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女性向け脚本は…ハル・ベリーがテレビに出演する理由

海外ドラマはやめられない!~今 祥枝

NIKKEI STYLE

近年、米国のサマー・シーズンはケーブル局のオリジナル・ドラマに勢いがあります。2014年7月には映画『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロと、チャック・ホーガン共著の原作を映像化したSFホラー『The Strain』、同年8月にはオスカー監督スティーヴン・ソダーバーグが手がける歴史医療ドラマ『The Knick』がスタートしました。かなり刺激的で、どちらかといえば通向けの力作が多いようです。

バラエティーに富んだ作品を次々とこの時期に打ち出すケーブル局の成功を見て、地上波も新作に本腰を入れるようになってきました。勝負に出たのは、4大ネットワークの中では視聴者数を高い水準で安定させているCBSです。2013年6月から放送スタートした『アンダー・ザ・ドーム』はスティーヴン・キングの小説の映像化で、スティーヴン・スピルバーグと彼の制作会社アンブリン・テレビジョンが参加するとあって、大いに話題を呼びました。結果は大成功で、シーズン2も放送。この成功例に習い、2014年は同じくアンブリンが製作に参加し、オスカー女優ハル・ベリーを主演(兼製作総指揮)に迎えたSFスリラー『Extant』を放送しました。

米国で存在感、真田広之が科学者役で出演

13カ月の単独ミッションを終え、地球に帰還した優秀な女性宇宙飛行士モリーは、家族との日常生活に戻ろうとしますが、あり得ない妊娠が発覚。モリーが宇宙で経験したこと、さらにその子供は人類に何をもたらすのか…。共演陣も豪華ですが、2014年Syfy(サイファイ)で放送された話題作『Helix』で主演格だった真田広之が、富豪の天才的科学者役でゲスト出演。米テレビ界での真田の存在感、知名度は増す一方で、日本人にとってはうれしい限りです。

映画中心に活躍してきたベリーは、出演を決めた理由を、映画作品では既に経験したような役のオファーばかりで、「特に女性向けの最高の脚本はテレビにあると悟った」と語っています。これは多くの映画俳優、特に実力派の中堅女優が、テレビに本格的に出演する理由のトップに挙げる理由で、今のテレビドラマの質の高さ、企画の斬新さを物語っています。

ケーブル局に比べて、地上波の番組はやはり万人受けする要素が強く、特に本作はワールドワイドのセールスを最初から見込んで、知名度のあるスタッフとキャストをそろえ、国外でのビジネスを強く意識した作りとなっています。何より、CBSの王道感のある作りは海外セールス向きで、地上波ならではと言えるでしょう。

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●今月のオススメドラマ

『ダウントン・アビー』

英国貴族社会に渦巻く愛憎を暴くサスペンス

1912年、第1次世界大戦直前のイングランドを舞台に、グランサム伯爵一家が暮らす大邸宅の人間模様を描いた『ダウントン・アビー』。イギリス最大の民間放送局ITVで制作され、世界各国で人気を誇っている。

伯爵邸にタイタニック号の沈没により、長女メアリーの婚約者が亡くなったという訃報が届く。男系の親族しか継承権がない財産制度のため、遠縁の弁護士マシューに引き継がれることに。財産相続をめぐる結婚問題から嫁姑、古い慣習と女性の自立など貴族社会の実情と、使用人たちの人間模様を交錯させて描く。

本国をしのぐ勢いで、アメリカでも主要な賞レースを席巻し、社会現象とも言うべき人気と評価を獲得。これまでに最も多くのエミー賞を獲得したイギリスの作品としての記録を樹立している。キャストには『ハリー・ポッター』シリーズのマギー・スミス、『フライト・ゲーム』のミシェル・ドッカリーほか、英国の実力派が勢ぞろい。クリエイターは、映画『ゴスフォード・パーク』でアカデミー賞脚本賞を受賞した才人ジュリアン・フェローズ。

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今祥枝(いまさちえ)
 映画&海外ドラマライター。女性誌、情報誌、ウェブ等に映画評やインタビュー等を寄稿。「BAILA バイラ」「eclat エクラ」「日経エンタテインメント!」映画サイト「シネマトゥデイ」などに連載中。著書に『海外ドラマ10年史』(日経BP社)。

[日経エンタテインメント! 2014年9月号の記事を基に再構成]

日経エンタテインメント! 海外ドラマSpecial 2014[秋]号 (日経BPムック)

編集:日経エンタテインメント!
出版:日経BP社
価格:1,080円(税込み)

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