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脳を活性化する起業ゲーム 創造的な発想を手助け

林 信行(ITジャーナリスト/コンサルタント)

サンフランシスコの北にセバストポルという街がある。ここに「ウェブ2.0」や「MAKER」というムーブメントを広めたオライリーという出版社がある。エンジニアの必読書を多数出版し、シリコンバレーにインスピレーションを与え続けている。同社では年に1度、グーグルやウィキペディアツイッターの創業者や、その年話題になった人など250人ほどを招待し、同社の庭や建物内に寝泊まりして週末を過ごす「FooCamp(フーキャンプ)」というイベントを開催している。

臨機応変に場をつくって議論

はやし・のぶゆき 最新の技術が生活や文化に与える影響を23年にわたり取材。マイクロソフトやグーグルのサイトで連載を執筆したほか、海外メディアに日本の技術文化を紹介している。東京都出身。

「アンカンファレンス」と言うスタイルで、真っ白な時間割に十数個の部屋の名前だけが書かれている。来場者が好きな時間と部屋を選び、時間割に自分が話したいテーマを書き込む。「ソーシャルメディアの未来」や「アフリカのこれから」などまじめなものから「ポケットの中身を見せ合おう」や「ウイスキー2.0」などふざけた内容のものもある。集まってきた人を見渡して、その場で臨機応変に場をつくり議論をするのが、クリエイティブで楽しい。集まる人がすごい経験の持ち主ばかりなので、どんなテーマでも話題に事欠かない。

同じことを日本でやると、どうしても「お客さま」が多くなる。「話しやすいようにテーブルを動かしましょう」というと、部屋の隅っこで他の人たちがテーブルを動かすのを待っている。話し合いが始まっても、指名されるまで発言しない。自発的行動は名刺交換だけで、自ら面白い話をする人にはなりたくない人達だ。

人とアイデアを共有したくないとか、あまり表に立ちたくない、というのもあるのかもしれないが、「沈黙が金」という日本のビジネス社会で黙ることに慣れ過ぎていて、話そうとしてもエンジンがかからないこともあるだろう。そんな人たちには、FooCampで知った「HalfBaked」というゲームをお薦めする。

悪ノリ状態の会議の方が成果

有名なベンチャーキャピタル「500スタートアップス」の共同創業者、デイブ・マクルアーが熱心に広めている。まずは十数人で数分間、適当なキーワードを挙げてホワイトボードに書き出す。つづいて4~5人のグループに分かれて、適当なキーワードを2つを選ぶ。「忍者スープ」や「オムニロボット」など変な組み合わせの方が楽しい。選んだ組み合わせが、そのグループの仮想の会社名だ。そこから4~5分使って会社の事業内容やビジネスモデルを議論し、審査員に1~2分でプレゼンをする。無理そうな組み合わせでも追い込まれた状況で議論をするとアイデアが出てくるもので、2~3度やると頭にエンジンがかかり、話したり説明したりするのが楽しくなる。

6~7人でできるバージョンもある。最初の人がキーワードをいい、その隣の人がもうひとつキーワードを言う。すると、さらに隣の人は数分以内に、その2つを組み合わせた会社名で事業プレゼンし、最後にキーワードを言う。隣の人はそのキーワードと1つ前の人のキーワードを組み合わせて事業プレゼンをする。

ただのゲームではあるが、人の頭は勢い良く回転させれば活性化してくる。要するに頭の準備体操だ。朝の会議の冒頭などで実践すると結束力も高まり、話し合いが活性化するかもしれない。試してみる価値はある。デザインコンサルティング会社IDEOの創業者ティム・ブラウンは「クリエイティブな発想は遊び心から生まれる」と講演で語っている。萎縮した「お客様」ばかりの会議よりは、遊びで悪ノリした状態の方がいい議論ができそうなことは、皆さんも経験として知っているはずだ。

[日経産業新聞2014年8月26日付]

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