「サムスンショック」は本当か 数字が示す真の課題
金子智朗 ブライトワイズコンサルティング合同会社代表

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2014/9/18 7:00
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日経テクノロジーオンライン
 サムスンショック――。2014年7月31日に韓国サムスン電子が発表した同年4~6月期の業績は、大きな注目を集めた。四半期としては、9年ぶりの減収減益となったからだ。多くのメディアはこのサムスン電子の業績を「業績悪化」や「業績不振」と伝え、一部では「サムスンショック」という言葉まで飛び出した。ただし、こうしたセンセーショナルな言葉だけでは真実は伝わらない。ここでは、公表されたデータに基づいて、サムスン電子の財務を分析する。

企業の財務分析にはいくつかの切り口がある。その代表的な切り口は「収益性」と「安全性」だ。改めてその意味を明確にしておこう。

収益性とは、企業の「もうける力」のことをいう。具体的には利益の程度を問題にする切り口だ。安全性とは、「倒産のしにくさ」を意味する。倒産とはキャッシュがなくなる現象である。従って、安全性とは具体的にはキャッシュの支払い能力を問題にする切り口である。

■収益性も安全性も「問題なし」

図1 サムスン電子の売上高営業利益率の推移(図:筆者が作成)

図1 サムスン電子の売上高営業利益率の推移(図:筆者が作成)

まずは収益性について見てみよう。収益性は利益の程度なので、ここでは売上高営業利益率を見てみる。

図1は、サムスン電子の売上高営業利益率をパナソニックやシャープと比較したものだ。問題視されている直近の2014年4~6月期の売上高営業利益率は確かに下降傾向にあるが、それでも依然として非常に高い水準にある。パナソニックやシャープとは比べものにならないほどの高収益性を保っている。

売上高営業利益率は10%を超えれば相当高い部類に入る。サムスン電子の収益性は明らかに高い。

■営業利益はパナソニックの約9倍

続いて、3社の売上高と営業利益の絶対額を示す(図2)。営業利益の絶対額もサムスン電子はパナソニックやシャープに比べて相当大きい。2014年4~6月期におけるサムスン電子の営業利益は、パナソニックの約9倍だ。

図2 サムスン電子の売上高と営業利益の推移(図:1ウォン=0.1円で換算、筆者作成)

図2 サムスン電子の売上高と営業利益の推移(図:1ウォン=0.1円で換算、筆者作成)

サムスン電子の売上高や営業利益は、競合する日本の電機メーカーが束になってもかなわない。ただし、売上高や営業利益の絶対額は企業規模の問題であって、それだけではサムスン電子の収益性が高い理由とはならない。

安全性についてもサムスン電子は全く問題ない。現金預金に流動性の高い金融商品を加えた手元資金は、2014年3月末時点で約6兆円。これに売上債権を加えると8兆円近くになる。100%超であれば短期的な支払い能力は安全とされる「流動比率」[注1]は200%を超える。100%未満であれば長期的に安全と言われる「固定比率」[注2]は70%という驚異の水準だ。

潤沢な内部留保のおかげで、自己資本を総資産で割った「自己資本比率」は70%に迫る勢いである。サムスン電子の安全性は「超」が付くほど高い。サムスン電子は、収益性および安全性の両面において非常に高い水準にある。従って、「業績不振」という言い方は適切ではない。

[注1]現金を含めた流動性の高い資産(流動資産)を、1年以内に支払わなければ負債(流動負債)で割って求める。
[注2]不動産など流動性の低い資産(固定資産)を、自己資本で割って求める。長期保有する固定資産を返済不要の自己資金でまかなえているかを示す。
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