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丸ごとレビュー 手書き用ペン付きタブレット 10型でも軽く薄く

レノボのThinkPad 10を試す

フリーライター 竹内 亮介

レノボは7月29日、10.1型ワイド液晶を搭載するタブレット「ThinkPad 10」を、個人ユーザー向けに発売した。液晶ディスプレーの解像度はフルHD(1920×1200ドット)対応で、画面にペンで手書きメモなどが残せるデジタイザー機能を追加できる。外付けキーボードや専用カバーなど、豊富なオプションを用意することも特徴だ。

薄型でフルHDタイプ

昨年秋から今年にかけて、消費電力が少ないインテルの「アトム」シリーズをCPUとして採用するウィンドウズ 8.1搭載タブレットが大きな話題を呼んだ。このThinkPad 10もその一つだが、ほかのタブレットと違うのは液晶ディスプレーの解像度がフルHDと精細で、メモリーやストレージ容量を直販サイトでカスタマイズして増やせることだ。

CPU自体も、ほかのタブレットが「アトムZ3740」(動作クロックは1.33ギガヘルツ)であるのに対し、ThinkPad 10では「アトムZ3795」(動作クロックは1.59ギガヘルツ)を採用する。そのため、若干だが基本性能は高めだ。

OSは一般的なウィンドウズ8.1プロのほか、マイクロソフトが2014年5月に発表した新エディション「ウィンドウズ 8.1 with Bing」が選べる。これは何かというと、簡単に言えば「標準の検索エンジンをマイクロソフトの『Bing』に設定済みのウィンドウズ8.1」である。ウィンドウズ7で用意されていた「スターター」エディションと違い、利用できる機能は通常のウィンドウズ8.1と何も変わらない。

このウィンドウズ 8.1 with Bingだが、ハードウエアの仕様が、マイクロソフトが定める要件に合致する場合、無料か、それに近い価格で提供されるという。そのため、これを採用する他社のタブレットやノートパソコンでは、4万~5万円という価格が相場だ。しかしThinkPad 10は、液晶ディスプレーやCPUのグレードが高いこともあり、直販サイトの最下位モデルでも7万1280円と比較的高い。

外観的には、ほかのタブレットと大きな違いはない。横置きスタイルだと、中央下にウィンドウズボタンが来る。やはり10型モデルのような大きめのタブレットだと、横置きスタイルで使う方がしっくりくるし、ウィンドウズボタンは頻繁に使うので、わかりやすい位置にあるのは便利だ。

 厚みは8.95ミリでかなり薄い。他社の10型タブレットだと10~15ミリの製品が多いが、本機は8インチタブレットなみだ。ビジネスバッグなどにもスッキリと収納でき、場所を取らない。重さも590グラム(WiFi対応の最軽量モデル)と軽量だ。300~400グラムが主流の8型タブレットに比べると重いが、それでもバッグの中に突っ込んでしまえば大きな違いは感じない。

10.1型ワイドでフルHD解像度対応の液晶ディスプレーは、視野角が広くて色味の変化が少ないIPSパネルだ。前後左右、どこから見ても色味の変化はなく、デジタルカメラの画像も美しい。また8型タブレットが搭載する液晶パネルは、解像度1280×800ドットが主流なので、1000万画素クラスのデジカメ画像を表示して両者を比較すると、ぱっと見で分かるほど精細感の高さを体感できる。

一般的に高精細な液晶ディスプレーだと、デスクトップではアイコンやテキストが小さめに表示されるため、操作しにくい傾向がある。しかしThinkPad 10では、アイコンとテキストサイズの表示を標準設定で大きめに変更しており、見にくいと感じることはなかった。表示のバランスが崩れていると感じる場面もなく、ちょうどいい設定だ。

ささいなことではあるが、充電を専用ポート経由で行う必要があることがちょっと気になった。ほとんどのタブレットは、スマートフォンやタブレットと同じくマイクロUSB端子経由で充電するため、充電環境の使い回しが容易だ。しかしThinkPad 10では、外出先で充電するなら専用のACアダプターを一緒に持ち歩かなくてはならない。

使い勝手の良いタッチペン、豊富な純正オプションに注目

画面のスクロール、タッチ操作の軽快さなどは、ほかのタブレットでの感覚とほぼ同じだった。ウィンドウズ8.1の基本操作や、マイクロソフトオフィスを使ったビジネス文書の閲覧や作成で、不安を感じる場面はない。ThinkPad 10は、ほかのタブレットに比べるとやや基本仕様が上だが、一般的なユーザー向けの作業でその違いを体感することはない。

