過熱する円売り、FOMC「肩透かし」に注意

2014/9/11 10:13
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「(9月16~17日の)米連邦公開市場委員会(FOMC)は、近代ファイナンスの歴史に残るイベントになるかもしれない」。大仰なコメントだが、語る米人アナリストは至極真面目である。それほどに早期利上げ予測が日に日に強まり、ドル買いが過熱に近い状態に達している。

ニューヨーク証券取引所

ニューヨーク証券取引所

売られる通貨もユーロから火がつき、ユーロ売りが一巡すると、円が売りのターゲットになった。そしてスコットランドの独立選挙懸念からポンド売りも加速中だ。

ドル高の背景となっているFOMCに関しては、もはや「英文解釈相場」ともいえるような様相だ。FOMC声明文で「量的緩和終了から利上げまでの時期」についての記述から「相当期間」の文言が抜けるとの観測。さらにイエレン氏が重視する労働市場の「たるみ」について、これまでより弱いトーンの形容詞・副詞が使われるのではないか、との予測。形容詞一つで相場が大きく振れることが予想される。

気になるのは、市場参加者の多くが「早期利上げ」の同方向に傾いていること。もしイエレン氏が市場予測の「これまでよりタカ派的なトーン」を表さない場合、どうなるのか。

外為市場で急速に蓄積している円売りポジションは、一斉に買い手じまいに走ることになる。「劇場のシンドローム」といわれる現象で、満員の劇場で観客が狭い出口に一斉に殺到するような状況を指す。

その実例が2013年9月のFOMCで起こっている。たまたま筆者は9月16日にNY証券取引所のフロアにいたが、その時点では「テーパリング決定」予測が満ちあふれていた。しかし身構えていた市場に、バーナンキ氏は肩透かしを食わせた。テーパリングは見送られたのだ。市場は大混乱。大量のストップロス注文が発動され、円は99円台から97円台まで急反発した。

その現場での記憶が生々しく残る筆者の視点では、「今年もか」との既視感が強い。そして、今年も9月16~17日に向けてNY出張に出ているところだ。

「近代ファイナンスの歴史に残る」か否かは別にして、マーケットで今年最大のイベントになる可能性は強い。

なお、今回のFOMCでは「出口戦略」の手法についても議論されるとみられる。市場へのショックを最低限に抑えつつ、膨張した米連邦準備理事会(FRB)のバランスシートをいかに減らしていくのか。「金融の神様」といわれたグリーンスパン元FRB議長でさえ10日のテレビインタビューで「誰もが経験したことがない事象であり、どうなるのか現時点では分かりかねる」と述べている。さらに「FRBの民間銀行口座に滞留している巨額のマネーが、かりに解き放たれ市中に出回ったとき、どうなるのか。私は懸念している」とも語っている。

今の市場は「壮大な実験」の試験管の中にあることを改めて感じた。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。11年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。
1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく、独立系の立場からポジショントーク無しで、金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。
ブログは「豊島逸夫の手帖」http://www.mmc.co.jp/gold/market/toshima_t/index.html
ツイッター(http://mobile.twitter.com/search?q=jefftoshima)ではリアルタイムのマーケット情報に加えスキー、食べ物など趣味の呟きも。日経マネーでは「現場発国際経済の見方」を連載中。日本経済新聞出版社や日経BP社から著書出版。業務窓口は jefftoshima@hyper.ocn.ne.jp

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