まるで「走るスマホ」 テスラのスポーツEVを試乗
編集委員 大西康之

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2014/9/7 7:00
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フル充電したときの航続距離は最大500キロメートル以上で、かかる電気代は1000円。日本の価格は823万円からだが、補助金対象のため実際の負担はもっと安くなる。まだ「お金持ちの車」ではあるが、コストパフォーマンスは普及してもおかしくないレベルに達しつつある。

だが最も驚いたのはクルマを降りてボンネットを開けたときだった。ガソリン車ならエンジンがあるはずの場所が空洞なのだ。モデルSの驚異的な走りを支えているのは後輪のそばに配されたサッカーボールより一回り小さいモーターであり、エンジンも排気管もガソリンタンクもない。

■ホンハイに製造を打診?

モデルSのモーターを構成する部品点数は約100個。シリンダー、カムシャフトなど1万~3万点の部品からなるガソリンエンジンに比べ、はるかに単純な構造だ。

そこから想像されるのは驚くべき生産工程の簡略化だ。電池とモーターを買ってきて、好みの形にデザインしたボディーを乗せればできあがり。自動車メーカーの生命線とされる「擦り合わせ技術」が無用になるかもしれない。

業界ではこんな噂話がまことしやかにささやかれている。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が、台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)の郭台銘(テリー・ゴー)董事長にこう言った。「iPhoneの次はウチのクルマを作らないか」。郭董事長はにやりと笑った。

EVの生産工程はガソリン車やハイブリッド車に比べ格段にシンプルだ。よりデジタル製品に近い。アップルのiPhoneなど電子機器を年間100億個の単位で組み立ててきたホンハイなら、EVをとんでもない価格で作ってみせるかもしれない。

今はまだ電池の値段が高く、ガソリン車並みの量産は難しいが、テスラがパナソニックなどの協力を得て作る巨大電池工場「ギガファクトリー」が稼働すれば、電池の価格は大きく下がるだろう。ホンハイがEVを作るかどうかはさておき、自動車産業の参入障壁が一気に下がるのは間違いない。

4日、テスラのギガファクトリーの立地場所がネバダ州に決まったとのニュースが流れた。「世界からガソリンスタンドをなくしたい」というマスクCEOの野望は、もはや荒唐無稽とは言えないのかもしれない。

[日経産業新聞2014年9月5日付]

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