2019年8月22日(木)

「ものづくり礼賛」が阻んだ半導体産業復活の道
電子立国は、なぜ凋落したか(5)

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2014/8/29 7:00
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日経テクノロジーオンライン

 日本の電子産業の衰退に歯止めがかからない。特に凋落を一般社会に印象づけたのは、2012年におけるテレビ事業の極度の不振だ。テレビの内需と生産は2010年にピークに達したが、2011年と2012年には壊滅的に急減した。元・日経エレクトロニクス編集長で技術ジャーナリストの西村吉雄氏が、政策・経済のマクロ動向、産業史、電子技術の変遷などの多面的な視点で、電子立国の凋落の真相を解き明かしていく連載「電子立国は、なぜ凋落したか」。今回は前回に続いて、1980年代後半に世界出荷の半数のシェアを誇り、日本経済成長のけん引役だった半導体産業の衰退について検証する。

前回(第4回)で指摘した半導体産業における設備投資の間の悪さ、つまり「売り上げと同相の投資、売り上げと逆相の償却負担」という構図の背景には、別の事情もある(図1、図2)。

図1 日本の集積回路の設備投資金額と売上高の年次推移(資料: 『ICガイドブック(第8版)』、日本電子機械工業会、2000年、p.194)

図1 日本の集積回路の設備投資金額と売上高の年次推移(資料: 『ICガイドブック(第8版)』、日本電子機械工業会、2000年、p.194)

図2 日本の集積回路の売上高と減価償却費の年次推移(資料: 『ICガイドブック(第8版)』、日本電子機械工業会、2000年、p.194)

図2 日本の集積回路の売上高と減価償却費の年次推移(資料: 『ICガイドブック(第8版)』、日本電子機械工業会、2000年、p.194)


実は日本には、わずかの例外を除くと、本当の意味での半導体メーカーは近年まで存在しなかった。半導体事業で上げた収益に基づいて設備投資し、それを半導体事業の次の収益に結びつける。こういう形で、自己責任で半導体事業を展開してきた企業は、日本にはまれだった。

日本で一般的だったのは、総合電機メーカーが事業の一つとして半導体製品を製造販売する形だ。その半導体製品は、社内でも使われるし、外販もする。

総合電機メーカー内の半導体事業、その最大の問題は、設備投資の時期と規模を、半導体ビジネスの観点からだけでは決められないことである。総合電機メーカーにとって、投資に使える資金は半導体のためだけのものではない。その結果、半導体のための投資を、半導体事業にとっての最適タイミングで実施するわけにはいかないことが、どうしても多くなる。ただし、この問題は韓国サムスン電子などにも共通する。そのサムスン電子の半導体事業への設備投資は積極的である。

問題の本質は、企業の内部統治の問題に帰する。それぞれの企業が半導体をどれだけ重視しているか、そして半導体事業部門が投資時期決定において、どれだけの自由を持っているか――である。

■半導体事業の切り離しが進んだ2000年代

図3 三菱電機および日立製作所から分社化していたルネサス テクノロジと、NECから分社化していたNECエレクトロニクスの経営統合によって2010年に誕生した、国内最大の半導体メーカーであるルネサス エレクトロニクス。2012年に経営危機に陥り、今なお、再建途上にある

図3 三菱電機および日立製作所から分社化していたルネサス テクノロジと、NECから分社化していたNECエレクトロニクスの経営統合によって2010年に誕生した、国内最大の半導体メーカーであるルネサス エレクトロニクス。2012年に経営危機に陥り、今なお、再建途上にある

1990年代の終わりごろから、日本の電機メーカー各社は半導体事業の切り離しを始める。先行して切り離しや離合集散をした半導体メモリー以外の半導体事業についても、切り離しを進めた。

2002年、NECは半導体事業部門をNECエレクトロニクスとして分社、独立させる。メモリー事業は既にエルピーダメモリに移管していたので、NEC本体には半導体事業は存在しなくなる。NECは、かつて世界最大の半導体メーカーだった。

2003年には日立製作所と三菱電機の半導体部門が分社化して統合され、ルネサス テクノロジが設立された。2010年にはさらに、NECエレクトロニクスとルネサス テクノロジが合併し、ルネサス エレクトロニクスとなる(図3)。

エルピーダにしろ、ルネサスにしろ、いよいよ半導体専業となった。半導体ビジネスだけの観点で、設備投資ができることになったはずだ。それで日本の半導体産業は隆盛に転じたのか――。残念ながら、そうはならなかった。

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