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各地域にグローバルメディア 活性化の手立てに

石黒不二代・ネットイヤーグループ社長

経済財政諮問会議の専門調査会「選択する未来」は、50年後の日本の人口動態などが経済成長に及ぼす影響とその対応策を議論している。その主要議題のひとつが地方だ。2060年までに地方で4割弱の人口減少が予測され、40年には4分の1以上の自治体の行政機能の発揮が困難になるとの分析もある。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

地方を考えるうえでの問題は、東京への一極集中だ。地方をいくら宣伝しても、首都の魅力は捨てがたいという意見が強い。だが米国には個性的な地方都市がいくつもある。首都ワシントン以外にも、大都会のニューヨーク、ハリウッドを擁するロサンゼルス、IT(情報技術)のシリコンバレーなど、様々な顔を持つ地方に人が集まる。それらに比べると、日本の地方都市の個性はどうも弱いように思える。

地方が個性を打ち出すために使うメディアは多様だ。しかし、見慣れたタレントを使い、マスプロモーションをかけるだけでは差異化は図れない。そこで、地域の個性を活性化し、外貨を稼ぐまでに成長させるため注目を集めているのが「地域共創」マーケティングだ。デジタル技術をフル活用し、地元の人たちと一緒に地域産業活性化に貢献するのが狙いだ。

6次産業化という言葉がある。1次産業、2次産業、3次産業を一貫する産業変革のことだ。「道の駅」も6次産業化の鍵となる。農協しか流通経路がなかった農家に新たな販売チャネルと農家自身の値付けを提供し、消費者との距離を縮めることに成功した。

だが、地場産業自体がブランドプロモーションをやれるメディアを持つ例は少ない。企業がウェブサイトなどの自社メディアを保有するように、地域も自前のデジタルメディアや「フェイスブックページ」などのソーシャルメディアを持つ。それが「地域共創」メディアである。

地域共創メディアの事例として注目されてきている「沖縄クリップ」は、沖縄セルラー電話の地域活性化を目標にした新規事業だ。これに参加する地元在住のライターやカメラマンの8割はIターンの移住者だ。

今後は記事広告などのメディア事業や、工芸品を販売するマーケットプレイスなどの事業にも挑戦する。個々の事業者だけではできないことでも、場を提供することで地元の店舗に大きな可能性を提供できる。

ユーザーとの共創で、地域の新しい名物を開発する取り組みも始まった。玉ねぎが名産の淡路島では、「道の駅うずしお」が営む「淡路島オニオンキッチン」が昨年「全国ご当地バーガーグランプリ」で日本一の座を獲得した。今年も連覇を目指して、ユーザー参加型の商品開発を始めた。主催は淡路島の活性化に燃える地元の若手で、その中心にはやはり大都市圏で経験をつんだUターン組がいるという。

最近、発信を始めた地域共創メディア「瀬戸内ファインダー」は、瀬戸内ブランド推進連合(広島が幹事、兵庫、岡山、山口、徳島、香川、愛媛の7つの県の合同体)が主催者だ。県の枠組みを超え「瀬戸内」という地域ブランドの価値を高めて、内外からの来訪を高めることが目標だ。

実効性のある観光PRをするには、やはり自治体の境界線ではなく、旅行者目線の境界線を優先する必要がある。九州、東北、信州などの地域でも今後、同様の動きが加速するのではないか。

今までの地方在住者は、直接世界に情報発信する手段を持っていなかった。だが、自分たちが英語を話せなくても、地域保有のグローバルメディアがあれば、一気にその敷居が下がる。

地元の企業や自治体などを中心に共創体制を作り、地域の有能な人材を巻き込めば、地域産業をグローバルに拡大するチャンスが生まれる。デジタルメディアのインパクトは、地域改革にも広がり始めている。

[日経産業新聞2014年9月11日付]

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