教育費づくり、保険・貯蓄・投信うまく使うコツ - 日本経済新聞
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教育費づくり、保険・貯蓄・投信うまく使うコツ

 暑さが和らいだ9月の夕暮れ。事務所で鯛吉が帰り支度をしていると、新衣紗が缶ジュースを持って入ってきました。「お疲れさまの差し入れ」なのだそうです。

たいきち いやにサービスがよくて不安だな。代わりに何か教えてほしいとか?

にいさ いいカンね。実はいとこに赤ちゃんが生まれるけど、もう教育資金を心配してるの。鯛吉さんに教育資金作りの方法を聞いてほしいって頼まれたの。

たいきち ジュースは見返りか。とにかく大事なのは計画的な準備。よく使われるのはやはり学資保険かな。

にいさ 学資保険か。どんな商品かよく知らないわ。

たいきち 子どもが小さい時から毎月保険料を払い、大学入学時などに教育資金が支払われる仕組みだよ。多くの学資保険では、親が亡くなるとそれ以降の保険料払い込みを免除してくれる。

にいさ いくら払っていくらもらえるの?

たいきち 日本生命保険の「ニッセイ学資保険」を例にみてみよう。30歳男性が子どもの0歳時に加入して毎月1万2620円を18年払い込み、一番お金がかかる大学入学時に100万円、その後は50万円ずつ受け取る。合計の払込保険料は272万5920円で受取総額は300万円になる。受取総額を支払保険料総額で割った数字を「返戻(へんれい)率」と呼んで、この場合は110%だね。

にいさ 返戻率はどこの会社も同じくらいなの?

たいきち 会社によって差がある。日本生命やソニー生命保険、富国生命保険などの学資保険は比較的返戻率が高いと言われる。学資保険選びでは返戻率を最も重視する人が多いけど、返戻率の比較には注意が必要なんだ。

にいさ どういうこと?

たいきち 例えばニッセイ学資保険では、19歳以降の受け取りをなくし18歳で一括受け取りにすることもできる。保険会社は運用できる期間が短くなるので、一括受け取りでもらえる金額は先ほどの例だと、300万円から295万9000円に減り、返戻率は108.5%になる。

にいさ なるほど。

たいきち 払込期間が18年でなく10年の商品もあり、毎月の支払保険料は多くなる。保険会社は早めにたくさん運用できるから返戻率を高くしやすい。ファイナンシャルプランナー(FP)の和泉昭子さんは「受取時期が早いほど返戻率は低くなりやすく、払込期間が短いほど高くなりやすいことを頭に入れて比べるのが大事」と話すよ。

にいさ ほかには?

たいきち 「低解約返戻金型終身保険」というのがある。一般に保険料の払込期間中は解約時の返戻金が通常より低い代わりに、その期間を過ぎたら増える。増えた後で解約すれば教育資金に使える。

にいさ 具体的には?

たいきち 例えばAIG富士生命保険の低解約返戻金型終身保険「E―終身」に30歳男性が保険金300万円で加入し、18年間払い込んだ後で返戻金が増えてから解約すると、払込保険料195万6300円強に対し205万4000円強がもらえる。実質利回りは年約0.54%だ。

にいさ さっきの学資保険と比べると?

たいきち ニッセイの18歳一括受け取りの場合の返戻率を年あたりの実質利回りに直すと約0.9%だった。

にいさ やっぱり学資保険で、返戻率の高い商品がお得なの?

たいきち 学資保険で返戻率が高いタイプは親が亡くなったら保険料の払い込みが不要になるだけ。でも低解約返戻金型終身は親が亡くなればすぐに保険金300万円が全額もらえる。保障だけならこちらの方が大きい。総合的に考えて選びたいね。

にいさ 保険は便利ね。

たいきち ただし学資保険も低解約返戻金型終身保険も早い時期に解約すると、もらえるお金が支払保険料より低くなりがちなことは要注意だよ。

にいさ いったん始めたら払い続けられる保険料にしておくのが大事なのね。

たいきち 保険を使わず預貯金でためる手ももちろんある。メガバンクの金利は現在はゼロに近いけど、ネット銀行なら金利はやや高い。定期預金の積み立てができないネット銀行もあるけれど、ソニー銀行や楽天銀行などはできるよ。

にいさ 金利は期間の長い方が高いはずね。1年定期より例えば3年定期の積み立てを選んだ方がいいの?

たいきち 今は金利は1年も3年もわずかな差。和泉さんは「金利があがったらすぐに切り替えられるように今なら1年物定期を選んだ方がいい」と話しているよ。

にいさ 投資信託や株式で大きくドカンともうければそれですむ気もするけど。

たいきち 君も藤志郎さんの血が流れているね。教育資金は基本的には元本割れしない方法で運用したい。だけど国内債券の投信などのように比較的リスクが少ないものもある。債券は市場金利が上がると価格が下がるので、国内債券型投信は金利上昇局面で一時的に値下がりする可能性はある。でも株式より値動きは小さく、過去の利回りは預貯金を上回る時期が多かった。資金の一部に組み入れる手はあるかもしれないね。

「保険、中途解約すると元本割れのリスク」 ファイナンシャルプランナー 小屋洋一さん


 学資保険や低解約返戻金型終身保険など保険商品で注意したいのは、早い時期に中途解約すれば元本割れすること。しかし逆に、これが継続して教育資金を積み立てる動機にもなる。性格的に積み立てが続けにくい人に向いているかもしれない。ただし一度契約したら、現在の低金利のまま20年近く運用を固定してしまう。今後金利が上がってもその恩恵は受けられない。
 資金計画は教育を別枠にせず住宅、老後資金なども含めて全体で考えてもいい。運用も預貯金など元本確保型だけではなく、資産の一部で国内外の株と債券での分散投資もする。長期では元本確保型より大きな収益が期待できる場合があるからだ。資産全体で考えるので、教育資金が必要になった時期に分散投資の部分が値上がりしていればそれを使い、値下がりしていれば預貯金をあてることも可能だ。

[日本経済新聞朝刊2014年9月6日付]

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