社内ベンチャー、成功に導くのは「スマートな野武士」
山内利明 パナソニック・スピンアップ・ファンド推進室室長(肩書きは当時)

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2014/9/4 7:00
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 技術のボーダーレス化が進む中、これまでとは異なる分野の事業者が他分野の技術を活用することで、急成長する事例が増えている。日本企業は今、「外」に活路を求め、多様な人たちと議論し、従来の殻を打ち破る必要に迫られている。新規事業や異業種連携を加速させる取り組みをはじめ、技術の波及がもたらす新ビジネスの可能性などを紹介していく、特集「リアル開発会議」。連載第8回は、"常識外"の成功率でベンチャー企業を生み出しているパナソニックの社内ベンチャー制度を統括する山内利明 パナソニック・スピンアップ・ファンド推進室室長(肩書きは当時)に、「社内ベンチャーの流儀」について語ってもらう。

山内利明(やまうち・としあき) 1980年岩手大学工学部電気工学科卒業、松下電器産業(現パナソニック)入社。1999年以降、松下通信工業情報システム事業部設計室長、同社システムズカンパニー社会システム事業部技術グループマネージャー、パナソニックシステムソリューションズ社モビリティビジネスユニット長を歴任。その間、大手物流会社向けハンディターミナルシステム、ファームバンキング端末、交通系・流通系ICカード決済端末など、顧客の現場ソリューションを支援するBtoB製品の開発を担当してきた。2009年にパナソニック・スピンアップ・ファンド(PSUF)推進室室長に就任し、現在に至る。PSUF推進室のベンチャー各社の非常勤取締役も務める(写真:上重泰秀)

山内利明(やまうち・としあき) 1980年岩手大学工学部電気工学科卒業、松下電器産業(現パナソニック)入社。1999年以降、松下通信工業情報システム事業部設計室長、同社システムズカンパニー社会システム事業部技術グループマネージャー、パナソニックシステムソリューションズ社モビリティビジネスユニット長を歴任。その間、大手物流会社向けハンディターミナルシステム、ファームバンキング端末、交通系・流通系ICカード決済端末など、顧客の現場ソリューションを支援するBtoB製品の開発を担当してきた。2009年にパナソニック・スピンアップ・ファンド(PSUF)推進室室長に就任し、現在に至る。PSUF推進室のベンチャー各社の非常勤取締役も務める(写真:上重泰秀)

パナソニックの社内ベンチャー制度「パナソニック・スピンアップ・ファンド」(PSUF)が成功の軌道に乗っている。ベンチャー企業の成功率は「千に三つ」といわれる中、同制度では2001年の創設以降に誕生した30社のうち10社が存続し、いずれも黒字基調だ。

ベンチャー各社への投資や経営支援を手掛けるのは、同制度に合わせて発足したPSUF推進室である。2009年から室長を務める山内利明氏によれば、起業を志す社員は、パナソニックのような大企業にいながら野武士のごとく意欲や独立心にあふれる人ばかりだという。ただし、荒々しさだけではなく、周囲の協力を引き出すスマートさも備えていなければ成功できないと同氏は指摘する。

PSUFの狙いは、「破壊的イノベーション」を自ら生み出すことである。事業部門では、現行の製品や技術を改善する「持続的イノベーション」は実践できても、自らの既存事業を脅かす破壊的イノベーションを実現する新事業には踏み込みにくい。特に大企業では、その傾向は強い。だが、新しい顧客や市場を開拓していくことは、企業の新陳代謝を促すために不可欠だ。そのための制度がPSUFである。

■3社がエグジット

必然的に、PSUF発のベンチャー企業のターゲットは、既存の事業部門が参入しにくい分野になる。巨大な組織では困難でも、身軽なベンチャー企業であれば新しい分野に挑戦しながら採算が取れるビジネスは多い。

当初、PSUF発のベンチャー企業は既存事業との相乗効果が期待できる分野に限定していた。だが、最近はパナソニックに大きな変革をもたらす可能性を秘めていれば、経営理念や経営方針を逸脱しない限り、事業内容に制限を設けないことにした。パナソニックが得意としているハードウエアの企業に加えて、ソフトウエアやインターネットサービスの企業も生まれている。

現在も事業を継続している10社のうち3社は、既にPSUF推進室の手を離れ、新たなステージに踏み出した。例えば、外部企業への譲渡や、ベンチャー経営者による株式買収(MBO)を経て独立、既存事業部門への組み入れなど、PSUF推進室から見ればエグジット(出口)となる事例が出てきているのだ。

eスターの「工場廃熱用スターリングエンジン」

eスターの「工場廃熱用スターリングエンジン」

スターリングエンジンを手掛けるeスターは、2013年10月にヤンマーに譲渡した。スターリングエンジンは、熱を動力に変換する装置で、さまざまな種類の発電システムに活用できる。最近では、地方自治体の産業廃棄物焼却炉などでの採用が進んでいた。

エグジットに当たっては、パナソニックの既存事業との相乗効果を検討したが合意に至らず、最終的には事業の相乗効果を期待できる外部企業に譲渡した方がパナソニックにとってもeスターにとっても良いと判断した。

途中でパナソニックの既存事業に組み入れた事例としては、独創的な2次電池関連技術を開発したイブリダセルがある。同社の2次電池は、ニッケル水素電池とリチウムイオン電池のセルを組み合わせることによって、鉛電池と同じ電圧を実現しつつ、質量を鉛電池の約半分に抑えている。

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