今回借りた機材では、液晶ディスプレーにデジタイザーオプションが組み込まれていた。付属するタッチペンで各種操作を行ったり、マウスやタッチ操作を代行したりできる。タッチペンを利用中だとタッチ機能がオフになり、画面に手のひらが接触する状態でも、誤動作しない。紙にボールペンでメモするときと同じような感覚でペン操作できる。

画面が10.1型と比較的大きいため、手書きメモとして使える領域も広くなる。1024段階の筆圧感知機能や、背面のボタンを利用した消しゴム機能なども利用できる。手書きの走り書きだけでなく、仕事相手に内容を説明する概念図をThinkPad 10上で作る、といったことも容易だ。

ペン先は細く、デスクトップモードでのアイコンやボタン選択、レタッチソフト上での輪郭切り取りの指定なども正確に行える。この大きさのウィンドウズタブレットでは、タッチペンがあるのとないのとで操作感は大きく変わってくるため、重視したいポイントの一つだと思う。

純正の周辺機器はかなり充実している。「ThinkPad 10 ウルトラブック キーボード」は、ThinkPad 10のサイズに合わせた外付けのキーボードとタッチパッドだ。ThinkPad 10とは、斜めに差し込んだ時に底面の接点で接続するようになっており、ちょうどノートパソコンのようなスタイルとなる。

また液晶画面をキーボード面に向けて差し込むと、磁石によってがっちりと固定される。ノートパソコンを閉じたようなスタイルに変わり、液晶画面が保護されるのも便利だ。8型タブレットでもこうした純正キーボードを用意するものは多いが、8型タブレットとサイズを合わせるとキーボード部分が小さくなり、操作しにくい。

ThinkPad 10 ウルトラブック キーボードを組み合わせると、まさに小型ノートパソコンそのものとなる。ただし重さは535グラムとちょっと重い。一緒に持ち歩くよりは、外では軽量なタブレットとして使い、家やオフィスに戻ったらノートパソコンに変身、という使い方がいいだろう。直販価格は1万1923円だ。

 こうしたノートパソコンとしての使い勝手を追求するなら、ドッキングステーション「ThinkPad Tablet ドック」を追加するのもいいだろう。同じくThinkPad 10底面の端子と接続して、USB3.0ポートやLANポート、HDMI出力端子を接続できる。多数の周辺機器を接続してパソコンと同じように使うなら必須のオプションだ。直販価格は1万3414円である。

このほかThinkPad 8でも用意されていた液晶カバー「ThinkPad 10 クイックショット・カバー」(直販価格は4471円)、光沢処理の液晶画面を非光沢にできる保護フィルム「ThinkPad 10 保護フィルム(光沢なし)」(直販価格は3478円)などがある。

大量のファイル持ち歩きに最適

実勢価格が4万~5万円で、CPUにアトムを搭載する低価格ウィンドウズタブレットは、どの製品もほぼスペックが同じなので選びにくい。結局、価格で選ぶことも多いのだ。しかしThinkPad 10は、美しいフルHD解像度の液晶ディスプレーを搭載し、直販サイトのカスタマイズでストレージ容量を128ギガバイトまで増やせる。外出先にも持って行きたいファイルが多いユーザーにとって、ほぼ唯一の選択肢だ。

多数の有用なインターフェースを追加できるドッキングステーションや、使いやすい外付けキーボードの存在も大きい。タブレットとしての用途と、今まで通りのパソコンとしての用途を一つの製品で補いたい、と考えるユーザーにとって大きな魅力となるだろう。ビジネスユーザー向けのタブレットとしては、一つ頭の抜けた存在だ。

ちなみに同社の8型タブレット「ThinkPad 8」も、液晶ディスプレーはフルHD対応だ。しかしThinkPad 10は画面サイズが大きくなった分だけ、テキストやアイコンの表示が大きくなり、あきらかに見やすさは増している。170グラム前後の違いがどうしても気になる、持ち歩くバッグのサイズが小さくて入らないということでもない限り、ThinkPad 10をオススメしたい。

竹内亮介(たけうち・りょうすけ)
 1970年栃木県生まれ、茨城大学卒。毎日コミュニケーションズ、日経ホーム出版社、日経BP社などを経てフリーランスライターとして独立。モバイルノートパソコン、情報機器、デジタル家電を中心にIT製品・サービスを幅広く取材し、専門誌などに執筆している。

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